タイトル | マリンエクスプレス殺人事件 |
ジャンル | ミステリービジュアルノベル |
対応機種 | PC、Nintendo Switch、PS5、XboxSeriesX|S、他 |
価格 | 500円 |
プレイ時間の目安 | 3時間 |
「マリンエクスプレス殺人事件」は2021年7月30日にSteamで発売されたビジュアルノベルゲームだ。
もともと日本語非対応だったが、CS移植と同時にローカライズ。現在はどのハードであっても日本語でプレイできる。筆者が遊んだのはNintendo Switch版。
海底列車が舞台の、ミステリービジュアルノベル
舞台は運行開始直後の海底列車、マリンエクスプレス第1号。
この最初の乗客に選ばれたのが、名門女子校セント・ヨアキム・アカデミーの生徒たちだ。
しかし突如起こった惨劇により、優雅な海底散策の旅は早々崩れ去る。
教師の一人が、部屋で死んでいるのが見つかったのだ。
犯人は誰だ?
主人公「東川乱子」は、友人「アストリッド」と共に、事件解決に向けて動き出す。
一本道のビジュアルノベル
まず最初に知っておきたいのが、本作は一本道のビジュアルノベルであること。
いかにも「しらべる」とかやりそうなビジュアルをしているけれど、プレイヤーのやることは基本的にテキストを送るのみ。
分岐も存在しない。
ほとんど読むだけの「マリンエクスプレス殺人事件」
その特徴はずばり、以下の2点だ。
・ミステリらしいツイストの効いた物語
・ユーモアたっぷりの会話シーン
1つずつ解説していこう。
ミステリとしては不満アリ。だがツイストの効いた物語は〇
まず本筋のミステリについて。
はっきり言おう。ミステリとしての出来は良くない。
筆者は推理小説をほとんど読んだことがないし、自分で犯人を当てられたことなんて一度もない。
そのうえで言わせてもらうと、本作のミステリ部分はやや引っ掛かりが残る内容だと感じた。
真相を知ったあとに振り返ってみると「ん?」と言いたくなってしまう点が、いくつかある。
例えば作中、あるキャラクターが犯人と思しき人物を目撃しており、その服の色について証言するシーンがある。
しかし、服の色ははっきり見えているのに、なぜか髪の色は見えていないものとして話が進んでいく。
本作には派手な髪色をしているキャラクターが少なくない。だから髪の色は犯人特定の重要な手掛かりになるはずだ。だが主人公はそれを聞き出そうとしないし、目撃者もそこに言及しない。
明らかに不自然だ。
この他にも腑に落ちなかったり、疑問符がついてしまう場面は正直目立つ。筆者の読書経験では名作ミステリとの比較など出来ようもない。だが本作は、そんな素人の私でもはっきりと粗を感じる内容だった。
では「マリンエクスプレス殺人事件」は、面白くないゲームなのか?
いいや、そんなことはない。
確かに、犯人当てゲームとして良いとは言い切れない。
だが本作に、それに負けない魅力も持っている。
それはミステリらしいツイストの効いた物語だ。
本作の物語は、正にミステリの王道を行く“捻り”がよく効いている。
こう、と思わせて実は違う。
終わったと見せかけて、終わっていない。
思わぬ方向へと転がり、その先で意外な真相がアナタを待ち受ける。
コンパクトにまとまっているだけあって展開も早いため、プレイヤーを退屈させることがない。
犯人当てゲームとしては、やや不備が目立つ。
だがそれを踏まえた上でも、ミステリらしいツイストを味わえる物語は、本作の確かに魅力的なポイントだ。
緊張感ゼロ!? ユーモアと個性の炸裂する会話シーン
本作のもう一つの魅力が、一風変わったキャラクターたちとのユーモアある会話シーンだ。
本作の登場人物は大半が生徒と、それを受け持つ教師。
彼女らが通う「セント・ヨアキム・アカデミー」は名門と設定されているが、とてもそうとは思えない変わり者だらけ。
海底列車の中なのにサンバイザーを常に装備し、会話にやたらとスポーツ用語を盛り込みたがるアスリート系「クラリス・ロッセリーニ」
変顔が強烈な三人組「ワイルドキャッツ」…
こんなキャラクターたちとの会話シーンが、本作には多数用意されている。
個性とユーモアが炸裂する彼女らとの会話は、腹を抱えて笑うようなものではないけれど、奇天烈な内容が印象に残った。
ミステリというジャンルにそぐわないのは事実。
だがむしろ、そのミスマッチが面白い。
また本作のメニューはスマートフォンの画面を模しており、そこから生徒全員が参加するグループチャットを閲覧できる。これはゲームの進行にあわせて更新される仕組み。
この通話内容もまた必見。
状況にそぐわない緊張感ゼロのやり取りは、むしろ本作の本懐であるのかもしれない。
総評
分岐無しの一本道ノベルであるため、まずそこを受け入れられるかどうか。
犯人当てゲームとしては、やや不満アリ。引っ掛かりが残る。
また海底列車を舞台にするならば、車内のマップくらいは閲覧できた方がよかった。
Nintendo Switch版のみかもしれないけど、バックログの動作が妙に重たいのも不便。
だがツイストの効いた物語は魅力。
ミステリらしいお約束を抑えており、展開も早いため退屈させない。
そして同時に、ユニークなキャラクターとの会話を楽しむゲームでもある。
500円なら十分オススメ。しっかり値段分の満足感を得られる内容。
主要ハードならどれでも遊べるため、お好みの機種でどうぞ。
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