【蒼の彼方のフォーリズム】レビュー・評価 白熱の試合シーンと深い人物描写が光る、スポ根×ギャルゲーの傑作

ADV(ノベル)
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「蒼の彼方フォーリズム」をプレイするのは、これで二度目になります。
ブログをはじめた今、もう一度最初からプレイし、その感想を改めてまとめたい…そう思って、あおかなの世界を再訪することにしました。

ルートによって面白さに差があり、やや強引に結論に入っているエンディングがあると感じました

ですがそれを考慮しても面白いゲーム
ギャルゲーでありながらスポ根の面白さを合わせ持ち、加えて深い人物描写がヒロインの魅力をいっそう強くする良作でした

タイトル蒼の彼方のフォーリズム
ジャンルADV(ノベル)
対応機種PS4、Switch、Vita他
プレイ時間の目安20~25時間
備考PS4、Switch版には新OP、ミニゲーム等追加要素あり

あらすじ

アンチグラビトンシューズ…通称”グラシュ”の登場により、空を飛ぶことが当たり前になった世界。
人々の生活は変化し、空を舞台にしたスポーツ…スカイスポーツが生まれた。

主人公「日向昌也」は、そんなスカイスポーツの一種目である「フライングサーカス」の元有力選手。
ジュニア時代に輝かしい成績を残したが、大きな挫折により、今は競技から離れていた。

しかし転校生「倉科明日香」に出会い、空の飛び方を教えているうちに、その気持ちに変化が現れる。
フライングサーカスをやってみたい…そう願う明日香
そのコーチとして、再び競技の世界に戻ることになる主人公。

蒼の彼方のフォーリズム 公式サイトより引用



クラスメイトとその後輩である「鳶沢みさき」と「有坂真白」も加わり、「フライングサーカス部」
が始動。
主人公は再び空を目指す。

総評

「蒼の彼方のフォーリズム」は、人が空を飛ぶことが可能になった世界を舞台にしたギャルゲーです。

近未来を思わせる設定ですが、実際は現実世界との大きな乖離はありません。

そんな世界で流行するスポーツ「フライングサーカス(以下、FC)」を通して主人公とヒロインが交流、絆を深め、成長していく姿が描かれます。

蒼の彼方のフォーリズム 公式サイトより引用

本作の大きな魅力は、ギャルゲーでありながら所謂”スポ根”の面白さを持っている点です
シナリオの面白さを求めるプレイヤーにオススメしたい。

競技を通して出会うライバル、ぶつかる壁、そして乗り越えるための努力…
ヒロインと主人公の恋愛よりも、スポ根要素の方に夢中にさせられるほど力を入れて描写されています。

FCはトラックを周回するレースと鬼ごっこを合体させたようなルールの架空のスポーツです。
空中に正方形を描くように4つ配置された”ブイ”があり、それを相手より早くタッチする度に1点。
更に、相手の背中にタッチすることでも1点。
制限時間内に得点を稼いだ方が勝利となります。

フライングサーカス - <公式>蒼の彼方のフォーリズム・あおかな / sprite
フライングサーカスはグラシュを利用した新興スカイスポーツである。競技者は専用のスーツとグラシュに着替え、縦横飛行可能領域の中を飛び回り、制限時間内までにどれだけ多くのポイントを獲得出来るかを競う。


本作オリジナルの架空のスポーツではありますが、その設定は緻密に作り込まれており、驚かされました。
基本のルールや反則行為、テクニックやシューズのカスタマイズ、選手ごとのスタイルに戦略…
それら1つ1つを矛盾なく設定してあり、ゲーム内でも分かりやすく解説してくれます。
そのためウソっぽさを感じません。

試合シーンの演出、そして手に汗握る攻防も、大きな見どころです

静止画と音声、テキストだけで空を駆ける疾走感を伝える演出は、それだけでも見事です。
しかし、それ以上に「どんな試合になるんだ?」とプレイヤーに思わせる、展開を易々と予測させない攻防に夢中になりました。

いち作品内の架空のスポーツで終わらせるには勿体ないほどに試合が白熱し、丁寧に作られた設定がそれを支えています。

ギャルゲーなのに、それよりもまずスポ根ものとして面白く、先が気になってしまう。
本作を他にはない魅力を持った作品たらしめているポイントです。

蒼の彼方のフォーリズム 公式サイトより引用

もう一つの大きな特徴が、深みのある人物描写です。

本作、ヒロインと主人公の内面の描写が”深い”のです。
(全ヒロインが…とは言えませんが…)

描かれるキャラクターたちの内面、心理は複雑で、単に試合に負けたのが悔しい、勝ちたい…だけでは終わりません。

どのキャラも一言では表せない複雑な考え、悩みを持っています。
中には負の側面が強く、才能ある別のヒロインへ嫉妬し、競技を離れてしまうヒロインすらいるほど。

なぜ、勝ちたいのか
なぜ、競技を続けるのか
その先で、どんな自分になりたいのか

それぞれの悩みを、競技、主人公との交流を通して、どう成長し、乗り越えていくのか
個別ルートに入ると、この点での掘り下げがなされます。

蒼の彼方のフォーリズム 公式サイトより引用


負ければ悔しいのは当然
じゃあリベンジするために本気で努力するのか…というと、そう単純でもないのが人間というもの。
では壁にぶつかったヒロインは、何を思って努力するのか…本作はその点の描写が面白い。

主人公がかつて、そのスポーツで挫折している…というのも、シナリオの重要なポイントになっています。

ヒロイン、主人公両方の内面、悩み苦しむ様を十分な尺で描いており、ただ可愛いだけ、ただ勝ちたいだけ…なんていう薄っぺらさを感じませんでした。

深みのある描写により、キャラクターをより身近に、魅力的に感じながらプレイできる作品です。

CG、BGMのクオリティにも満足しています。
タイトルに「蒼」とあるだけあって、空と海が印象的なCGは壁紙にしたくなるほど良い物が多々。
キャラクターの絵自体も可愛く、「萌え」が強すぎないため爽やかなイメージがよく出ています。
BGMはそれ自体の良さはもちろん、挿入歌を流すタイミングも上手く、より印象に残りました。

蒼の彼方のフォーリズム 公式サイトより引用

完成度の高い作品ですが、気になったのは一部ヒロインのルート後半の展開です。

それまでの描写は丁寧で、感情の動きにもリアリティがあるのに、最終版に差し掛かったとたん、結論を急ぐように薄っぺらな気持ちで決着をつけるエンディングがあります。

ネタバレにも関わるので詳細は伏せますが、他のヒロインと比べて明らかに考え方が薄く、対戦相手の心理描写もやや強引。

ご都合主義…とまでは言いませんが、そう上手くいくものか?と疑問に思ってしまうシーンがあります。
その点がしっかりしているルートもあるだけに、気になりました。

また共通ルートのギャグもあまり面白いとは思えず、退屈な場面もありました。
ルートによっては特定のヒロインが不快に感じることもあり、細かい点まで目を向けると、100点満点とはいかない作品です。


しかしこれを考慮した上でも、どの点でも平均以上のものを持った作品。
特に白熱の試合描写は見どころ。静止画とテキストの可能性を感じさせられます。
ギャルゲーのオススメは?と聞かれたら真っ先にあげたくなるような内容で、普段あまりこのジャンルを遊ばない人にも、熟練のマニアにもぜひ手に取ってみてほしい作品です。

詳しいレビュー

ウソっぽさのない設定と演出が光る、白熱の試合シーン

本作の主題となるスポーツ、フライングサーカスはレースの要素を含むため、スピード感をいかに表現するかが重要になります
この点はとてもよく出来ていると感じました。

テキストと静止画、音声だけで表現されますが、空を飛ぶ疾走感は十分。
海や空の背景CGに、選手のCGを差分として効果音と共にのせていく…という手法で表現されます。
これが遊んでみると驚くほどに「動き」を感じさせられます。

試合内容そのものも、簡単には展開を予測させない構成。

物語の都合上、勝敗はある程度の予想はつきます。
しかし試合展開は必ず何かしらの一波乱があり、見ていて面白くない試合はほとんどありませんでした。

何せ他では見たことが無い競技ですから、どんな戦術やテクニックがあるのか?という知識面で、我々プレイヤーは全員素人です。
そのため、強力なライバルがどんな技術を持っているのか、そしてそれをどう攻略するのかの予想が難しい。

常に次はどう戦うのか?の予測がつきません。
どの試合シーンも、先の気になる展開を楽しむことができました。

それぞれの戦いへ…深みがあるからこそ、好きになれる人物描写

主人公、ヒロインの描写の深さも、本作の大きな魅力です。

スポ根ものでもあるため、勝った負けたの悔しさがヒロインたちの原動力となりますが、それだけではありません。

・なぜ、勝ちたいのか?
・試合を通して、どんな自分を目指すのか?


と、単なる勝敗へのこだわりを超えた、キャラクターの内面まで踏み込んでいきます。

中には他のヒロインへのネガティブな言葉、主人公をよく思っていなかった頃の感情を吐露するシーンも。

蒼の彼方のフォーリズム 公式サイトより引用



しかし可愛いだけじゃない部分を描写されたヒロインは、ただ良い子でいるヒロインよりもずっと深みがあり、魅力的に感じます。
共通ルートではあまり好きじゃなかったヒロインが、個別をプレイし終える頃には一番好きになっている…なんてこともありました。

そんなヒロインが、そしてかつて挫折した主人公が、どうやって自分の気持ちに決着をつけるのか、試合でどんな結果を迎えるのか。
最後まで目が離せず、各ヒロインに愛着を持つことができる作品でした。

やや強引さを感じる、一部のエンディング

本作の最も残念だった点は、一部ヒロインのエンディングが、やや強引に感じられたことです。

ネタバレを避けるために詳細は伏せますが、他のヒロインのルートではじっくり行われた心理描写がなく、そのヒロインのルートに限っては随分とあっさりと結論を出してしまっています。

最終決戦での対戦相手とのやり取りも、ご都合主義を感じずにはいられない強引な内容。
そんな簡単に上手くいくはずがない…と、ケチをつけたくなってしまいました。

終わりに


二度遊んで面白いギャルゲーは本物だと思っているのですが、正に「本物」と言える作品でした。

と言っても、全てのルートがそうであるとは思いません。
他で深く描いているからこそ、一部描写の浅い部分が気になりました。


しかし、この点を考えても本作はオススメです。
時間がないのであれば、メインヒロインとその陰となるもう一人のヒロインのルートだけでも遊んでみてほしい。
スポ根とギャルゲーをここまで両立させた作品はあまり聞きません。

新鮮な体験ができますよ。

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