【金色ラブリッチェ】レビュー・評価 「金色」は、今ここにだって、必ずある。

ADV(ノベル)
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ふと考えてみると、“金色”ってやつを、最近目にしていない気がする。
子供の頃はメッキのおもちゃだとか、折り紙だとか、クーピーの色だとか(あれ本当に金色か?)で、何かと身近だった。
一応は大人になった今、そばにある金色なんて、せいぜいヘッドホンの端子くらい。

でも、実は金色に気づいていないだけなのかも…って、「金色ラブリッチェ」を遊んで思った。
だって金色は、光を当ててやらないと、輝くことはないからだ。

「金色ラブリッチェ」は、近年の作品の中でも、特に高い評価を受けたギャルゲーです。

根幹である「金色」という物語のテーマに、ややブレを感じたのが残念です。

一方、ビジュアルからは予想できない物語の面白さ。
キャラクターたちの生き様から感じるメッセージから、余韻と感動を味わいました。

タイトル金色ラブリッチェ
ジャンルADV(ギャルゲー)
対応機種PS4、Switch、PC
価格通常版:6,000円(税別)
ダウンロード版:6,050円(税込)
プレイ時間の目安20~25時間

総評

伏線とメッセージを持った物語で、感動を与える作品だと感じました。



ギャルゲーらしい“いかにも”なビジュアルからはイメージできない、物語の面白さに驚きました。

本領を発揮するのは、ゲーム後半。
長い時間をかけて示した伏線が、いよいよ回収され、完結へと進みだすときです。

伏線が、一本の真実で繋がります。
キャラクターの生き様を通して、メッセージを伝えようとします。

伏線と真実から、物語の面白さを。
メッセージからは、感動と余韻を感じました。


胸に残る一本です。

一方、たいへん残念だった点があります。
それは、物語のテーマにブレを感じることです。


本作は、あるテーマを掲げています。
主人公たちは、このテーマを目指して奔走します。
そうして見つけたものが、我々へのメッセージへとなります。

しかし。

テーマがブレているため、物語の持つメッセージにまで、ブレが出てしまっています。

また、そのメッセージを印象付けるエピソードが不足しているとも感じました。

物語を通して示される、プレイヤーへのメッセージ。
テーマのブレ、エピソード不足により、この力がやや弱くなっているのは残念です。

しかし、物語の面白さはビジュアルからのイメージを上回ります。
難もあるとはいえ、感動と余韻を残していく一本でした。
タイトルにもある「金色」の意味を知ったとき、同時に、本作が高い評価を受ける理由も知ることになるでしょう。

金色ラブリッチェ - Switch (【Amazon.co.jp限定特典】ポストカード3種セット 同梱)
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詳しいレビュー

クライマックスへ収束する、物語の面白さ

まず特筆したいは、物語の面白さです。

本作は、グランドエンド型のギャルゲー。
あるルートだけが、最後までプレイできない仕様です。

そのルートでは、これまで真意が見えなかった行動、言動、あるいは引っ掛かり。
それらが一度に紐解け、クライマックスへと大きく動きます。

その後もドラマチックな展開が続き、堂々たるグランドエンドへ。




このジャンルには、物語的な面白さを意識していない作品も少なくありません。
本作は、そうではありませんでした。

しかし、本作の魅力は、筋書きの面白さだけではありません

「金色」とは。

本作のもう一つの魅力。

それは物語を通して我々に伝えられる、メッセージです。

本作のストーリーは、あるテーマを掲げて綴られています。
それはタイトルにもある「金色」


本作のヒロインは、ほぼ全員が金髪。
「金色」は、そんな文字通りの色を表す言葉として、タイトルに用いられています。
しかし、それだけではありません。

「金色」は物語上でも重要な意味を持っています。



金色とは言い換えてみれば、光り輝くこと。
主人公とヒロインが、光り輝くことを目指す姿が描かれています。

どうすれば、人は金色に輝くことができるのでしょう?
金色に輝くものとは、一体なんなのでしょう?


彼らのたどり着く答えが、感慨、感動、そして余韻をもたらすものでした。
グランドエンドを見たとき、胸が洗われる感覚を味わいました。


ただし。

メッセージの力を落とす、テーマのブレ

本作のたいへん残念だった点は、物語のテーマにブレを感じられたことです。

本作のテーマは、前述の通り「金色」です。
キャラたちは、金色=光り輝くことを目指します。

ところが、たどりついた「金色」が、どうもキャラと場合によってブレているように感じます。



本作は早い段階で、「このような状態を金色とする」という、言わば物語のゴールを示します。
にも関わらず、各ルートによってたどりつく金色が、その答えからズレています


でもキャラクターは、目指していたものにたどり着いた…としてエンディングに入ります。
そして「これが答えだ」というメッセージを残します。

結果、作品が示したゴール、実際のキャラクターが行き着いたゴールに差がある=ブレてしまっている。
「最初に言っていたのと、ちょっと違うんじゃない…?」と違和感が芽生えます。
そのため、メッセージの力もやや弱く感じます。

また、そもそも「どのような状態を金色とするか?」という根本のテーマすら、全く性質の違う2種類の答えが示されていると感じます。

このようなテーマのブレが、大きな魅力であるはずのメッセージの力を落としている印象を受けました

メッセージを印象付けるための、エピソード不足

本作のもう一つ気になった点は、個別ルートにおけるエピソード不足です。

本作の個別ルートでは、キャラクターたちが金色を目指す姿が描かれます。

しかし本作には、その過程に必ずあるはずの、困難を乗り越えるエピソードが不足しています。

困難な道を進むからこそ、見つけた答えに説得力がでると思います。
メッセージが力を持ちます。
であるのに本作は、キャラクターたちが苦労をしている姿をあまり描写しません。



実にもったいないのは、そのような描写をする舞台設定は十分整っていることです。
壁を越えるエピソードを書こうと思えば、きっといくらでもできただろう…
そう思えるだけの設定があります。

何か理由があって、書かなかったのかもしれません。
ですがせっかくのメッセージを印象付けるために、もう少し増やしてもよかった。

キャラクターたちにとって大きな価値のある「金色」
であるのに、あっさりたどり着いてしまった印象を受けました。

終わりに

テーマにブレを感じ、思い切り感動できなかったのは残念です。

ただ、胸に残る名シーンは確かにありました。
近年のギャルゲーの中でも、特に高評価である本作。
「金色」とはいったい何を意味するのか。
それを知るために遊ぶ価値は、十分にあります。

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おまけ 全個別ルート感想 ※ネタバレあり

この先はネタバレを含みます。
未プレイの方は、読まないでください。

シルヴィルート

エピソード不足、テーマのブレをいきなり感じたルートでした。

というのも、古今東西のラブストーリーでも定番のテーマ、身分違いの恋愛に挑む描写が、ほとんどなかったのです。

央路は転入した際、身分を理由にいじめに近い扱いを受けます。
その時点で、本作は身分差を話に加えるんだと感じました。

そして、その身分差が最大の障害になる(はず)のは、シルヴィルートです。

単なる友達関係ですら、エルやミナはいい顔をしませんでした。
それが恋仲となれば、障害は大きいはず。
事実、央路はそれを実感しており、外交官になるべく勉強を始めます…が。

フタを開けてみれば、あっさりとこの身分差問題をクリアしてしまいます。
シリアスな描写はほとんどありませんでした。



いま振り返ってみれば、主人公たちが悩み苦しむようなエピソードは、まだ控えめにしておいたのかなと思います。
しかしせっかく話に起伏をつける設定が整っているのに、こんなにあっさりと終わらせてしまうのはもったいないと感じました。

さらに言えば央路と出会う前のエピソードも欲しかった。

またルートの最後にシルヴィは、央路と出会ってから今日までの全てがゴールデンタイムであったと言います。
このゴールデンタイムの意味が、共通ルートで理亜の言っていたものと違っているようにも感じられました。



理亜はゴールデンタイムを、日が沈む前のほんの短い金色に輝く時間のことだと言います。
何かをするのに最適な時間だ、と。

しかし、果たしてシルヴィがこのとき感じていたゴールデンタイムは、理亜の言っていたものだったでしょうか。
何だか、楽しくてウキウキする時間…のような意味で言っているように見えます。
物語が理亜を通して示したゴールデンタイムと、シルヴィの言うゴールデンタイムが、いまひとつ重なっていないように思いました。

テーマのブレを、このような点から感じました。

もっとも理亜は、全ての時間がゴールデンタイムだったとも言います。
ただ理亜はそこに至るまで、あれだけの困難を乗り越えます。

シルヴィルートにも、そんな描写があればよかったのですけども。

玲奈ルート

テーマの主張が弱いと感じました。

玲奈ルートで強調されていたのは、バランスでした。
確かにバランスは大切だと思います。

ただバランスをテーマ、ヒロインの魅力にするのであれば、その大切さを印象付けるエピソードが欲しいのです。
また玲奈は明確な夢を持っているため、それに関する掘り下げもあった方がよかった。

ただ玲奈と主人公との関係は面白い。
休日に部屋で映画を見るだけ。
付き合って数年だけど、お互い飽きもせず依存もせず…みたいな関係は、ギャルゲーではあまり見られず新鮮でした。

エルルート

素直なルートだと感じました。

立場に忠実なエルが、フェンシングとどちらを取るかで悩む展開。

最大のポイントは、そもそもエルと主人公がどうやって恋愛に至るのか…という点だと思っていました。
が、そこはうまいこと運んだな…と(笑)

もったいないのは、エルとシルヴィの関係が他ルートで明かされてしまっていること。
この点で、もっと劇的にして良かったかもしれません。


またシルヴィルート同様、エルがたどり着いた金色は、理亜や央路の言う金色と重なり切っていないようにも感じました。



エルは玲奈同様、魅力的です。
というのも本作、年上ポジションがエルだけなんですよね。
お風呂上がりに髪を、タオルで拭いてあげる…なんてシーンは、シルヴィや玲奈とは違った落ち着きを感じられる良いものだと感じました。

茜ルート

もったいないと感じました。

というのもこのルート、ヒロインの方から惚れて、主人公を振り向かせる…という、他のルートにはない展開をやってくれるのですよね。

茜ちゃんは後輩らしい後輩キャラ。
シルヴィや玲奈ら、強いライバルを相手にどうやって…?とワクワクしたのですが…
実際は主人公もあっさりと惚れてしまいました。

頑張る茜ちゃんの姿をもっと描写すれば、更に良いヒロインになったのではと感じます。

理亜ルート

グランドエンドへと繋がる、本作のメインヒロイン。

理亜ルートのまず大きなポイントは、彼女が病気であることが明かされる点でした。
これにより、理亜が金色と、そして時間にこだわっていたこと。
寝てばかりいること、タバコを吸う理由など、単なるキャラ付けと思われたところにも、一本の線が通ります。

驚いたのは、手術のため丸刈りにしている…という点。
髪はギャルゲーのヒロインにとって大きな個性ですし、“ヒロイン全員金髪”をビジュアル面でのテーマにしている作品だからこそ、衝撃は大きかった。

ただ本作、このネタばらし自体は、それほど重視していないとも感じました。



というのも、直前にある、頭に触れられて激怒するエピソード。
その後のミナの「ふだん慰問などと言っておきながら…」という発言。
更にコンビニでタバコを買う際、目が悪くて番号で言えないシーン。

これらの描写はどうもあからさまです
そのため、理亜が病気であることを、何となくプレイヤーに予測させようとしていると感じたのです。
ネタばらしそのものでプレイヤーをどん底に叩き込もうとは、考えていないように見えます。

もっとも主張したいのは、理亜が病気を踏まえてなお、金色であろうとする姿。
この点であると感じました。

理亜はいつ死んでもおかしくない暗闇にありました。
だからこそ、屋上から見た夕陽や、幼いころに出会ったシルヴィのような、金色の美しさを知ります。
そんな理亜が金色でいられるのは、マリア・ビショップとして歌っている時間だったと思います。



いつか死ぬ自分ではなく、今生きている自分を見てほしい。
理亜は、正に命を燃やしてシルヴィとのステージに立ち、金色に輝きます。

央路は作中何度も、金色であるってことは、カッコつけることだと考えます。
そんな彼にとって、あれほどの病におかされていながら、カッコつけて歌う理亜の姿は、どれほど輝いて見えたでしょう。

だからこそ、あの理亜とシルヴィの、領事館での小さなステージは、もっともっと力を入れて描いてほしかった。
理亜の命が金色に燃える様を、プレイヤーの胸にも焼き付けてほしかったです。
数秒で終わらせてよいシーンではないと思います。



そして理亜は最期、あの夕陽を見て、人生の全てがゴールデンタイムだったと言います。

『いつか』思い出したとき、『いま』は絶対輝いてる
世界に金色じゃないときなんてない

どうあがいても暗闇の中にいるようにしか見えなかった理亜が言うからこそ、このメッセージは強い力を持っていました。


しかし、感動と同時に、違和感も抱きました。

というのも、気になる点が残ったのです。

つまるところ、本作が示す「金色」とは、なんだったのでしょうか?

央路は、作中何度も、カッコつけること、自分を良く見せようとすることが、金色であることだと言います。
央路は、つまり金色とは“自身のあり方”によるものだと言っています。
だから央路は、理亜の前で精一杯カッコいい彼氏であろうとします。
それが、彼の目指す金色だからです。

これが、本作の示す1つ目の金色。

一方で、理亜がいう金色は、時間です。
物語序盤は、夕陽が沈む前のような、暗闇に落ちる直前のわずかな時間。
ラストは、全ての時間が金色であったといいます。
1分1秒が光り輝くゴールデンタイムである。

これが、本作の示す2つ目の金色。

では、最終的に央路やシルヴィ、あるいは他ルートでの玲奈、エルがたどり着いた金色とは、一体どっちだったのでしょう?



例えば央路
彼はあくまで、1つ目の金色…あり方にこだわっているように見えます。
最後も、理亜の前でカッコよくいられたかどうかを気にしています。
では、理亜があれだけ求めたゴールデンタイムとは、央路にとっては何だったのでしょう。

エルはシルヴィの護衛よりもフェンシングを選び、そのことが彼女にとっての金色だとしてエンディングを迎えます。
フェンシングはカッコつけているのではなく、好きでやっていることです。
ではエルは時間の金色にたどり着いた…ってことで、いいんでしょうか。


あり方を示す金色と、時間を示す金色。
この点で、本作の「どのような状態を金色とするか」が、ブレているように感じられました。


最後の最後に示されることからも、シナリオライターが伝えたかったのは、おそらく時間だと思います。
ただそうなると、央路が何度も強調し、シルヴィも悩んだあり方の金色は、どのように受け止めればいいんだろう…

……と、なんだか妙な引っ掛かりを残したルートでもありました。

とはいえ、理亜の最後の言葉と、水面が金色に煌めくCGで締めくくるラストは、間違いなく名シーンでした。
あれが見られただけでも、本作を遊んでよかったと感じます。

テキストADVファンによる、テキストADVファンのための、オリジナル雑誌“風”記事。

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