【7年後で待ってる】レビュー・評価 リアリティを打ち消す要素がもったいないADV

2.0
ADV
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表現方法にあったストーリー、というものがあると思っています

マンガのような話は、マンガでやるからこそ活きる
下手に実写化をしても、リアルな表現とファンタジックなストーリーが嚙み合わず、違和感ばかりが出てしまう

あの人気アニメ、ゲームが実写化!と聞いても、あまり良いイメージがしませんよね

今回遊んだ「7年後で待ってる」は、そんな噛み合っていない違和感を強く覚えた作品。
ストーリー自体はプレイヤーを引き込もうとグイグイ来るのですが、そのほかの要素が物語への没入を阻害してしまっていると感じました。

「7年後で待ってる」とは

本作は、もとは個人開発者fumi氏が制作したモバイルアプリ
全世界で600万DLを記録した、高評価のADVです

幼少期の記憶を失った主人公「ハルト」
帰省した故郷の街で、当時の仲間たちと出会い、記憶を取り戻しながらその真実に迫っていきます。

記憶の唯一の手がかりは、名前もわからない少女との一つの約束
「7年後の4月1日、この場所で。」
約束の日まで、あと数日…


モバイルアプリ版は本編無料で配信中
Switch版は1500円

アプリ版は追加課金することで、サイドエピソードなどの要素をアンロック可能
Switch版は、有料の要素が初めから収録されています。

既視感はあるが、プレイヤーを引き込むストーリー

本作はストーリー1本で勝負しているADV

一応マップがあり、RPGのようにキャラクターを操作することができます
しかしこれは遊びには関係なく、ストーリーを追うことだけが目的

その内容は、やや既視感こそ感じるものの、プレイヤーを強く引き込もうとする力を感じました

なぜ主人公は記憶を失ったのか?
そしてその失われた記憶の中で、何が起こったのか?

この2つを柱にしてストーリーが進んでいきます
プレイ時間は10時間くらいと決して長くはありません
その中で真相に迫る新事実がテンポよく、次から次へと明らかになっていくため、退屈に感じるシーンがほとんど無い。


ジャンルは医療×SF
決して新しいテーマではなく、どこかで見たことのあるようなストーリーではあります
しかし、まるで週刊連載マンガのように、グイグイとこちらを引き込もうとしてくる

一度ハマってしまえば、もうやめられないテンポの良さ
あっという間にエンディングまで遊ばせてしまう力を持っていると感じました


ストーリー重視のゲームが好きな人にオススメです。

リアリティのある話に合わない、抽象的なグラフィック

本作のグラフィックは、いわゆるボクセルアートに近い、「立体的なドット絵」のような表現です。
この抽象的な表現が、ストーリーの内容にイマイチ合っていないのは残念な点でした。

医療×SFということで、まるでドラマや実写映画のような、リアリティを持たせた内容になっています
それに対し、グラフィックはリアリティとはかけ離れた表現なので、どこか噛み合っていません
まるで絵本で刑事モノをやるような違和感があり、物語に入り込むことができませんでした

ディズニーやジブリのような、ファンタジー要素が強い物語ならぴったりの表現だったと思います。

視覚的な刺激に欠ける表現

表現方法でもう一つ気になった点は、視覚的な刺激に欠けていることです

本作のグラフィックは立体ドット絵のみで表現されており、それ以外の表現は使われていません。
ストーリーを盛り上げる演出はほとんど存在せず、視覚から感情を動かす刺激が無い。
何かあげるとすれば、吹き出しがでて、!や?で感情を表すくらいです

そのため、どうしてもストーリーの山場が盛り上がりません
BGMで盛り上げようとしてくれていますが、視覚的な変化が全くないため、この点でも噛み合っていないと感じます


小説のように、完全に文字だけで想像の余地がある…というならまだ良いんです。
本作の場合は、グラフィックがあるぶん、想像が入り込むところも少ない。

肝心なところは視覚に訴えかける演出も使って、感情を動かす刺激がほしかったですね。

リアリティを打ち消す「小さなウソ」

本作は医療とSFで、リアリティを持たせた物語が展開されます
ですが、それらを一気にウソっぽくしてしまう「小さなウソ」が散見されるのは惜しい。

医療がテーマなので、病院内でのシーンがとても多いです。
それは良いのですが、その病院内を、関係者でもない主人公が自由に歩き回るのはどうなんでしょう。

受付の周辺程度ならわかります
しかし地下の霊安室や、上階の院長室まで何の許可もなく歩き回るのはリアリティがありません。
また、外の町は車が一台も走っておらず、通行人もほとんどいない。
建物も少なく、唯一コンビニはあるのに中に入ることができません。


どれも「ゲームだから」で済ませられる範囲です
しかし、これで済ませる範囲が広がれば広がるほど、ウソっぽさが出て、物語のリアリティは失われていきます。
現実を基準にしてリアリティを出す以上、そこであり得ないウソは減らした方が、プレイヤーはより深く物語の世界に入り込むができます。

本作は話にリアリティを持たせている以上、こういった小さいウソはもっと減らしてほしかったです

その他、細かい気になる点

・NPCの会話が不自然。ある意味斬新。
・マップが狭すぎる。自由に歩き回れるなら、せめて町と言えるだけの広さは欲しい。
・セーブスロットが少ない。チャプターセレクトもないのでお気に入りのシーンを見返すのが大変。
・バックログからBボタンで戻ると、テキストが同時に送られてしまう

総評

グイグイと引き込みにくるストーリーは、一度ハマってしまえばもう抜け出せない力を持っています。
序盤で面白い、と感じられれば、一気にエンディングまで遊んでしまうでしょう。


しかし、その物語に入り込むのを、他の要素が阻害してしまっているのは惜しい点です。
現実を基準にリアリティを出すなら、現実との差は可能な限り埋めた方が良かった。


ストーリーを追う以外の遊びはないので、そこを重視している人にオススメ。
とは言えあまり新しい物を求めすぎると、肩透かしを食らうでしょう。

モバイルアプリ版は本編無料で配信されているので、まずはそちらを。
Switch版での追加要素も、課金すればプレイ可能です。

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