タイトル | The Artful Escape |
ジャンル | ADV |
対応機種 | PC、Nintendo Switch、PS5、Xbox Series S|X |
価格 | 2200円 |
プレイ時間の目安 | 5時間 |
アートのような作品…という印象を受けた。
一応2Dプラットフォーム、短期記憶を試すトレーニングのような遊びはあるけれど、どれも難易度は低くて、単調さを紛らわす以上のものは感じない。
そんな本作の良いところは、キモユニークな宇宙人たちのデザインと、奥行き感じる異星の風景を描く背景ビジュアル。
そして何より良いと感じたのが、ギターを弾けることだった。

周囲からの期待と、それに反する本当になりたいもの
物語の主人公、FRANCIS。
亡くなった彼の叔父は、伝説的フォークミュージシャンだった。
周囲の人間は、その才能を受け継ぐことをFRANCISに期待しており、本人もそれに応えようとする。
だが一方で、胸の内では全く違う自分に憧れていた。
本当になりたい自分。
それはエレキギターをかき鳴らし、巨大なステージでパフォーマンスする、全く新しい自分だった。

誰もいない夜の街で、なりたい自分になる。
はっきり言って、ゲーム的な面白さは感じられない。
ただ本作の良いなと思ったところは、上述の通りギターを弾けることだ。
本作はボタンを押しっぱなしにすることで、ギターを弾くことができる。
ボタンを押し続ける以上の操作は、何もいらない。
それだけで、あるメロディーを延々と繰り返し弾き続ける。
これはゲームを攻略するうえでは、何ら意味を持たない。
単なる演出。仕様。
なのにとても印象的だった。

主人公がかき鳴らすエレキギターの“叫び”は、もともとのBGMを上書きするほどの音量で鳴り響く。
その様が、なんだか気持ちが良かった。
画面いっぱいに広がる異星の風景は、ただそれだけではあるけれど、どこまでも続いていて、キレイだ。
その風景のように閉塞感をブチ破って、なりたい自分になっている嬉しさを表すようにギターを弾く姿が、見ていて気持ちのいいものだった。
特に好きなのは、序盤。
誰もいない夜の街のシーン。

人っ子一人いない街で、FRANCISはギターを弾く。
邪魔するやつも、ヤジを飛ばすやつもいない。
ただなりたい自分に思いきり、なる。
遊びとして面白いか?とレビューすれば、決して高得点がつく作品じゃない。
機械翻訳の色が濃くて会話は理解しづらいし、さすがに後半は飽きを感じる。
そんな本作の魅力は、主人公の姿だ。
人はだれでも、大なり小なりの理想の自分と現実の自分のギャップに苦しんでいると思う。
同じようにそれに悩むFRANCISに共感を覚えたし、だからこそ彼が、何物にも縛られず理想の自分になり、その叫びをのせるようにギターを弾く姿を見ていると、気持ち良いと感じた。
「The Artful Escape」はPC、PS5、Nintendo Switchなど各ハードで配信中。
PSPlusのゲームカタログ、XBOXゲームパスに対応しているため、加入者は追加料金無しでプレイできます。
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