「エヴァーメイデン ~堕落の園の乙女たち~」は、 Liar-softより発売された18禁アドベンチャーゲームです。
百合と謎解き、両輪で展開される物語が〇
このジャンルらしからぬビジュアルも相まって、独自の世界観を堪能できる良作でした。
タイトル | エヴァーメイデン ~堕落の園の乙女たち~ |
ジャンル | ADV(ノベル) |
対応機種 | PC |
価格 | 8,580円(税込) |
プレイ時間の目安 | 15~20時間 |
備考 | 18歳未満および高校生以下は購入、プレイできません。 |
総評
百合と同時に、真相解明の物語も楽しめる作品でした。
舞台は、俗世から切り離された女学園。
寮と学園で過ごす日々の中、恋に落ちる乙女たちが描かれています。
これだけならば王道、特に変哲もありません。
しかし本作は、ここに独自の味付けをし、実に謎めいた作品世界を構築しています(詳細は後述)。
作品世界を取り巻くナゾの解明が、物語の大きな目的地。
道中の至る所に、伏線が仕掛けられています。
本作はまず、真相解明を目的にしたシナリオで、プレイヤーを引き付けてくれます。
一方で、多くのナゾで物語を展開しつつも、本質が“百合”からブレることはありません。
いやそれどころか、どんなナゾも伏線も、その真相すらも、全て百合を描くための舞台装置でしかなかったとすら感じました。
百合であることを忘れそうになるほど、スケール大きく語られるシーンもあります。
しかしその一切は、あるキャラクターの恋愛で終結します。
ナゾでプレイヤーを引き付け、それすらも演出にして乙女たちの惹かれ合いに収束する本作は、間違いなく“百合”を描いた物語でありました。
真相に迫る物語、しかしそれ全てを引き立て役にして百合を描く大胆な一本。
伏線を多数おいて引き付けながら進むため、シナリオの面白さを求める方にオススメ。
もちろん百合も抜かりはありません。
中編ゆえにエピソード不足を感じる部分もありますが、葛藤し、心で惹かれ合う乙女たちの描写を堪能できる作品です。
更に詳しくレビュー
世界のナゾに迫るシナリオ
上記の通り本作の世界は、世俗から切り離された女学園…という王道がベース。
そこにアレンジを加えて、ナゾ多き作品世界を築いています。
物語の舞台は、全寮制の女学園「プエラリウム」
敷地外の広範囲を、鋭いトゲを持ったイバラに覆われており、部外者は近づくことすらできません。
在籍する生徒は、せいぜい1クラス分の人数しかおらず、教師は1名。
学園といっても、学ぶのは国語や数学のような、いわゆる一般教養ではありません。
彼女たちが日夜磨き続けるのは、「造化術」と呼ばれる、なにもない空間に花や服などを生み出す技術です。
王道を下地にしつつも、一般的な学園ものとは大きく異なる設定が多い世界。
・なぜ、イバラに覆われ隔絶されているのか?
・なぜ、ここには生徒と1名の教師しかいないのか?
・なぜ、「造化術」を学んでいるのか?
プレイヤーは物語を通して、このような多くのナゾの真相に迫ります。
多数の伏線、先の読めない展開で引き付けは十分。
まずシナリオの面白さが魅力的な作品でした。
しかし本作のもっとも大きな見どころは、これらナゾだの真相だのを全て引き立て役にして“百合”へと物語を結んでいく点です。
いっさいが、百合へと収束
真相解明の物語が魅力的な本作。
しかし、本質が百合から揺らぐことはありません。
独自の設定それぞれが、ユニークな物語を作る要素としても、百合を盛り上げる舞台装置としても機能しています。
そして最後には、これだけ用意された設定は全て、百合を引き立てるためだけに作り上げたのではないか?
そう思ってしまうほど、たった一つの恋愛へと収束していきます。
世界の謎が乙女たちの恋愛につながる結末に、ぜひ注目してほしい一本です。
終わりに
スケール大きく展開させ、それを小さな恋愛で結ぶ物語に引き込まれました。
心の繋がりを描く恋愛と、シナリオの面白さを両立した作品です。
繊細なタッチで、このジャンルらしからぬ雰囲気を作るビジュアルも見どころ。
百合と、それが世界の真相とリンクするシナリオ。
両方で楽しませてくれる良作でした。
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