【深世海 Into the Depths】アクションゲームは、私を肉体の不自由から解放する

2Dアクション
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・水の中で呼吸ができる人
・羽が生えていて空を飛べる人


読者の中にいたら、私のところに来てください。以上。

地球の七割は海らしいですけど、ってことは、人類の地球上でのナワバリって、どう頑張っても三割が限界ってことですよね。だって私たちは水中で呼吸ができませんから。

そして海に負けないくらい広くて、同じくらい遠いのが、空。

地球の引力圏内の何割が空なんでしょう?

純粋な広さで言ったら、これはもう海をぶっちぎってるんじゃないでしょうか。そしてもちろん、私たちは空を飛べません。

肉体は魂の牢獄だとか入れ物だとか昔の人は言ったらしいですが、実際私たちは、水中で呼吸もできず、ほんの少しも空を飛べない肉体を、どこか不自由に感じているのかもしれない。だってその不自由な肉体から解放される体験は、それだけでレジャーとして成り立っています。

海中を散策する、大空を飛ぶ、もっと言えば高く跳ぶ、あるいは凄いスピードで移動する、高い場所から景色を眺める…。

いずれも肉体の限界を越える行為であり、人はそれを気持ちいいと感じるのではないでしょうか。

そしてデジタルにおいて、肉体からの解放を存分に味わえるレジャーの代表がアクションゲームだと考えます。

例えば『Marvel’s Spider-Man』というタイトルがありまして、これは気持ちの良いゲームでした。

スパイダーマンになりきって街に蔓延るヴィランと対決する本作。その大きな特徴は、蜘蛛の糸=ウェブ周りの操作が実にシンプルにまとめられていて、簡単な操作でスパイダーマンをカッコよく操れること。

特にウェブを使った移動の気持ち良さは格別です。スパイダーマンにかかれば、マンハッタンの摩天楼など足場だらけのアスレチック。ビルにウェブをひっかけ、勢いをつけて大ジャンプ。縦横無尽に飛ぶ、駆ける。たった二本の足で歩く? そんなの遅すぎる。

単純な移動に過ぎない行為でも、体の限界を大きく越えただけで、こんなにも爽快になるのかと驚かされた作品です。あれこそ正に、肉体からの解放による快感でした。

『マリオブラザーズ』の身長の何倍ものジャンプも『スプラトゥーン』の高速なイカ移動も、どこか気持ち良さを伴っているような気がします。その源泉こそ肉体からの解放であり、これはアクションゲームの醍醐味の一つであると考えます。

さてその点から考えると、今回の主題であるアクションゲーム『深世海 Into the Depths』は、第一印象では、ずいぶんと不自由ゲームでした。というのも本作、どうにも肉体に捕らわれるゲームなのです。

海底を探索する2Dアクション

深世海』は海底を探索する2Dアクションです。メトロイドヴァニアと呼ばれる作品群に近いプレイフィールで、探索によりアイテムを発見、プレイヤーキャラを強化しながらマップの最奥を目指します。ボス戦は少ないですが、エネミー自体はあちこちに配置されています。

さて本作に対して、まず私が抱いた印象ですが、それは上にも書いた通り。

実に不自由である…というものでした。

だってこのゲーム…落下ダメージがあるんですよ!!

というのも本作の主人公、超深海を探索するために分厚い潜水服を装着しています。そのため自重が相当あるようで、高所から落ちるとダメージを受ける仕組みなんですね。

まぁ確かに合理的というか、リアリティのある作りです。とはいえですよ。今時、落下ダメージを受ける2Dアクションゲームなんてありますか?

海底を探索するゲームなので上下の移動が多めで、落下ダメージのリスクは終始つきまといます。おまけに本作、どうも落下状態の判定が厳しめなようで、超高度でなくとも、ある程度の高さから落ちてしまうと、着地時にダメージを受けます。

これを回避する方法もあります。幸い主人公は酸素をジェットパックのように吹かす装置を身に着けており、これによるホバーを行うことで、落下ダメージを避けられます。と言っても、敵との戦闘中などは意識の外に行ってしまい、うっかり落下ダメージを受けてしまうシーンが多々。これはなかなかのストレスでした。

更に本作、これまた2Dアクションとしては珍しいことに、プレイヤーキャラの活動時間に制限があります。

左上が酸素ゲージ兼HP

というのも、プレイヤーキャラはボンベから酸素を補給して呼吸しているため、定期的に酸素を補充してやる必要があるのです。

画面左上に酸素ゲージがあり、これが空になると数秒後にゲームオーバー。幸い補給ポイントは多めに設置してありますが、そのぶん消費も激しめで、行動中は常に残量に気を付けなくてはいけません。残量と補充ポイントの位置を頭に入れ、欲張らず、戻りも考慮しながら動く必要があるのです。

つまり本作、自由気ままに海底散策…なんてゲームではありません。高いところから落ちないように、酸素がなくならないように気を付けてプレイしなくてはいけません。

このようなところから、私は本作を不自由なゲームだと感じたわけです。

でもよく考えて見ると、この不自由さって、現実世界の私たちが当たり前に抱えていることでもあるんですよね。

現実の当たり前が、ゲームの中では不自由?

私たちは水の中では呼吸ができません。高いところから落ちれば痛いです。

だから『深世海』の上記の仕様も、現実世界のそれをそのまま反映しているだけとも言えます。しかし、私はそれを不自由だと感じる。これはちょっと不思議なことです。

だって落下ダメージも酸素の補充も、現実では当たり前のことなのに、それがゲームの中に持ち込まれた途端、不自由に感じる…ってことは、私は普段、現実世界に同種の不自由さを感じているってことならないでしょうか

ところが、少なくとも私は、今の体をそれほど不自由には思っていません。

まぁ少なくとも私の生活圏内は、そのような肉体の不自由さを感じづらいようカスタムされています。ですから、そもそも高いところから飛び降りる必要も、水中を移動する必要もない。そのため、不自由を認識できないだけなのかもしれません。とはいえ、階段を下りるよりも飛び降りた方が楽で、橋を使って渡るよりは川を突っ切った方が早いのは間違いないはず。だからといって、階段や川を見るたびに、肉体の不自由さを感じる…なんてことはないわけです(車椅子やお年寄りの立場にたった場合、また話は変わってきますが)

しかし、そのような言わば現実世界における肉体の仕様は、ゲームの中に持ち込まれた途端、当たりまえのことでなく、不自由を感じる要因になる。

ここから見えてきたのが、アクションゲームは、もうずいぶんと昔から、肉体を不自由から解放する楽しさを持っていたジャンルなのではないか…ってことです。

マリオはボタン一つで身長の何倍もの高さをジャンプし、サムスはどんなに高いところから落ちても平気です。

これらは現実ではあり得ないことであり、一方でゲームでは当たり前の仕様ですが、実はそこに楽しみが潜んでいたのではないかと思うのです。だからこそ、ゲームの中での落下ダメージや、水中での酸素の補充に、私は不自由を覚えたのでは…と感じました。(『ソウル』などは、むしろ肉体を強く感じるゲームと言える…かも))

そんな『深世海 Into the Depths』ですが、アクションゲームの持つ肉体からの解放の楽しみ…という点に目を向けて遊んでみると、エンディングで驚かされることになります。これはぜひプレイして確かめてほしい。

さんざ不自由だと言いましたが、ゲームはそう悪いものではありません。不自由であればこそ、乗りこなす楽しみも味わえるものですし、ゲームカタログWikiなどでは良作判定を受けています。作品外に目を向けると、カプコンが先日発表した新規IPKunitsu-Gami: Path of the Goddessは『深世海 Into the Depths』の系譜に連なる作品であるとアナウンスされていたりします(主にビジュアルイメージなどがそう?)。今のうちに遊んでおく価値はある作品だと言えるでしょう。

Switchにて配信中の他、appleアーケードの対象作品でもあります。

深世海 Into the Depths™ ダウンロード版
任天堂の公式オンラインストア。「深世海 Into the Depths™ ダウンロード版」の販売ページ。マイニンテンドーストアではNintendo Switch(スイッチ)やゲームソフト、ストア限定、オリジナルの商品を販売しています。

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