【テイルズオブアライズ】レビュー・評価 良作。王道、だがそれだけで終わるわけがない。

4.0
RPG
この記事は約12分で読めます。

「テイルズオブアライズ」のテーマは、継承と進化であると、開発者は語っています。
最も理想であり、難しいテーマに挑戦した作品であると感じます。

バトル周りの調整、新要素に、一部不満が残りました。

それでも「テイルズオブアライズ」は、魅力的な一本でした。
王道から始まりつつも、それに収まらない深みを持った物語が印象に残りました。
シナリオ、バトル、キャラクター。
テイルズオブの柱である3つの要素の、継承と進化。
これを実現した良作でした。

タイトルテイルズ オブ アライズ
ジャンルアクションRPG
対応機種PlayStation®4 / PlayStation®5 /
Xbox One / Xbox Series X|S / STEAM®
プレイ時間の目安30~50時間

総評

「テイルズオブアライズ」は、老舗アクションRPGのシリーズ最新作です。
一部を除き、各作品は独立した内容であるため、過去作を未プレイでも問題ありません。

二つの惑星が、物語の舞台
片方はもう片方に支配されており、奴隷として働かされ、食べ物も満足にもらえずに虐げられています。
主人公もそんな奴隷の一人。
しかし、ある事件を通して得た出会いを機に、支配を打ち破る戦いに挑みます。

物語の始まり。奴隷として働かされる主人公



シナリオ、キャラクター、そしてバトル
「テイルズオブ」を支えるこの3点を、高い品質で仕上げた良作でした。
粗がないとは言いません。
しかし、ファンの期待には十分応える作品だと感じます。


王道は保ちつつも、それに収まらない深みのある物語。
これが本作のまず一つ目の魅力です。


物語の始まりは、身勝手な理由で民を食い物にする、暴君の支配する国。
それに立ち向かうレジスタンスとして、主人公は剣を取ります。

前半は、悪党を倒す正義の、王道のストーリー。
しかし本作は、ただ強きを挫いて万事解決とはなりません。



より強い力で悪党を倒し、支配を壊したとしても、そこには高い壁による分断が残ります。
支配した側と、されてきた側の立場は逆転するかもしれません。
しかし、両者を分断する壁は消えません、。
そんな壁が残っている限り、人々は真の意味で自由になったとは言えない。
ではどうすればその壁を、取り払うことができるのか…

そんなところにまで踏み込んで描かれ、勧善懲悪だけで終わらない物語が展開されます。


二者択一には解決できない問題に、主人公たちは自分なりの答えを見つけ出します。
メッセージ性が強く、考えさせられるシーンは少なくありませんでした。

もちろん、たった数人の少年少女が世界を飛び越え、宇宙すら舞台に戦うスケールの大きさ、JRPGらしさは顕在です。

子供の頃に夢見たような大冒険と、かつてそうだった大人たちへ何かを伝えんとする深み。
これを両立したストーリーは、本作の大きなポイントです。


また物語を動かすキャラクターたちも、好感の持てる人物ばかりでした。
過去にこの点で大きく評価を落としたこともある本シリーズですが、「テイルズオブアライズ」にその心配はいりません。

ヒロイン「シオン」



主人公一行は若く、不安定さや未熟さが露呈するシーンも多々。
みなどこかに傷を抱えており、完璧なキャラクターは一人もいません。


しかしだからこそ、自身の、そして互いの傷を認め合い結束していく様を見ていると、なんだか愛着がわき、応援したくなってくる。
ヒロインが実は食いしん坊だったり、いじられポジションのキャラがいたりと「らしさ」も外していません。
一人一人を好きになって、ゲームを楽しむことができました。


「一掃する爽快感」が気持ちいいバトルも、本作を語る上では欠かせません。



本作の戦闘は、ザコ戦であってもやや難しめ。
敵の攻撃力が高く、回避の重要性が増しています。
そのため、連戦になるダンジョン攻略などは、特に厳しい場面が多い。

そんなシビアに調整されたバトルを「爽快」に一変させるのが、本作の新要素。
とある「必殺技」です。

これは条件を満たせばノーリスク、ノーコスト、ワンボタンで放てるもの。
しかも広範囲かつ高威力。
並みのザコ敵ならば一掃、そのまま戦闘が終わることも少なくありません。

難しいからこそ、「必殺技」で一掃した時の快感もより強い。
本作の戦闘の面白さは、これに凝縮されていると言っても良いと感じました。


その必殺技の名は「ブーストストライク」
本作の戦闘を支える新要素です。

「ブーストストライク」の一つです。再生すると音が鳴ります。




しかし私が感じた本作への不満点も、このバトルに凝縮されています。

パーティ全員で共有するマジックポイントのような新要素「CP(キュアポイント)」
ザコ戦より遥かにシビアな難易度である「ボス戦」

この二点が、本作のバトルシステムと嚙み合っておらず、面白さを削いでしまっています(詳細は後述)
特にボス戦は難易度ノーマルでもとても難しく、やや理不尽さを感じる場面も。
CPは管理が重要なのに、管理しづらい仕様にもどかしさを感じました。

シリーズを遊んできた方、これから遊び始める方。
どちらにもオススメできる内容です。
シナリオ、バトルを柱とし、どの要素も高水準でまとまっていると感じます。
王道から始まり、やがてそれを超えていく物語と、難しさと爽快感を両立したバトルを楽しむことができました。
一部不満があったのは事実。
それでも、興味を持っている方にはぜひプレイしてほしい。
進化しつつも「らしさ」を失わない本シリーズを、より好きになれる一本でした。

詳しいレビュー

人々の、心の壁を壊すシナリオ

本作の物語は王道から始まり、やがてそれを超えていく内容です。

物語の第一部は、人々を奴隷としてこき使う暴君との戦い。
主人公はレジスタンスのように、各地の虐げられる人々の解放を目指します。
弱きを助け強きを挫く、王道の物語で、本作の幕が上がります



しかし主人公たちは、ただ強い力で悪を倒せば、それで全てが解決するとは限らないことに気が付きます。
目指すものは、復讐ではなく、支配する者とされてきた者の間にある壁を壊すこと。
力で力をねじ伏せても、その壁はより高くなるばかり。
そんな壁がある限りは、人々は奴隷でなくなったとしても、自由になったとは言えない。

ではどうすれば人々は、もう一度手を取り合うことができるようになるのか
本当の意味で、壁のない自由を勝ち取ることができるのか

ここまで踏み込んで、本作の物語は王道を超えた内容へと続いていきます。
白か黒かの答えのない物語に、主人公たちはどんな決着をつけるのか…


深く分断された人々と、その壁を壊そうとする主人公たちの戦い。
これには、何かを感じずにはいられませんでした。

本作の物語には、現実の問題とリンクする点が多くあるからです。
人種や生まれによる差別。
あるいは自由を求める市民と、それを抑えようとする政府。


もちろん、本作に政治的な思想が込められているわけではありません。
しかし、分断された人々を解放する主人公の姿には、遊ぶこちらにメッセージを伝えんとするエネルギーがあったのも間違いない。
だからこそ本作の物語に、王道では終わらない深みを感じました。
決して簡単ではないこのテーマに、苦しみながらも答えを出した主人公たちが魅力的です。


人と人の間にある壁を壊し、誰かの言いなりになることなく、刷り込まれた価値観に惑わされることもない、本当の自由を勝ち取る物語。
悪を倒すだけで終わらせない深みを持った本作のシナリオは、印象に残る内容でした。

…と、やや重みのあるテーマを扱った本作。
ですがキャラクター同士の和やかな日常、ギャグテイストのやり取りも豊富に収録されています
決して、遊んでいて暗い雰囲気になることはありません。

我慢が爽快へと変わるバトル

本作のバトルは、まず間違いなく難しいと言えるものです。
なぜならば、「回避」の重要性が高められているからです。


本作の敵はザコであってもスーパーアーマーを持っており、適当に攻め入ったのでは反撃を受けてしまいます。
ある程度はゴリ押しも効きますが、大型の敵になるとそれが全く通用しません。
敵の予備動作をよく見る、シビアな立ち回りが求められるシーンは多いです。

しかし、それでも本作の戦闘は「爽快」であったと言い切れます。
回避が大切なぶん、いざ攻めに入った時は猛攻をしかけることが可能だからです。



まず基本の手触りが良好で、キャラクターを動かしていて引っ掛かりや違和感を抱くことがありません。
敵の攻撃は強力ですが、しっかり回避して隙をつけばスーパーアーマーを破ることが可能。
そうなると途端に無抵抗になり、一方的にコンボを叩き込むチャンスが生まれます。
我慢させられるぶん、この時の爽快感は強い。

この爽快感を更に一段階引き上げるのが、本作の目玉要素「ブーストストライク」です。
これは条件を満たせば、ノーリスクかつノーコストで放てる必殺技。
威力が高く、しかも広範囲であるため、周囲のザコも巻き込んで一撃で戦闘を終わらせることも。

再生すると音が鳴ります。さっきのヤツと同じです。



回避主体の立ち回りから一転。
苛烈に攻め立ててブーストストライクでフィニッシュする瞬間に、我慢が爽快へと変わります。
これが本作の戦闘を面白くしている最大の要因だと感じました。


回避重視の立ち回りによるシビアさ
ブーストストライクによる一掃の気持ちよさ

これを両立した本作の戦闘は、ぜひ多くのプレイヤーに味わってほしい仕上がりです。


…しかしだからこそ、後述の2点が戦闘の面白さに噛み合っていないのが、気になってしまいました。

CPはゲームを面白くしたか

本作の戦闘には、「キュアポイント=CP」という新たな要素が加わっています。

この特徴を箇条書きしますと…

CP(キュアポイント)とは…

・パーティ全員で共有する、マジックポイントのような数字
・回復、ステータス強化の術を使ったときのみ消費する
・宿屋、あるいは限られたアイテムでしか回復できない

このようになります。

本作は攻撃系の技は、使用に必要なコストが時間経過で回復します。
そのため、後先考えずにガンガン使用してOK。

しかし、回復、補助系に関しては、上記のCPにより打ち放題とはいきません。
CP自体の回復は可能ですが、これにはやや高価なアイテムが必要です。

画面右の丸で囲んだ部分に、CPの残量が表示されています。



プレイヤーに制限を課す新要素ですが、これ自体は良いアイデアだと思います。
戦闘バランスをシビアにしても、結局回復が撃ち放題では意味が薄くなってしまいます。
かと言って従来のマジックポイントのような要素を採用すると、回復のために攻撃技の使用を控える必要が出てくる。
これでは戦闘の爽快感が削がれてしまうというもの。

攻撃と回復のリソースを別にし、攻撃技を使いまくる爽快感は残しつつも、回復には限りを設け、回避重視の立ち回りの重要性を維持する。
CPは、これを実現するユニークな新要素です。


しかし、「テイルズオブ」のバトルシステムの根幹の部分と、やや噛み合いきっていないとも感じました。

本作はアクションRPGでありながら一度に4人のパーティメンバーが戦う都合上、3人はコンピューターに操作を任せることになります。
自分が操作しているキャラは、丁寧な立ち回りでダメージを抑えることもできます。
ですがコンピューターにそこまでの柔軟さはありません。
そのため、どうしてもプレイヤーのカバーしきれない範囲で大ダメージを受けてしまったり、あるいは回避に専念するべき場面でそうしてくれないなどの状況が発生します。


必然的に、コンピューターを回復させなくてはいけない機会が多くなります。



とはいえ上述の通り回復に必要なCPには限りがあるため、プレイヤーとしてはできるだけ節約したい。
しかし頼れる仲間たちが、その足をどうしても引っ張ってしまう。
コンピューターの立ち回りが、管理が重要であるCPを、管理させてくれないのです

CP節約のために、コンピューターは回復させない手もあります
しかし本作の戦闘…とくにボス戦はとても難易度が高いため、メンバーが一人でも欠けると苦しくなる。
攻撃も痛いので、HPは常に満タンを維持しておきたいのです。

結果、CPは残量を管理する貴重なリソース…というよりも、コンピューターがどんどん使ってしまっていて、気が付いたらなくなっている面倒な数字…
限られた資源というよりは、どんどん減っていくタイムリミット。
このように感じてしまう場面がありました。


これらの理由から、コンピューターの自由な行動が常に絡む戦闘システムに「CP」が噛み合いきっていないと感じました。

と言っても、コンピューターの行動をよく見てみると、回避や防御に関してはなかなか優秀にこなしています。
この部分をあまりにも優秀にしすぎると、それこそ無敵になってしまうので調整は難しそうです。
CPが勝手になくなっている=マメに回復してくれている証でもありますし、回復キャラを自身で操作する、コンピューターの行動を管理する「作戦」を丁寧に設定するなどの方法で、ある程度のカバーは可能です。
リソースが有限だからこそ、回復の重要性を再確認することもできました。

CPの存在自体は良いアイデアですが、調整の難しさが目立ってしまった印象を受けました。

ボス戦の難易度について

本作のボス戦は、難しいです。
通常のザコ戦でも難しいですが、それを上回る難易度です。

しかしこの難易度の上げ方が、やや強引であったと感じました。


本作のボスはザコ以上に堅いスーパーアーマーを持っており、通常の攻撃でダウンする機会はほとんどありません。
特定の状況に追い込むと、ごく短い時間ダウンします。
それでいて攻撃は極めて強力であり、一撃でHPの半分、連携を全てもらってしまうと、一気に戦闘不能まで追い込まれることもあります。

そのため、敵をよく見ての回避が極めて重要なのですが…




まず本作は敵味方の攻撃による演出が派手であり、それが激化するボス戦ともなると、「敵をよく見る」こと自体が難しい。
特に一部の人型のボスはこれが顕著で、地水火風が入り乱れる演出に関心させられつつも、何が起こっているのかさっぱりわからず…という場面が何度か。

またもっとも気になったのは。仮にうまく回避できたとしても、ボスは基本的に怯むことがないため、得られるリターンが少ない点。
こちらが隙をついて攻撃しても、それは本当に一瞬。
ボスは問答無用で次の攻撃を始めるため、すぐに警戒しなくてはいけません。
しっかり回避しているのに、それで貰えるご褒美がすくない。

ザコ戦ではシビアな立ち回りを制すれば、敵が怯み続けるご褒美タイム。
最後にはブーストストライクで一撃必殺の爽快感を得られるため、難しさと爽快感のバランスが取れていました。
しかしボス戦は立ち回りを求められてばかりで、こちらが爽快感を味わうタイミングがほとんどありません。ブーストストライクを決める機会など2回もあれな良い方です。
それでいて敵の攻撃は極めて強力であるため、ワンミスが大ダメージにつながります。
ここに理不尽さ、強引さを感じました。



またボスはHPも高いため、戦闘時間も長くなりがち。
だんだんとリターンの小さい回避を重視するのが面倒になってきます。
しかし回復には上記のCPによる制限があるため、いい加減な立ち回りをするわけにはいきません。
結果、ボス戦は本作のバトルの面白さを味わえるとは言い難い内容になっています。

もちろん、怯んでばかりのボスというのも締まりがありません。強力にするのは良いことだと思います。
ただある程度連携を避けきると、大きな隙を晒すだとか、大技を回避すると、こちらも大技を叩き込めるだとか。
立ち回りを制した際のご褒美を、もっと大きくしても良いのではと感じました。

終わりに

5年ぶりのマザーシップタイトルとなった、テイルズオブアライズ

新たな試みに挑戦した分、特にバトルの面ではもう一歩…と感じた部分がありました。

しかし、継承と進化の名に恥じない出来であったのは間違いありません。
シナリオ、キャラクター、バトル…
いつまでも変わらないこの魅力を、テイルズオブはきっとこの先も貫き続けてくれる。
そう感じることができる作品でした。

新たな黎明の時を迎えた本作を、遊んでみてはいかがでしょうか。

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