ボタンを押して文章を読み進める、オーソドックスなADV
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値段も安いので軽い気持ちで遊び始めたんのですが、想像以上に読み応えのある内容でした。
コンプリートまで遊んだので今回はその感想を。
※本作はクトゥルフ神話が物語に大きく関わっているのですが、私はそちらの知識は全くない状態でプレイしました
前半はホラー、後半は文学
女子高生である主人公が、切り刻むことも燃やすこともできないと記された黒い本を手にすることから物語は始まります
物語の前半はその本を巡ったオカルトテイストな物語が中心
謎を散りばめながら進むため、テンポよく遊ぶことができました
しかし後半になるにつれてその雰囲気は変化していき、文学的な表現、キャラクターの内面の描写が中心になります
後半は後半で面白いですし、感動的で思わず涙が流れそうになるシーンもありました
しかし前半とはノリが大きく異なり、謎にはあまり触れずに話が進むため、先が気になる展開にならず失速感も。
文体もADVとしてはかなりお堅いもので、本作はADV好きよりも本が好きな人におすすめしたい作品です

世界に入り込める良い雰囲気
本作は決して多くはない予算で制作されたのだと思います
しかしそこから来る工夫が、返って良い雰囲気を作り出しています
背景は実写画像を絵画のようにぼかし、キャラクターはカラーイラストを青いシルエットに。
ライターの巧みな風景描写も相まって、現実と幻想の境界にある物語に入り込んでしまうような雰囲気です
実写画像とイラストをそのまま使うとちぐはぐな印象を受けてしまいそうですが、それぞれを曖昧にしたことにより違和感なく融合したのでしょうか
BGMはフリー素材のみのようですが、選曲は良いですね

考察とみるか、投げっぱなしとみるか
前述の通り、本作は前半と後半で物語の性質が大きく変わります
変わるのはいいのですが、気になるのはオカルト中心の前半で出た謎の、ほとんどが解決しないまま終わってしまうことです
謎を考えるヒントはあちこちにありますので、考察する余地を多く残していると見ることもできます
しかしあまりにも投げっぱなしすぎて、前半は結局何だったのか…と感じてしまいました
後半はキャラクター同士の友情を描いた感動的な展開もあり、これこそが本作のメインテーマなのでは?と思います
ですがそうだとすると前半のホラー的展開への説明が足りず、前半と後半で物語が結びついている感じがしないのですよね
複数あるエンディングもどれもすっきりしたものではなく、大きな謎を残したまま終えることになるため、読後感もかなりモヤモヤしています
これを考察要素が豊富と見るか、投げっぱなしで終わったと見るかで本作の評価は大きくわかれそうです

総評
決してわかりやすい面白さだけではない本作
物語に失速感もありますが、散りばめられた描写からキャラクターの心理を読むのは面白い
考察、読書が好きだと言う方には特におすすめできる内容です
ライターの文章力の高さもあり、キャラ同士の友情が描かれたシーンでは感動しました
一方で説明不足過ぎると感じる点があり、エンディングのモヤモヤも相まってすっきりと遊び終えることができない作品であるとも思います
誰にでもすすめられるゲームではありません
しかし1000円で買える手軽さの割には文量もあるので、ちょっと難しいADVを遊んでみてはいかがでしょうか