「名探偵コナン」にせよ「古畑任三郎」にせよ「相棒」にせよ。
見ていて推理についていけた試しがない。
というか、そもそも犯人を当てようとしたことすら、ない。
「春ゆきてレトロチカ」は、そんな私でも名探偵になれる“かもしれない”作品だった。
「春ゆきてレトロチカ」はスクウェアエニックスより発売(開発は『ハ・ン・ド』)の“新本格”実写ミステリADV。
ゲームがプレイヤーの推理をアシスト。名探偵になるための取っ掛かりを作ってくれます。
しかし、真相に至る最後のひらめきは、プレイヤー自身が考えなければ、たどり着けません。
名探偵体験を味わえる作品になるかどうかは、プレイヤーに委ねられていると感じました
タイトル | 春ゆきてレトロチカ |
ジャンル | ミステリアドベンチャー |
対応機種 | PlayStation®5 / PlayStation®4 / Nintendo Switch™ / Steam® |
価格 | 7,480円(税込) |
プレイ時間の目安 | 10~15時間 |
備考 | 公式がプレイ動画の公開や配信の全て、並びにその他ネタバレにつながる投稿を禁止としています。 |
総評
プレイヤーに名探偵体験を“与えるかもしれない”ゲーム。
という印象を受けました。
プレイヤーが名探偵になるために、本作は様々な手助けをしてくれます。
しかしゲーム側がやってくれるのは、手助けまで。
事件の全容を解明するための一手は、プレイヤー自らが考えなくてはいけません。
諦めず自身の手で真相に到達できれば、それは素晴らしい名探偵体験を味わえるでしょう。
一方で考えることを放棄してしまえば、途端に味気ない作品に感じてしまうかも。
このような点から、本作は名探偵体験を“与えるかもしれない”ゲームだと感じました。
「春ゆきてレトロチカ」は、遊ぶ者すべてを名探偵にするゲームではありません。
手助けはしてくれます。
しかし閃きを促す仕組み、あるいはプレイヤーに「私は名探偵だ」と錯覚させるような工夫は、用意されていない。
これはミステリの醍醐味でしょうから、手をつけなかったのだと思います。
しかし同時に、ややプレイヤーに委ねすぎているとも感じました。
トドメの一手を閃き、本作を最大限楽しむためには、プレイヤー自身が考える必要があります。
問題は易しくありません。熟考した上での推理が全くの見当違いで、振り出しに戻されることもあるでしょう。
もちろん何度でもリトライ可能です。
だから総当たりしたって構わないし、攻略サイトを見たって誰にも咎められない。
それでも投げ出さず、名探偵に変われるかどうかは、遊ぶアナタにかかっています。
アナタは名探偵になることもできるし、ならないこともできます。
詳しいレビュー
ドラマの出題編、パズルの推理編、ひらめきの解決編
本作のおおまかな流れは、以下の3つの要素で作られています。
- 事件発生から推理のための手がかりまでが移された、ドラマ風の映像を見る「出題編」
- ナゾと手がかりを組み合わせ、仮説を立てる「推理編」
- 仮説から正しいものを選び、犯行を暴く「解決編」
まずは実写映像を見て、事件の手がかりを見つけ出します。
言わずもがな映像に込められた情報は膨大です。人からモノ、音、風景に時間の経過まで。
何が事件に関係があって、どれは関係ないのか。素人には判別がつきづらい。
でも大丈夫。
ここにはシステムが大きく介入し、プレイヤーをアシストしてくれます。
システムは多数の情報の中から、注目すべきものをピックアップ。まとめた上でプレイヤーに提示してくれます。
この情報をもとに、次は仮説を立てる推理編へと移行します。
映像から得た事件のナゾと、それに関係する手がかり。
推理編では、そこから考えられる仮説を立てていきます。
例えば…
ナゾ | ・犯行に使われた凶器は? |
手がかり | ・胸に刺しキズがある ・遺体近くに血の付いたハンマーが落ちていた |
ナゾ+手がかり=仮説 | ・凶器は刃物ではないか? ・凶器は落ちていたハンマーではないか? |
こんなイメージ。
ゲーム内で示されるナゾは更に複雑で、手がかりも多数。
そのため、例のように単純にはいきません。
でもまだ安心。
この仮説を立てる段階でも、システムがプレイヤーを手助けしてくれるからです。
考えるべきナゾ+関係する手がかり=導かれる仮説。
システムはこの組み合わせを、簡単な絵合わせパズルで提示してくれます。
考えられる仮説を出し切ったら、最後は解決編です。
解決編では再び実写ドラマへ。
挿入される選択肢の中から、正しいものを選ぶ必要があります。
ここではついに、システムはプレイヤーを助けません。
多数ある仮説のうち、いったいどれが正しいのか?
自身が考える必要があります。
一応ヒントはあるものの、最終手段のような位置づけ。
決して簡単ではありません。
犯行は誰にもできなかったように見えるでしょう。
または、誰にでも可能なように見えるかも。
仮説をひとつひとつ検証し、本当にあったことを見極めなくてはいけません。
犯人はこの人しかいないと言い切れる論理の路を、プレイヤーが繋いでいきます。
とはいえ、どうしても分からないのなら、それっぽい人を適当に選んでも構いません。
リトライは何度でもできるため、総当たりすれば必ずクリアできます。
システムはそれを咎めようがありません。
仮説から先の真相に迫るための道筋は、ごっそりとプレイヤーに委ねています。
味気ない総当たりゲームに感じられてしまうか
もしくは最後まで名探偵でいられるか。
あなた次第の作品です。
不老をめぐる物語
犯人当てだけでなく、物語を追うアドベンチャーゲームとしても楽しめるよう作られています。
テーマは、不老。
ミステリでは、論理のパズルとして軽く受け止められる可能性もある、人の生死。
本作のシナリオは、その大切さを改めて感じられる内容に仕上がっていると感じました。
たとえ推理がうまくいかなくとも、ストーリーを追う楽しみがプレイヤーを引っ張ってくれる作りです。
UIは使いづらいが、慣れで解決できる
遊び終えたプレイヤーが異口同音に指摘する点が、UIの使いづらさです。
パッと見でどのボタンを押すとどうなるかが分かりづらく、戸惑いました。
とはいえ、慣れで十分解決できるため、問題だとは思いません。
ただ取っつきづらいのは間違いない。
そのため、ゲームを軽めに楽しんでいるプレイヤーは、序盤は遊びなれている人と一緒にプレイした方が安心でしょう。
ミステリとしての出来栄えについて
私はミステリをほとんど読んだことがありません。
そのため、トリックの良し悪しについては言及できません。
終わりに
実写映像をたっぷり使った内容は、さすが企業が手掛けたタイトル。
独自のプレイ感覚がつまっています。
挫けそうになったプレイヤーのために、何か閃きを促す仕組みがあれば更に良いゲームになったと感じました。
さじ加減の難しい部分だとは思いますが…
名探偵になれるかどうかは、あなた次第な一本です。
コメント
6章までではなくて、終章までプレイしましたか?
コメントありがとうございます。
はい。最後までプレイしました。
推理は外してばかりでしたが…