普段CSやパソコンなどでばかりゲームを遊んでいると、スマートフォン向けアプリにはすっかり疎くなります。
「四ツ目神 ー再会ー」は、そんな私を大いに驚かせてくれた一本でした。
スマホアプリ、ここまで来ているのか…と。
タイトル | 四ツ目神 ー再会ー |
ジャンル | ADV(ノベル) |
対応機種 | Switch、Steam、スマホ |
価格 | Switch、Steam : 2970円 スマホ : 基本プレイ無料 課金要素あり |
プレイ時間の目安 | 5時間 |
総評
短編ながら、濃密な物語体験がつまった作品です。
アプリ発とは思えないリッチな作りに、驚かされました。
フルボイス、美麗な背景ビジュアルはもちろんのこと。
滑らかにアニメーションする立ち絵と、山場で挿入されるムービーが、シーンの“密度”を高めています。
シナリオは起承転結が効いており、先が気になる内容。
エンディングへの分岐パターンを工夫してあるのも好印象です。
味わえるプレイ感覚は、まるで大作ADVのよう。
謎解きは、ひらめき重視。
シンプルですが油断ならない難易度です。
難点は、値段に対してややコンパクトすぎる点です。
本作は元がスマホ向けアプリで、ボリュームに手を加えていません。
そのため3000円弱のお値段で、プレイ時間は5時間程度。
物足りなさは否めません。
値段に対してコンパクトなボリュームに納得できるかがポイント。
演出が豪華なぶん、同じ場所を行ったり来たりする場面が多く、登場人物もすくなめ。
しかし、フルプライス帯でもそう見られない密度の物語体験は魅力的。
閃きを求める難易度の謎解きが、あなたを傍観者から参加者へと変えます。
大作さながらに分岐するエンディングを見終えるころには、値段以上の読後感を味わるはず。
詳しいレビュー
豪華、濃密な物語体験
本作はスマートフォン向けアプリを移植した作品。
しかし、とてもそうとは思えないほど豪華、かつ濃密な物語体験に驚かされました。
まず目を奪うのは、美麗な背景ビジュアル。
もちろん、キャラクターは全員フルボイス。
実力のあるキャストをそろえています。
滑らかにアニメーションする立ち絵も、臨場感を高めているポイント。
口パク、瞬きに留まらず、腕を組む、手を腰にそえるなどの動作まで、一切の違和感なく動きます。
要所にはムービーが挿入され、物語の山場を盛り上げます。
エンディングにはオリジナルテーマソングまで流れ……
と、本作はとにもかくにも、アプリ発とは思えないほどリッチな作りなのです。
その反動なのか、尺は短く、登場キャラも絞られています。
同じところを行ったり来たりするシーンも多い。
しかしこれを考慮しても、本作の濃密な物語体験は魅力的です。
豪華な作りが臨場感を生み、ワンシーンをより印象的にしてくれます。
総プレイ時間が短いぶん、演出の出し惜しみもありません。
「四ツ目神」の伝承が巻き起こすのは、切なさも混じえたストーリー。
王道の“田舎×伝奇”を、手軽に、しかも“濃く”楽しめる一本です。
大作さながらに分岐する、マルチエンド
本作は多くのADVと同様に、マルチエンドを採用しています。
大きな特徴は、分岐パターンに工夫が凝らされていること。
通常のムカデ型の分岐だけでなく、エンドを一定数回収するとルート解放、その先でまた分岐…と。
エンディングの度に、物語の新たな可能性が見えてきます。
ノーマル→トゥルー…と結末が大きく変化し、読後感がアップグレードされていく感覚は、まさに大作ADVのそれ。
ミドルプライスとは思えない分岐パターンで、ゲームならではの“変化する読後感”を味わえる作品です。
値段に対し、コンパクトな内容
本作唯一気になった点。
それは作品が値段に対して、ややコンパクトである点です。
値段は3000円弱
クリアまでの時間はせいぜい5時間程度。謎解きがスムーズなら更に短くなるでしょう。
元が一部無料のスマホ向けアプリであるため、仕方ない部分もあります。
前述の通り豪華な作りなうえ、本編以外のおまけシナリオなどもあるため、不満とまでは思いません。
しかし振り返ってみると、物足りなさを感じるのも事実です。
終わりに
値段に対するボリュームに納得できるかどうかが、購入のポイントになるでしょう。
ハードにこだわりがないのであれば、試しにでもスマホ版でプレイするのもあり。
マルチエンド、リッチな作りにより、大作さながらのADV体験ができる作品。
伝奇ものらしく、切なさを含んだシナリオも〇
値段に対してコンパクトな点は、時間のないゲーマーにはむしろプラスになるかも。
スマートフォン向けアプリ発と侮っていると、驚かされる一本です。
テキストADVファンによる、テキストADVファンのための、オリジナル雑誌“風”記事。
「テキストADVマガジン」を、月に一度公開しています。
CSの新作スケジュールから面白いフリーゲーム紹介、簡易レビューまで詰め込んだ、ADV好きのための記事です。
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