予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」/ ダン・アリエリー
行動経済学の本。
僕ら人間はいつだって、合理的に行動したいと思っているはず。
2つのやり方があって、こっちの方が合理的だなと思う方があったら、そっちを選ぶはず。
ところが著者ダン・アリエリーは人間を観察しているうち、どう考えても不合理な方を選ぶシーンがあることに気づいた。
人間が不合理な選択をしてしまうパターンを発見して、更に実験により単なる偶然出ないことを証明していく一冊。
面白かった。
客観的に見てみると明らかにおかしい選択なのに、直感に反しない不思議な感覚を味わった。
もし自分がこの選択をさせられたら、不合理な方を選ぶだろうな…と。
特に面白いと思ったのは「社会規範と市場規範」だ。
ダンによれば、とある協会が弁護士たちにこんな依頼をしたらしい。
「困窮する退職者たちの相談に、1時間あたり30ドルで相談にのってくれないか?」
残念ながら返答はNo
30ドルでは安すぎるらしい。
そこで依頼を、こう変えてみた。
「困窮する退職者たちの相談に、無料でのってやってくれないか?」
すると、答えはまさかのYes。
明らかに不合理だ。
なんで30ドルでは安すぎると断ったのに、無料だと引き受けるのか。
どう考えてもおかしな行動だけど、不思議と直感には反しない。
例えば、家族や友人に以下の2パターンの頼みごとをされたとする。
A. お願いがあるんだ。隣町まで買い物に行ってくれないか? 50円払うからさ。
B. お願いがあるんだ。隣町まで買い物に行ってくれないか?
自分でも変だと思うが、報酬がないBの方が「いいよ」と言いたくなる。
報酬が伴うと、私たちは行動に報酬が見合っているかで判断してしまう。
たった50円?電車賃にもならないんだけど?と思ってしまう。
たいして無報酬であると、思いやりとか人助けの精神で判断するようになる。
困っている友人や家族を、助けたいと思う気持ちが働く。
同じ行動を取るなら、1円だって報酬があった方がいいに決まってる。
でも、無報酬の方が気持ちよく行動できる。
まこと不合理である。
…とかこんな面白い話がぎっしり。
ただこの本を読み終えてすぐあたりに、有名な行動経済学や心理学の研究が次々に追試に失敗!!って記事がTwitterに流れてきたので、ちょっとがっかりした。
主人公思考 / 坂上陽三
アイマスPの間では有名なガミPこと坂上陽三の本。
彼の仕事術やマインドについて書かれた、自己啓発系の一冊。
具体的なテクニックよりも、考え方に関する内容が多かった。
面白いなと思ったのは、終始「組織で働くことのメリット」について語っていること。
自己啓発本って流行どころは大体「仕事やめろ!」とか「好きなことで稼げ!」みたいな、読む人が言ってほしいことを言う本が大半。
反組織のフリーランス至上と言うか。
自分もこういうのばっかり読んでいた時期があったので、読んでいて気持ちいいのはスゴくわかるんだけど。
その点この本は、いかにして組織で上手くやっていくか?だとか、組織で働くことでしか得られないメリット…だとか、逆の立場で書かれていて新鮮だなと。
語り口も柔らかくて、人柄を感じられる一冊だった。
アイマス開発裏話!みたいなのは少なめです。
自分のことがわかる本――ポジティブ・アプローチで描く未来 / 安部 博枝
学生向けの自己啓発…というか、自分を知り、そして良いところを発見していくための一冊。
自己理解。
今はSNSの力で何やっても世界大会に巻き込まれるから、こういう自分の良いところ見つける手助けをしてくれる本は大切なんじゃないかな。
自分は小学生の頃、クラスでいちばんスマブラが上手かった。俺は強いって自信があった。
その幻想はXでのオンライン対戦で砕かれたけど、今の子供たちははああいう井の中の蛙感を味わう機会って全然なかったりするのかも…?、と。
そうなると、自分の良いところを自信もって挙げることも難しくなりそう。
だってその道の凄い人がウジャウジャいる(ように見える)し。
だからこの本は良いと思う。
自己啓発くささが薄いので、そういうの苦手なビジネスパーソンにも良い一冊だと思います。
自分が特に面白いと思ったのは「ジョハリの窓」の話。
自分に友達が少ないのは、秘密の窓をデカくしがちだからなのかな。
女の子はどう生きるか: 教えて,上野先生! / 上野 千鶴子
フェミニズム入門…という印象。
著者の「弱いものが弱いままで安心して生きられる社会」という考え方はしっくりきた。
女性はずっと翼を折られてきたのだとも。
有名なスピーチの全文が読めるのも良い。
ただわざとだろうが、著者も男をステレオタイプに当てはめて語っているのは良くないと思った。
きみの友だち / 重松清
なんかもう、重松清は憑依脳力でも持ってるんじゃないの?ってほどリアリティを感じた一冊。
交通事故で一生松葉杖生活になった小学生の視点での「友だち」の話からスタートする群像劇。
人物の心理とか行動とか、出来事とか。
どれも創作とは思えないリアリティがあって、これはさすがだなと。
実際に体験してきたとしか思えない。
読んでいて、自分がこの人物ならこう感じるだろう…って点を、著者に見事に先回りされているような感覚というか…
それぞれの視点から「友だち」を描く群像劇であると同時に、ある女の子の成長を描く話でもあるんだけど、この見せ方も巧みだと思った。
わずかに引っ掛かりを残す語り口で、オチまで常に興味を持たせる書き方も好きだな。
ベテラン作家の一冊だけど読みやすいので、年齢性別関係なくオススメです。
小学生の頃、偶然読んだ同じ著者の「ナイフ」って本にあった短編「ワニとハブとひょうたん池で」にショックを受けたのを思い出した。
コメント