闘うことって生きるってことでしょう?
真紅 / 「ローゼンメイデン」 PEACH-PIT作 より
「ヒュプノノーツ」は、ヒューマンドラマが展開される作品でありながら、ジャンルはローグライク型RPGという異色の作品です。
攻略パターンがほぼ固定化されており、1000回遊べるような深みを持たせてはいません。
運に左右されすぎる難易度も気になりました。
しかし、胸温まる物語と、ローグライクRPGの遊びごたえをコンパクトに両立してしまった内容はユニークの一言。
物語とジャンルの相性を無視してつなげ、見事に融合させています。
人生とは戦いであり、それを本当に戦闘にしてしまう独自の表現。
これによる唯一無二の体験を楽しめる作品です。
タイトル | ヒュプノノーツ |
ジャンル | ローグライクRPG |
対応機種 | Switch |
価格 | 800円 |
判定 | 良作 |
プレイ時間の目安 | 5~8時間 |
備考 | Switch版は、基本プレイ無料のアプリ版に追加要素を加えた内容 |
総評
「ヒュプノノーツ」は、ヒューマンドラマが展開される作品です。
主人公は、かつて親友であった青年と女性。
とある装置の力で半生を振り返り、大切なものを思い出すことに。
現実に立ち向かい、また歩みだすまでが描かれます。
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幼いころの約束と、未来へと進むための希望。
これを本作の物語から感じました。
傷ついた現代人を癒すような、温かいストーリーが語られます。
にも関わらず、本作のジャンルは「ローグライク型RPG」なのです。
ゲームスタートすると、文字通り直線のマップに放り出されます
ここでは一般的なRPGと同様に、ザコ敵とランダムエンカウント。
倒せば経験値を獲得、一定値に達すればレベルアップします。
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RPGと言っても、主人公たちはごく普通の社会人。
物語の舞台も当然、現実世界です。
そこにはスライムもゴーレムも、ましてや魔王など存在すらしません。
そんな世界で何と戦うのか
それはもう、いわば「人生におけるザコ敵」たち。
幼少期には「ニンジン」や「セロリ」から始まり、やがて「マラソン」、「上級生」
更に進めば「英語」に「仲の悪い子」、果ては「母親」まで。
これらは確かにザコ敵のような存在ですが、蹴って殴って戦う相手ではありません。
しかし本作は、彼らを本当にザコ敵として、RPG型の戦闘にのせているのです。
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これはたいへんユニークであり、本作の最大の魅力でもあると感じました。
主人公の境遇、成長を表現する方法として…と言うのも、もちろん。
同時に、プレイしていて思わず吹き出してしまったり、「あるある」と共感しながら遊べるポイントになっているためです。
またRPGの常識から外れているぶん、予測できない面白さも。
何せマジメな顔して進めていたら、「読書感想文」と遭遇、バチバチやり合うことになっていたりするのです。
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とは言っても。
人生の敵をRPGのザコ敵として…とは、面白い表現です。
しかし、そこはやっぱり“ガワ”の部分です。
肝心のゲームとして、遊びとしての面白さは…?
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この点でも心配はいりません。
というのも「ヒュプノノーツ」、ローグライク型RPGとしても、なかなかの遊び応えを持った作品なのです。
マップは一直線で、前後に進むか戻るかのみ。
また出現する敵の種類も、マップのどの辺りにいるかで決まっており、この点にローグライクらしさはありません。
一方、ゲームオーバーになれば、アイテムを全て失ってレベル1から。
また敵の攻撃力は高く、それでいて回復手段に乏しい。
それゆえに引き際の見極めが肝心…など、このジャンルの特徴は確かに感じられる内容。
明確な“歩数制限”も定めてあり、レベル上げという安易な攻略をさせない厳しさも。
ワンマップの攻略にかかる時間は試行錯誤を含めても1~3時間ほど。
決して高難易度とは言えないでしょう。
ですがパターンを見極められない内は洗礼を受けることが多く、表現の面白さだけに終わっている作品ではありませんでした。
ローグライク型RPGとしても、意外なほど遊ばせてくれる一本です。
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とはいえ、本格ローグライクには及ばない面も少なくありません。
全体を通して攻略パターンが決まりすぎており、横幅の狭さを感じます。
また、やや運に頼って難易度を調整しすぎている印象を受けました。
腕前よりも引きの良さが重要。
パターンにうまくのせるゲームであり、運を実力で覆す面白さはありません。
1000回遊べる内容を期待してしまうと、浅さを感じてしまうでしょう。
これはゲームの欠点というよりも、そもそも開発側が腕前を求めすぎない内容を狙った結果であるのかもしれません。
しかし温かみのある物語と、ローグライク型RPG
この異種融合を実現し、しかも面白い内容に仕上げているので驚きました。
独自の表現を楽しみ、ときに笑わせられ、同時にローグライクとしての厳しさと、ヒューマンドラマの物語も体験できる作品。
似たようなゲームが思いつかない、インディーズらしい独創性を持っており、遊んでよかったと言える一本でした。
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詳しいレビュー
青年と女性の胸温まる…ローグライクRPG
触れる人を癒す物語と、ローグライクRPG
この異種融合こそが本作の最大の特徴であり、魅力です。
主人公は現代を生きる普通の青年と、女性。
青年のもとに不思議な夢を見せる枕が届くところから、物語がスタートします。
枕が誘う夢の世界は、なぜか青年の幼いころ。
夢を通して思い出す、ある少女との出会い、そして大切な約束。
少女はいま、無情な現実に追い詰められ、助けを求めており…
現代人へ向けたメッセージのような、温かみのある物語が展開されます。
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でありながら、ジャンルはローグライクRPG。
半生を振り返り、その中であった戦いや成長を、RPGの形に仕上げているのです。
踏破を目指すマップは一直線であり、前後にしか移動できません。
しかしその過程でランダムにイベント、ザコとのエンカウントがあり、これをこなして経験値を獲得、レベルアップ。
右端にいるボスを撃破すればマップクリアとなります。
イベント、出現するザコ敵の内容に、現実世界での事柄をそのまま持ち込んでいるのが面白い。
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例えば幼少期には「ニンジン」や「ピーマン」など、嫌いな野菜の筆頭がザコ敵として立ちはだかります。
やがて思春期、高等教育、就職…と、物語が進むにつれて、出現する敵も大きく変化。
RPGの常識に当てはまらない分、予測がつきません。
同時に、進むごとにシナリオも進行。
ボイスは無し、画面上にひたすらテキストを表示するだけ…と、割り切った表現方法です。
これが見た目の印象よりもずっと良いものでした。
小粒ではありますが、読後感の良い物語です。
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ヒューマンドラマの優しい物語を、RPGの型にのせた作品。
ユニークな体験も相まって、印象に残るゲームです。
ガワだけじゃない、ローグライクとしての面白さ
本作の更に良い点は、表現だけに終わっておらず、ゲームとしても面白い作品に仕上げてくれている点です。
公式は本作を「一次元ローグライクRPG」と位置付けています
遊んでみれば確かに、このジャンル特有の難しさを感じる内容でした
マップの構成は文字通りの一直線。
出現する敵もほぼ予測可能など、全てにおいてローグライクらしさを持っているわけではありません。
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しかし、コンティニューや中断以外のセーブは不可。
HPが尽きれば問答無用でマップの初めから。
当然所持品は全て失うなど、大原則は守った作りです。
何よりも嬉しいのは、このジャンルの醍醐味である「駆け引き」を楽しめること。
敵の攻撃は痛く、それでいてHPの回復手段は限られています。
攻略のポイントになるのが、レベルアップすれば全回復というルール
これにより、強敵に対し挑むか引くかの見極めが重要になっています。
マップは直線であるため、探索はできません。
しかし戻ることは可能で、敵が強いと感じたら下がることも大切です。
一方で明確な歩数制限があるため、いつまでもレベル上げをするわけにもいかず…
と、驚くほどローグライクらしい駆け引きを楽しめる作品なのです。
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ゲーマー泣かせの難関も多いこのジャンル。
その中では易しい部類でしょう。
しかし、表現の面白さだけに終わらず、ゲームとしての遊び応えも実現してくれているのは嬉しい点。
ガワと中身。
両立した内容を求める方にも、本作はオススメできます。
とはいえ、1000回遊べる深みは無し
ローグライクらしい駆け引きを楽しめる本作。
しかし、やはり本家大本の名作たちに、深みの面では及びません。
各マップとも攻略のパターンがほぼ決まっており、プレイごとの変化を楽しめるとは言い難い。
パターンを理解し、のせられるかどうかが勝負で、配られたカードをやりくりする楽しみは薄いです。
パターンを見つけるまでは難しいですが、分かってしまえばなんてことはない難易度。
変化に乏しく、また目指すものも決まり切っているため、深みを感じられません。
決まった攻略法を手探りで見つけ出すところに、面白さがある作品です。
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ゲーム後半の難易度調整を、運に頼りすぎている点も気になりました。
ローグライクとは運と実力のうち、運が重要に見えて、本当は実力で8割が決まる。
でも、2割の運が大化けすることがあって…
こんなところが面白いジャンルだと思っています。
しかし本作の終盤のダンジョンは、この比率が逆転してしまっていると感じました。
詳細は伏せますが、序盤の引きが悪いと捨ててしまいたくなる難易度。
難しい…というよりも、当たり待ちをさせるような調整に感じられ、これはもったいない。
もう少し運の比率を下げてもよかったと感じました。
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ただ、本作は公式サイトでも「運を飼い慣らして」と説明されており、これは仕様であるのかもしれません。
そもそも本作は、スマートフォン向けの無料アプリから始まっています。
当然、ゲーム慣れしていないプレイヤーも対象にしているでしょう。
それなのに実力重視にしてしまうと、プレイヤーを選ぶ内容になってしまいます。
ローグライクらしい駆け引きを楽しめるのは、間違いありません。
ただ、1000回遊べる深みを求めてしまうと、物足りないと感じるかも。
終わりに
振り返って思うに、本作は「共感」がキーワードであるのかもしれません。
「セロリ」だって「算数」だって、誰だって一度は戦ったことのあるザコ敵ですから。
深みの面では値段相応。
ですがヒューマンドラマとローグライクRPG
この融合を実現し、しかもゲームとしても面白い内容に仕上げた内容は唯一無二のもの。
インディーズらしい独創性が光る作品です。
週末の一本にオススメですよ。
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