【バイオハザード ヴィレッジ】レビュー・評価 「7」ここに完結。シリーズの歴史に刻まれる、新たな英雄の物語

4.0
FPS / TPS
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バイオハザードは、数々の英雄…ヒーローを生み出してきた作品です。

おなじみのクリス・レッドフィールド、レオン・S・ケネディはもちろん。
「3」や「リベレーションズ」のジル・バレンタイン
「0」のレベッカ・チェンバースなど

シリーズを通して登場してきたヒーローと共に、我々プレイヤーはB.O.W、そしてその裏に渦巻く陰謀と戦ってきました。

そのバイオハザードのヒーローたちの歴史にまた一つ、新たな名が加わりました。

彼の名は「イーサン・ウィンターズ」


「7」にて一般人主人公として登場した彼は、プレイヤーにとって謎の存在でした。
その経歴は一切明かされておらず、歴戦の英雄であるクリスやレオンと比べると、やや頼りない印象が拭えませんでした。

しかし、本作「ヴィレッジ」をプレイして、私のイーサンへのイメージは全く違うものになりました。

今ならはっきりと言うことができます。

「イーサン・ウィンターズ」は英雄であると。

その出自はおろか、素顔すら明かされることのない主人公、イーサン。
彼の名は間違いなく、バイオハザードの英雄の歴史に刻み込まれました。

「ヴィレッジ」は、はっきり言ってゲームとしてはやや平凡な作品になっている、という印象を受けました。
「7」や「RE2」のような、内臓が締め付けられるような「ホラー」の要素が薄れ、クリーチャーをガンガン撃ちまくる内容
面白いけど印象に残りづらいゲームになってしまっています。


しかし同時に、シリーズ史上もっとも遊んでよかったと思える作品でもあります。
大切な家族のために戦うイーサンは間違いなく英雄であり、その結末を見届けた今「ヴィレッジ」は決して忘れることのできない作品となりました。

総評

「バイオハザード ヴィレッジ」は、「7」の完結編と言える作品です。

主人公は7同様、イーサン
ベイカー邸での悪夢の一夜を乗り越えた、彼の物語。
それが本作で一つの区切りを迎えます。

ゲーム内容は、味付けを大きく変えた「7」という印象を受けました。
FPSとして展開された新生バイオハザードであった「7」
その魂は「ヴィレッジ」にも受け継がれており、プレイ感覚がよく似ているためです。

「7」と大きく異なるのは、シリーズ屈指の人気作「4」の特徴を大きく盛り込んである点です。
マップにはクリーチャーが多数配置されており、多勢に無勢になる状況が少なくありません。
更にアイテムショップである武器商人と、ゲーム内通貨の存在。
アタッシュケースによる持ち物制限など、「4」にもあった仕様が使われており、何よりもヴィレッジ=村と言えば、「4」を思いださずにはいられません。


「7」と「4」と言えば、どちらもシリーズの転換点となった作品。
この二つの融合は、また新しい形のバイオハザードを体験させてくれました。

しかしこの融合、120%成功しているかと言えば、そうではない…という印象を受けました。
シリーズ最恐であった「7」と、~3までの流れを大きく変え、アクションシューティングとしての側面を強くした「4」
両作は合わせてみても相容れない部分が確かにある
「7」のあの今でも忘れらない怖さを「4」の要素が打ち消してしており、今一つ尖ったものがない作品になってしまっています。

やはりあの「7」を経験した私がバイオハザードに求めているのは、シビれるような「ホラー」
その点において本作は、やや物足りません。
咆哮をあげて襲ってくる敵や、もはや少年マンガに出てくる能力者の域に達しているボス、神出鬼没なアイテムショップの存在。
それらからは「7」で感じた心細さ、人が人を襲う恐ろしさを味わうことができませんでした。



しかし、それでも「ヴィレッジ」を遊んでよかったと強く感じています。

それは本作が、これまでのバイオハザードとは全く異なる「大切なものを取り戻す戦い」を描いているからです。

思えば、バイオハザードの主人公たちは「巻き込まれ型」が多かった。
初代にせよ4にせよ7にせよ、事件に巻き込まれてしまい、クリーチャーの巣窟から脱出を目指す…というのが物語の主でした。(もちろん例外もあります)

しかし、「ヴィレッジ」は違います。
できるだけ詳細は伏せますが、「ヴィレッジ」におけるイーサンの目的は「大切な家族を取り戻すこと」であり、「化け物退治」でも「脱出」でもありません。

その圧倒的な力で、あらゆる命を奪いつくすB.O.W
イーサンは、家族を取り戻すために、やつらに立ち向かいます。


ここがどこかも分からない、支援もない、仲間だと思っていたクリスからは裏切られる。

それでも、愛する家族のために戦うイーサンは、もう「謎」でも「一般人」でもない。
彼は既に「英雄」で、「ヴィレッジ」はその戦いの軌跡を描いた作品です。
そしてその結末を見届けたとき、心の底から感動しました。

ゲームとしては、平凡な作品になってしまった印象はぬぐえません。
決してつまらないわけではない。しかしバイオハザードは「つまらなくはない」なんて評価に落ち着くシリーズではないはずです。
あの「7」を、「RE2」を、「リベレーションズ」を体験したからこそ、本作に求めるものも大きく、そこに達するものではなかったと感じました。


しかし、描かれるイーサン・ウィンターズという英雄の物語は必見です。
これからプレイされる方は、大切な家族のために立ち上がる彼の姿を目に焼き付けてほしい。
その結末を、見届けてほしい。
本作を最後まで遊べば、きっと彼は忘れられない主人公になります。

詳しいレビュー

家族を取り戻す、英雄の戦い。その結末を見届けよ。

前述の通り、本作の大きな魅力は「大切な家族を取り戻す」ことにスポットを当てている点です。

オープニングの時点で、これまでのバイオハザードとは全く違う見せ方を「ヴィレッジ」はやってきます。
まず描かれるのはイーサンと妻のミア、そして生まれたばかりの愛娘、ローズの幸せな日常のワンシーン。
これまでのシリーズでは考えられないようなオープニングです。
しかしその幸せは開始早々に、まさかのクリスの襲撃によって崩れ去ってしまう。



護送中に事故が発生、イーサンは謎のクリーチャーが潜む村に放り出されます
はじめこそわけが分からず状況に振り回されますが、その村に娘、ローズが捕らわれていると知った時、「ヴィレッジ」の物語が、イーサンの戦いが幕を開けます。

惨たらしく殺戮の跡が残るその村で、一人銃を手に立ち上がるイーサン
立ちはだかるのは猛然と襲い来るクリーチャー、人を人とも思わぬ残酷な所業を繰り返すボスたち
時に目を覆いたくなるほどヒドい目に合う彼ですが、それでも、心が折れることはありません。

彼の目的は「洋館からの脱出」でもなければ「B.O.W.の調査」でもありません。
愛する娘を、取り戻す。それだけです。
そして家族のために戦うイーサンはもう「巻き込まれた一般人」ではない。
その姿はクリスやレオンと同じ、いやひょっとすると彼ら以上の「英雄」であり「ヒーロー」です


そして英雄の戦いの結末を見た時、ただ感動させられました。

もちろん、その内容を語るような無粋なことはしません。
英雄、イーサン・ウィンターズの戦いとその終わりは、ぜひあなた自身が「ヴィレッジ」をプレイして見届けてほしい。

イーサン・ウィンターズの、大切な家族を取り戻す物語
これこそが本作最大の魅力です。

怖さが薄れ、ゲームとしてはやや平凡。

シナリオには強く感動させられた本作ですが、肝心のゲーム部分は平凡になってしまったと感じます。

やはり「7」のあの怖さを今でも忘れられず、あれこそがバイオハザードの醍醐味だと思っています。
その点、本作は「4」の特色を盛り込んだことでホラー要素が薄れ、ひたすらクリーチャーを撃退するゲームになってしまいました。

クリーチャーを撃退…というのは「7」でも同じでしたが、そこにはゲーム全体が醸し出す不気味さや怖さがあり、だからこそ他にない体験が楽しめるゲームでした。
その曲がり角の奥が怖い。徘徊する敵の足音が恐ろしい。一歩も進めなくなるような怖さが、私に取ってのバイオハザードです。



しかし「ヴィレッジ」の徒党を組んで、咆哮を上げて襲い来るクリーチャーからは不気味さも怖さも感じづらい
能力者としか言いようがないスキルを持つボスたちに覚えるのは「恐怖」よりも「驚愕」でした


ホラーの成分が薄れた結果、「バイオハザードならでは」が見えてこない。
そのため、体験が平凡な作品だと感じました。

「おまえが勝手に決めたバイオハザードならではなんぞ知ったことか」という意見も重々承知の上です。
決してつまらないゲームだとは思っていません。
私も「4」は大好きです

ですが、あの「7」を踏まえた上での新作としては物足りない
そんな印象を受けました。

気になってしまうシューティングとしての操作性

ホラーが薄れたことで気になったもう一つの点が、本作の操作性の悪さです。
移動、照準合わせ、リロード、どれをとっても動きが鈍く、操作して苛立ってしまうことがありました。

ホラーゲームであればそんな鈍さも「味」だと感じます。
しかし「ヴィレッジ」くらいのゲームになると、それが一転してしまいます。

敵は多く、素早く動くのに対し、こちらは軽快に動き回って次々に倒す…ということはできません。
追い詰められるばかりでフラストレーションのたまるシーンが多かったです。

せめて「4」の体術のような、群がる敵に一撃をお見舞いするアクションでもあれば…と思うのですが。

世界観を壊しかねない、能力者じみたボス

本作のボスは、賛否あるだろうと感じました。
その理由は、もはやバトルマンガのキャラクター並みの「特殊能力」を持っているから。

ウイルスや菌による変異で説明をつけるのは無理があるほどに、凄まじい能力を持ったボスが登場します

バイオハザードのボスに能力なんて言葉を使うのも、違和感があります
しかしアレを目にしてしまったら、そうという他ありません

新しいタイプのボス、体験を用意するのは歓迎です。
しかし本作のそれはかなりぶっ飛んでおり、バイオハザードの世界観を破壊しかねないものです。

終わりに

求めているものとは違った部分も少なくない「ヴィレッジ」

しかし描かれた物語と、そのエンディングは、バイオハザード史上もっとも心に残るものでした
「7」を遊んだファンならば、本作を遊ばない理由はありません。


イーサン・ウィンターズの戦いの結末を、見届けてみてはいかがでしょうか

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