【アイドルマスター スターリットシーズン】レビュー・評価 「今回は、面白いぞ」はっきりそう言える、シリーズ屈指の良作。

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「家庭用ゲーム機でアイドルマスターを遊ぶ時代は、終わってしまったのか?」


PS4で新作をリリースするも、芳しくない評価が続いたCSアイドルマスター。
ここからアイマスを知った私にとって悲しいことですが、主流の変化を感じずにはいられませんでした。

しかし、これを覆す良作が、ついに現れました。

一つ、どうしても気になってしまった点があり、最高傑作だと言いたいけれど、言えません。

それでも「今回は、面白い」
スターリットシーズンは、はっきりとそう言える良作でした。
成果が目に見えて現れるレッスン、ステージを繰り返す日々は、一度入り込めば止め時がありません。
新アイドルを加えて、全員参加のシナリオを追う物語性の強さも特徴。
けっして短くないプレイ時間を、楽しんで駆け抜けることができました。

タイトルアイドルマスター スターリットシーズン
対応機種PlayStation®4/STEAM®
プレイ時間の目安40~60時間
判定良作
ボリューム大
二周目に大きな追加要素あり

総評

「アイドルマスター スターリットシーズン」は、CS向けアイマスシリーズ4年ぶりの新作です。
これまでのメンバーであった13人に加え、同ブランド内の他作品から集まったメンバーと合計29人からなるユニット「プロジェクト ルミナス」
プレイヤーはこれをプロデュースし、大型ライブの成功を目指します。

シリーズ屈指の良作であると感じました。

伝統であったシステムを一部廃止するなど取捨選択がされており、これはシリーズを遊び続けてきたファンには不満点となりうるでしょう。

しかし、それでも興味があるならば是非本作を手に取ってほしい
主戦場をアプリに移し、CS向けの作品は不振が続いた本シリーズ。
今作でやっと、この流れを変えることができたと感じます。

ようやく言うことができます。
今回は面白いぞ、と。

「育成→実戦を何度もループし、高得点を目指すスコアアタックゲーム」

これが本作から受けた第一印象でした。


本作は「繰り返し」が基本となるゲームデザインがされており、プレイヤーはゲームクリアまでひたすら、以下のルーチンを繰り返します

1. アイドルを育成パラメータを上昇させる「レッスン」

2. 会話イベントを通して、スキル獲得のためのポイントを入手する「コミュ」


3. 育成したアイドルで、リズムゲーム風のスコアアタックに挑戦する「ステージ」

この3要素を何度も繰り返し、アイドルが成長させながらエンディングを目指します。

この繰り返しが、一度始めれば2時間、3時間と遊び続けてしまう魅力を持っています。
繰り返すたびに、「ハイスコア更新」という成果が、プレイヤーに返ってくるためです。

ステージの様子。左上の数字が、ハイスコアです。



上記の1~3をループする度に、アイドルのステータスは確実に上昇。
ステータスはスコアに大きく影響するため、より高いスコアを出せるようになっていきます。
繰り返すほどに、良い結果が返ってきます。

繰り返しやルーチンと聞くと、作業のようなゲームを連想してしまう方も多いかと思います。
しかし本作のルーチンはハイスコア更新=成果が常に目に見える形で現れるため、むしろアイドルを上へ上へと成長させる気持ちよさすら感じました。

成果の出ない退屈な時間がほとんどないため、作業のようなプレイ感覚はありません。
やるたびに良い結果がでる本作のルーチンは、ただそれだけで気持ちがよく、やめ時を失うほど夢中にさせられました。



もちろん、合間には膨大な量の会話イベントが用意してあります。
更に本作は、一本のストーリーにそって進める“物語性”が、従来のシリーズより大幅に強化。
この点でも、プレイヤーを引っ張る内容に仕上がっています。

ストーリーという道のりを、育成と実戦のタイヤで、「スターリットシーズン」は進みます。
決して短くはありません。

ですが目的地へ近づいているのが数字ではっきりと示されるため、進むことがどんどん楽しくなってくる。
アイドルたちの賑やかなおしゃべりが絶えないため、プレイヤーも退屈することはありません。



実に快適であるスターリットシーズン道
しかし一つ残念なのは、徐々にその道が狭く、進みづらくなってくる点です。

ゲーム前半は道幅が広く、どのアイドルを、どのように育成するかがプレイヤーに委ねられています。
一点集中するもよし、みな平等に目をかけてやるもよし。

しかし進むにつれて、ゲーム側が要求するアイドルのステータスがどんどん高くなります。
すると自然に、誰を、どのように育成するかの選択肢が狭まってきます
アイドルに厳しくならざるを得ず、ゲームクリアのために「ムダ」を廃する必要が出てきます。

アイドルを自由に育てることが、難しくなっていきます。



最もよくないのは、進め方に「ムダ」が多すぎるとガス欠を起こし、長いやり直しになる可能性がある点。
運転をプレイヤーに委ねていながら、自由に走りすぎると、だんだん苦しくなってくる。

事前に、ムダを出しすぎないように!とゲームの方から教えてくれればよかったのですが、あまり口出ししてこないのです。
ならばと自由にやっていると、後がキツい。

スキル習得画面。ポイントは限られており、無駄遣いしづらい。


ゲーム後半の厳しさは賛否分かれるだろうと思います。
アイドル育成ゲームとして、厳しさを含んだ内容を否定はしません。
ただ育成方針をプレイヤーに委ねていながら、自由にやりすぎると苦しくなる難易度ならば、せめてそれを予告しておいてほしかったと感じます。

しかし、それでも「今回は面白い」
自信をもってそう言うことができます。
成果が目に見える形で更新され続けるルーチンは、それだけで夢中にさせられます。

そのうえ大きなシナリオまで用意してあるため、止め時がありません。
終盤は厳しくなりますが、そのぶん成長したアイドルたちでステージクリアする度に、達成感を得られました。
同ハードで3作リリースしていながらも進化を感じるグラフィックは、ファンでなくても目を奪われるであろう美麗さ。
新アイドルを交え、険悪な雰囲気を作ることなく一致団結を描いたストーリーも、爽やかな読後感を得られるものでした。

詳しいレビュー

新アイドルを迎えて描く、「険悪」のない一致団結のシナリオ

本作のシナリオでは、従来のシリーズに登場した13人に加え、主にアプリで展開される姉妹作から選ばれた15人。
そこに本作からの新アイドル「心白(こはく)」を加えた、29人のアイドルからなるユニットをプロデュースします。
ライバルユニットにも新メンバー「亜矢」が参加し、計32名のアイドルが登場。

描かれる内容は、超大型ライブ「スターリットシーズン」に向けてユニットが団結していく様
王道ですが、その描き方が上手いと感じました。


新アイドルである心白と亜矢は、ともに活動を続けていく上での問題点を抱えています。
そのためどちらもユニットに溶け込みきれておらず、結成後、彼女たちをどう迎え入れていくのかに、他のメンバーは悩むことになります。

中央が心白。なじんでいるようにも見えますが…



アイドルユニットの一致団結までがテーマになると、どうしてもユニット内での衝突や分裂が一つの大きなポイントになってしまうように思います。
これ自体には、文句はありません。
雨降って地固まる、とも言います。
時に本音でぶつかり合うからこそ団結は深くなるものですし、プレイヤーを引き込むためにもこの描き方を否定するつもりはありません。

しかし、「アイドルマスター」はキャラクター同士の関係が既に完成してしまっており、しかも姉妹作とはいえ他作品からキャラクターが参加している以上、この展開は容易には行えません。
下手に衝突、分裂を描けばキャラクターのイメージを損なってしまいかねず、これはキャラ人気の高い本シリーズにおいてはタブーとなること。



そこを本作は、既存のアイドルたちが、迷いを抱えた新メンバーを仲間として迎え入れる…という流れをベースに用いる。
これによりキャラクター同士が険悪な雰囲気に陥ることなく、それでいて一致団結までのシナリオを描いてくれています。

完成したパズルを壊すのではなく、新しい1ピースを迎え入れる物語です。

新アイドル、心白と亜矢

彼女たちがどんな問題を抱え、どのように解決し、ユニットとして団結していくのか。
本作のシナリオの見どころとなっています。

育成→実戦→成果。ハイテンポでルーチンを回すスコアアタックゲーム

総評にも書いた通り、本作は繰り返しが基本のゲームデザインです。

ミニゲームをこなし、アイドルのパラメータを上昇させる「レッスン」
会話イベントを楽しむほか、結果次第でスキル習得のポイントも得られる「コミュ」と「営業」
育てたアイドルで、リズムゲーム風のスコアアタックに挑む「ステージ」

決められた期間にこの3要素を何度もループし、アイドルを育成。
ステージでより高いスコアを目指します。

左上がハイスコア。更新を目指し、アイドルを育成します。



繰り返しと聞くとどうしてもネガティブなイメージが浮かびます
しかし本作の場合はむしろ、プレイヤーを夢中のスパイラルに誘う内容に仕上がっていると感じました。

育成にせよ、スコアアタックにせよコミュニケーションにせよ。
結果がすぐに表れ、常に数字という目に見える形で成長を感じられるのが、その理由です。


レッスンを行えば即座にパラメータが上昇し、それはステージでのスコアに直結します。
1ループするごとにアイドルは成長し、スコアもどんどん上昇していくため、常に向上を感じながらプレイすることができます。

成果が目に見えて向上するルーチンは気持ちがよく、ただそれを回すことが楽しい。
1ルーチン自体は10~20分程度で終わるため、短い時間でアイドルの成長を実感できるタイミングが多くあるのもポイントです。

やる度に成長を感じられるこの繰り返しは、一度始めてしまったらやめられない気持ちよさを持っていると感じました。

行ったレッスンにより、パラメータが上昇します。



また、ステージで行うリズムゲーム風のスコアアタック。
これも奥が深く、やりがいを感じる内容でした。


基本は音楽に合わせて一定のリズムでボタンを押し続けるだけなので、音ゲーのような難しさはありません。
最大の特徴は「押すボタンによって得られるスコアがリアルタイムで変動し続ける」こと。
画面内に表示される様々な情報をもとに、今どのボタンを押せば高得点が入るのかを常に考える必要があります。

※再生すると音が鳴ります。



パラメータの高いアイドルで編成したステージでも、押すボタンの選択によっては思ったよりもスコアが伸びない
逆に、アイドルの並び順やボタンの選択にこだわってみると、信じられないスコアが出ることも。
アイドルのパラメータはもちろん重要ですが、プレイヤーの工夫も大きく結果に影響を与えます。

この仕組みが、ゲームクリアまでに何度も遊ぶことになるリズムゲームを、常にスコアを意識して楽しめる内容へとアレンジしてくれていると感じました。

工夫と繰り返し
やったことが常に成果に反映されるルーチンは、やめ時を失う面白さを持っています。


一方、リズムゲームがあまり好きではない…という方には、ややオススメしづらいのも事実です。
「一定のリズムでボタンを押す」ことは問題なくできること前提のスコアアタックであるため、これ自体が苦手であると非常に難しいゲームに感じられてしまうでしょう。

まだ進化し続けるグラフィック

本作はPS4でリリースされる3本目の作品です。
にも関わらず、まだ進化を感じさせるグラフィックには驚きました。

こればかりは一見に如かず。
公式のPVを見てもらうのが一番です。


アイドルたちのモデルがやや丸みを帯び可愛らしく。
瞳の表現も美しくなり、一瞬の見せ場がより印象的になりました。

またステージ演出、時間の経過やライトによる光の表現も美麗であり、お気に入りのステージは何度でも繰り返し見たくなってしまいます。

後半になるほど、「厳しさ」を見せる難易度

本作の唯一残念だった点は、ゲーム後半の難易度です。

本作には一定以上のスコアを出せないとゲームオーバーになってしまう、ボスとも呼べるステージが定期的に訪れます。
これの突破を大きな目標とし、日々のルーチンをこなしていきます。

目標スコアは、決して低くありません。
そのため、ある程度は先を見据えて育成する必要があります。

全員をまんべんなく…というプレイスタイルではやや厳しい難易度。
また育成に関わるミニゲームやコミュニケーションに失敗してしまった場合、なるべくセーブ&ロードによるやり直しをしたくなる難しさです。

3択から正解を選ぶと、スキルポイントを多く獲得。意外と難しいです。



この難しさ自体は否定しません。
元来アイドルマスターとは、トップアイドルを目指す上での厳しさも持ったゲームでした。
29人もいるユニットの中で、結果を残せない、伸び悩むアイドルにはある程度見切りをつける必要があるのは、つらい選択ですが理解できます。

しかし、私が気になったのは、本作の持つ「厳しさ」が、ゲームのシナリオ、数々の仕様といまひとつ噛み合っていない点です。

シナリオは基本的には和気あいあいとした面が強く、その中で競い合いのシーンはほとんどありません。
足並みをそろえて、トップアイドルを目指す物語。
だからこそ、それをプロデュースする側としても、「脱落者」を出すプレイはしたくなくなる。
失敗してしまうこともあるけれど、それも含めてアイドル活動。
このようなシナリオを見せられては、結果をだせない者に見切りをつける…なんてプレイは、できなくなってしまいます。




またゲーム側も、ゲームプレイの成否や「ムダ」を、厳しく問うことをしてきません。
何かに失敗しても大きな演出があるわけでなく、またリトライを促されることもなく、そもそもリトライがシステムに組み込まれてもいません。
するならセーブ&ロードを使ってプレイヤーの手で。
ゲームプレイの精度は、それほど求められない仕様なのです。

そしてこれまたステージに大きく関わる、誰をどのように育成するかの方針も、基本的にプレイヤーに委ねている。
29人はそれぞれ伸びやすいパラメータ、覚えるスキルの順番などが異なっているため、どうしても結果を出しやすいアイドルと、そうでないアイドルが出てしまいます。
そのため悲しいかな、「育成の最適解」が自然に生まれてきます。

伸び悩むアイドルが、どうしても出てきます。



しかし、その最適解に従うかどうかはプレイヤーの自由。
たとえ効率が悪い、スコアに直結しないとわかっていても、行き詰っているアイドルを育ててやりたいならば、そうすることも可能です。
システムもそれを咎めません。

このようにある程度の自由さ、プレイヤーごとの育成のやり方、時にはある失敗など、それらを許容するゲーム作り。
何より「蹴落とし合いのない一致団結」を描くシナリオを展開する本作。



にも関わらず、ゲーム中盤から上がり始める難易度が、こんな甘いプレイを許しません。

誰をどのように育てるかは自由であり、たまに失敗しても何も言わない。
そしてシナリオでは一致団結していくアイドルたちを描く。

しかし実際のゲームプレイの上では、思うように伸びないアイドル、すぐに結果をだせないアイドルにかけてやれる時間はどんどん少なくなっていく。
弱いアイドルを、切り捨てざるを得ない難易度になっていく。
自由にやっていたのでは、立ち行かない厳しさになっていく。

一致団結のシナリオを描いておきながら、強いアイドルばかりにスポットが当たるゲームになっていく。

この難しさはシナリオ、失敗と自由な育成を許容するゲームの仕様と、噛み合っていないと感じました。

右側がクリア条件。


終わりに

久々の家庭用ゲーム機向けアイドルマスターを、堪能しました。

中盤以降は難易度が上がるため、育成はある程度計画的に。
苦しい選択ですが、一部アイドルに見切りをつける必要も出てきます。

あまりそういうプレイはしたくないのですが、ゲーム側がそれを許してくれません。


しかし、久々にグラフィックのみならず、面白さを更新したアイドルマスターであったことは間違いありません。
成長と成果、シナリオ進行のスパイラルが、プレイヤーの時間をごっそりと奪う良作でした。

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