レビュー内で触れたいことには触れたため、補足説明のような内容になります。
まず良いと感じたのは、独自の設定がプレイヤーを引き付けるスパイスとしても、百合をいっそう盛り上げる舞台装置としても機能している点です。
それを強く感じたのがマコーとパヴォーネのエピソード。

マコーはレンとロネットの秘め事の目撃をきっかけに、堕落(プエラリウムにおいての)してしまいます。
パヴォーネを想いながら自身を慰めるシーンは、それだけでも学園×百合らしい背徳感があります。
そのような恋の芽生えを、本作は「悪しき種の発芽」とし、背徳感をいっそう煽ります。
やがて彼女は歪んだ花嫁により異造化。
最後はルクたちの手によって眠りにつきます。

許されない恋が膨らんでいくさまを「悪しき種の発芽」
その爆発を「異造化」、更にルク、アルエットとの戦い。
葛藤の心はシマンとなってあふれ出す…
と、禁断の恋愛を描く定番ともいえるポイントに、独自の設定によるアレンジを加えていると感じました。
これが一連の百合をより印象的にしています。
それが極まったのが最終章、ルクが抱えた真相です。
アルエットがプエラリウムに迷い込んだ理由。
夜中に突然目覚めるナゾ。
ムチを手に戦うルク。
学校と呼ぶには歪な構造、システムのプエラリウム…
多くのナゾが、ルクの感情に向かって収束していきます。

大きな世界を見せつつ、百合から脱線するどころか、全てはルクとアルエットの恋愛をドラマチックに演出するために構築されたのでは…と感じるほど、百合をたてて締める最終章でした。
印象的だったのは、ルクが礼賛祈祷を唱えながらアルエットの首を絞めるシーン。
それまで何度もアルエットを殺しつつも、口づけで逆造化を流し込む、高所から突き落とすなど、その方法はどこか間接的です。
そのためルクは、アルエットの死ぬ瞬間を見たくないようなイメージを持っていました。
しかしあのシーンでは、アルエットが苦しみ息絶える瞬間を焼き付けるかのように、その手でアルエットを絞め殺さんとします。
ルクの心境はいったい、どのようなものであったでしょうか。

一方でもったいないと感じたのは、アヴェルラ以外のキャラクターの生い立ちがあまり語られないこと。
マコーが見たひまわりや、ルクの母親とのエピソードがより深く語られていれば、更に感情移入できたのではと。
ただ描写が不十分だとまでは思わなかったため、レビューでは触れませんでした。
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