【ガールズ&パンツァー】感想 リアルな戦車と可愛いキャラ、そして平坦なシナリオ

3.5
アニメ感想
© GIRLS und PANZER Projekt
この記事は約5分で読めます。

ブログでの新たな挑戦として、アニメの感想記事を書くことにしました
第一弾は最終章3話の公開が目前に迫った「ガールズ&パンツァー」

もう何度も見ている作品ですが、改めて感想を書いてみました

女子高生×戦車にリアリティを持たせる、大胆な設定

本作を見てまず驚いたのは、美少女×戦車というファンタジーな組み合わせでありながら、その世界には驚くほどリアリティがある点です。

女子高生が戦車に乗って、実弾を撃ち合って戦う、しかもそれが「女子の嗜み」として浸透しているという、とんでもない世界
こんなブッ飛んだ世界であるからこそ、細かい部分を支える設定はしっかりと作り込んである。

本作を見ていると、我々視聴者側にはどんどん疑問が浮かんできます。

・「戦車が女子の嗜み!?」
・「実弾って危険すぎだろ!」
・「いやいや市街戦って建物とか壊しちゃうでしょ!?」


根本からしてぶっ飛んでいるので、次から次へと現実では考えられない点が出てくる。
本作はそこを、ファンタジーだから…とうやむやにしていません。
世界のリアリティを支える細かい設定の部分で、手を抜いていない。
しかもそれを、我々視聴者の疑問に先回りするかのように、物語の中で見せてきます。

・淑やかでつつましく、凛々しい婦女子を育成することを目指した伝統的な文化、それが戦車道
・戦車はコーティングされており、弾が当たっても危険は少ない
・壊れた建物に対しては、その修繕費用が保証されている。新築できるので壊れて喜ぶ人もいる


根本がぶっ飛んでいるぶん、それを支える設定も大胆です。
それが驚きとユニークさを生み出し、興味を持ってしまいます。


現実ではあり得ない点にきちんと説明をつけているからこそ生まれる、世界のリアリティ、物語の説得力。
美少女×戦車という、ファンタジーすぎる組み合わせでありながら、その内容は妙にリアリティに満ちており、ウソっぽさがない。

ここが本作の魅力であると感じました。

© GIRLS und PANZER Projekt

名前はわからないけど忘れられない、個性抜群のキャラクター

本作のもう一つの大きな魅力と言えば、個性豊かなキャラクターたち
とにかく登場人物が多いアニメで、主人公が通う学校だけでも、実に32人ものキャラクターが登場。

人数が多い上に細かい紹介もないので、名前すらも覚えられません。
そこを本作は、キャラクターそれぞれを名前で覚えさせるのではなく、同じ戦車に乗る3~5人組を一つのチームとして描き、チームの個性で印象付けてきます

どのチームも強烈な個性を持っていて、名前は分からなくても、バレー部チームや一年生チーム…と聞けば、あのチームか!とパッと思い浮かぶ。
こうすることで、たくさんの登場人物がいて、一人一人を覚えられない。
なのに、キャラクターが印象に残るアニメになっています。

© GIRLS und PANZER Projekt


やはり戦車に乗っているシーンが多いアニメで、その戦車は素人目にはどれも同じに見えてしまいます
ガンダムやエヴァンゲリオンと違って、一台一台にはっきりわかる差がありません。(素人目には…ですが)

こういう点でも各チームの個性が活きていると感じます。
キャラ以上に覚えられない戦車。
しかしそれに乗るチームの個性が強いため、同じようなモノでもそこに差を感じることができます。

また、登場人物の多さは、試合中の賑やかさにもつながっています。

戦車は戦争の道具でもあり、人の命を奪うために使われるモノ。
作中では「試合」という形式を取っているとはいえ、そんな戦車で実弾を使って撃ち合う…というのは、下手をすれば殺し合いのように見えてしまいかねません。

しかし本作の場合、たくさんのキャラクターたちの会話を絶やさず、賑やかに試合シーンを描くことで、戦車がもたらす重たいイメージを見事に中和しています。
やっていることは相当物騒なのですが、キャラクターたちの緊張感に欠ける(褒めてます)やり取りが常にある。
一年生チームがワーキャー騒いだかと思えば、バレー部チームがバレー用語で会話しだしたり、歴女チームが謎知識でうなずきあっていたり…

© GIRLS und PANZER Projekt


そのぶん、戦車の描写は思いっきりリアルにしてあります。
美少女成分が中和してくれるからこそ、戦車による撃ち合いをリアルに表現できたのではないかと思います。

戦車アニメでありながら、大量のキャラを余すことなく魅力的に描かている。
良い影響を与え合って、美少女キャラアニメとしてもしっかり楽しめる内容になっています。
それでも印象の薄くなってしまっているチームはいますが(アリクイさんチームとか…)

もうひと盛り上がり欲しかったシナリオ

本作のもっとも残念だった点が、盛り上がりに欠けたシナリオです
起承転結の「転」がないため、どうしても平坦な、山のないシナリオになっていると感じました。

戦車道復活→全国大会出場→優勝まで、大きな挫折や壁もなく達成してしまいます
部活モノやスポ根モノなら、この間に試合での敗北やチーム内での衝突など、順調だった流れを大きく変える「転」があります
これがあると物語に予想できない展開が生まれるのですが、本作にはそれがない。
全国大会優勝までが、どうも上手くいきすぎているように感じます

キャラ、設定、世界観はどれもユニークなだけに、シナリオの盛り上がりの少なさはもったいないです。
劇場版含めて一つの作品とみて、テレビシリーズを序章と位置付けるならまた変わってくるのですが。

とは言え本作のシナリオは、短い1クールの中で戦車道復活→全国優勝までを描き、あんこうチームの面々にスポットを当てたシーンも用意するなど、盛りだくさんの内容
そのため、大きな転を入れる余裕はなかったのだろうと思います。

© GIRLS und PANZER Projekt

総評

他にはない戦車×美少女の組み合わせと、ファンタジーでうやむやにし過ぎない設定
そして魅力的な美少女キャラが特徴の本作。
戦車をリアルに描く一方で、キャラクターの可愛さについても一切の妥協無しで描かれており、両輪で楽しむことができるアニメです


一方、そんなユニークな設定に対してシナリオはやや平坦
見終わったあとで思い返したくなるような名場面がなく、ビジュアル面の強さに対してこれはもったいないと感じました。


劇場版→最終章とドンドン面白くなるので、本作はあくまで序章として楽しむと良いのかもしれません。

タイトルとURLをコピーしました