ギャルゲーのシナリオ構造の基本形「恋愛+課題A型」についての話

ゲーム雑記
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ギャルゲーのシナリオにおける、基本の構造とは何だろう?

こんなことは今まで一度も気にしたことがありませんでした。しかし最近、物語論みたいなものに興味を持ち、いくらか勉強をしています。無論、物語の作り方はフリーダム。なれどやはり面白くするための法則、基本形は既に確立されていたのです。

勉強のために最初に手に取った一冊が『映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術 』でした。これは物語創作の正典(カノン)ともいうべき必読書(※出版社談)らしく、創作をする人にとっては常識レベルの一冊なのかもしれません。

そうして物語の構造に興味を持ち始めた同時期。ちょうど遊んでいたギャルゲーが、俺たちのゆずソフトがおくるジャパネスクADV『千恋*万花』だったのです。

最初に攻略したのは画像左下にいる白髪のメインヒロイン、朝武芳乃ともたけ よしのでした。

物語論を学び始めていましたから、やはり物語の構造に興味を持って遊びました。すると、見えてきたのです。

ことギャルゲーにおいて、基本とも言えるであろう物語構造のパターンが。

芳乃ルートが、実に、この基本形に忠実かつ折り目正しい作りであったことが、この気づきを後押ししたのだと思います。

というわけで今回は、私が今になってようやく気付いた、ギャルゲーのシナリオの基本形、構造について。

※基本形はこれ一つではありません。
※記事全般は、私の主張に過ぎません。

今回説明するギャルゲーのシナリオの基本形「恋愛+課題A型」。その6つのステップ

名前が無いと不便なので「恋愛+課題A型」と命名しておきます。

簡潔に、この型の基本の流れを書いておきます。これは以下の6つのステップで成り立ちます。

【1】出会い
【2】ヒロインの取り組むべき課題Aが明らかになる。
【3】課題Aに取り組む過程に、主人公が関与。
【4】3によりヒロイン→主人公の好感度増。恋愛が成立。
【5】、ヒロインが課題Aと対決、解決。
【6】エンディング。

こんな感じです。なおあくまで基本形であるため、これに他のステップが入ることもありますし、順番が入れ替わることもあります。

以下、解説します。

【1】出会い

まず、主人公とヒロインが出会います。

この出会いを印象的に描く場合もありますし、特別なことをせず、ごく自然に描く場合もあります。印象的に描かれるのは大抵、メインヒロインであるように思います。

ちなみにKEYはこの出会いのシーンをとても大切にしているイメージです。私も結構気にしながら遊びます。

Summer Pockets REFLECTION BLUE より。
ヒロインとの出会いが印象的な作品です。

【2】ヒロインの取り組むべき課題Aが明らかになる

次に、ヒロインの取り組むべき課題Aが明らかになります。

これは出会った時点で既に発生している場合もありますし、物語を進める過程で徐々に立ち上がっていく場合もあります。また課題Aを本格的に立ち上げる前に、いわゆる日常パートを描き、伏線を張ったり、主人公と人物の関係性や性格を示すことも多いです。

この課題Aは、物語の推進力になります。

いかにして課題Aを解決するか?という物語の目的地ができるからです。ヒロインは課題Aを解決するために行動するでしょう。その過程にドラマが生まれ、物語になります。もちろん課題Aを立てずに物語を進めることも可能です。その場合は日常系だとか呼ばれるジャンルに近くなるでしょう。

この課題Aが深刻であればあるほど、物語は重みを増します。

また課題は1つとは限りません。課題Aの先に課題Bがある場合もあります。課題Aに取り組む過程で、ヒロインが本当に乗り越えなくてはならない課題Cが立ち上がることもあります。

実例を挙げて見てみましょう。

ケーススタディ『蒼の彼方のフォーリズム』

あおかな

『蒼の彼方のフォーリズム』の場合、【1】の出会いのあと日常パート、その後にスポーツの上達という課題Aが発生します。

ヒロインらは日々練習に取り組むことになります。そして本作の場合、これは共通ルート段階での表面的な課題であり、個別ルート突入に合わせて、よりヒロインの深層に踏む混んだ課題Bが発生する構造になっています。

ケーススタディ『ToHeart2』

『ToHeart2』と『蒼の彼方のフォーリズム』の大きな違いは、ヒロイン全員に関連する課題Aが存在しないことです。

『蒼の彼方のフォーリズム』におけるスポーツの上達のような、ヒロイン全員を一列にするような課題Aが『ToHeart2』にはありません。ヒロインそれぞれがそれぞれの課題Aを持っています。そのため本作は、個別ルートに入ると、当該ヒロインの課題に関連しないヒロインは一切登場しなくなることも多いです。このような課題の立て方もあります…という例です。

【3】課題Aに取り組む過程に、主人公が関与

2で立ち上がった課題Aに取り組むヒロインに、主人公が何らかの形で関わります。

手助けである場合もありますし、ヒロインの性格を根本から変える存在になる場合もあるでしょう。この関与が、ヒロイン→主人公の好感度が増加する要因になります。ここで主人公がカッコいいところをしっかり見せると、ヒロインの恋心に説得力が出ます。ろくに活躍できないと、何もしない主人公と揶揄されます。

ちなみに、むしろ主人公側が課題を抱えており、そこにヒロインが関与する場合もありますし、お互いが課題を抱えていて、補い合うように物語を進める場合もあります。

ケーススタディ『蒼の彼方のフォーリズム』

『蒼の彼方のフォーリズム』の場合、主人公はコーチとしてヒロインらの課題に関与します。

コーチですからヒロインから憧れの存在として映るでしょうし、またヒロインらの挫折や苦難に積極的に関与しにいくのも、自然な流れで描くことができます。

ケーススタディ『白昼夢の青写真』

『白昼夢の青写真』では主人公、ヒロインの双方が課題を抱えており、お互いがお互いを必要とする形で物語が展開されていきます。

【4】3によりヒロイン→主人公の好感度増。恋愛が成立

課題Aに関与したことにより、ヒロイン→主人公の好感度が増し、恋愛に発展します。

好感度の高まる様の描写が不十分であると、恋愛の成立がご都合主義的になります。この前後で個別ルートに突入することが多いように思います。

ケーススタディ『千恋*万花』

『千恋*万花』の場合、その土地の呪いを解く…というヒロインの課題Aに、主人公は手助けをする形で関与します。

主人公はこの過程で、祖父の厳しい修行を受け、そしてキケンな相手に体を張って立ち向かいます。ヒロインが主人公に好印象を抱くのに十分な描写であり、恋愛の成立へと違和感なく発展していきます(実際にはもうちょっと捻りがありますが)。

【5】ヒロインが課題Aと対決、解決

この辺りが、物語的な最後の山場になります。ラスボスです。

ヒロインはついに立ちはだかる課題Aと対決します。課題はAでない場合もあります。Aは既に解決済みで、新たに出現した課題Bとの対決の場合もあるでしょう。主人公が抱えていた課題Cとの直面の場合もあります。

いずれにせよ、ヒロインや主人公の深層心理に根差した、巨大な課題である場合が多いように思います。

【6】エンディング

課題を解決し、物語はいよいよ終幕です。阻む壁がなくなった二人の関係はより深まります。

課題解決と同時にエンディング、エピローグでその後を語る場合もあります。またファンディスクに一切を委ねるケースもあるでしょう。課題を完全には解決せず、後味の悪いバッドエンド、続編、グランドエンドに至る最終ルートにつなげることもできます。

以上が基本形「恋愛+課題A型」です。

解説は以上です。まとめますと

「ヒロインの抱える課題Aを主軸にして、その解決に主人公を関与させることで恋愛を成立させ、課題Aの解決をエンディングとするシナリオ構造」ってな感じです。ギャルゲーに留まらず、多くの恋愛ものに共通するかもしれません。

またこれはあくまでも基本形であり、実際は課題の構造がもっと複雑であったり、課題Aの解決が極めて困難であったり、課題Aを解決するためにはヒロインが過去のトラウマを乗り越えなくてはいけなかったりします。課題Aを解決しなくてもいいですし、またヒロインごとに全くことなる課題が立つこともあります。

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