2022プラチナよかった大賞『蒼の彼方のフォーリズム EXTRA2』
椅子を蹴って立ち上がる。叫びだしたくなる。
面白かったゲームは数あれど、中でも最も私を揺さぶった作品は本作
『蒼の彼方のフォーリズム EXTRA2』でした。
これは予定調和の物語でありません。約束された勝利はありません。ただ、今、目の前の相手に、絶対に勝ちたい。その勝負のことしか考えられない。そうして試合に挑む、言わば戦士のお話でありました。
駆け引き、展開、応酬に息を飲みました。1枚絵の組み合わせでキャラを動かす演出に目を奪われました。何よりも、キャラクターたちの「絶対に勝ちたい」…その気持ちがいよいよ現れるシーンに、まるで本当にそのスポーツを、現実で見ているかのような心地にさせられました。勝敗が決する瞬間。悔しさと嬉しさが綯い交ぜになって、叫びだしたくなりました。
そうして本作を遊び終えた私を包んだのは、憧れでした。自分の持ちうる全てをかけて、その後どうなるかなんて考えず、今それに全身全霊を尽くす彼女たちに、憧れを覚えました。
しかし、実は心残りがあります。
それは、『蒼の彼方のフォーリズム EXTRA2』から得られる体験は、アニメや映画でも同様に得られる体験なのでないか?という問いに、私自身が明確な答えを出せていないことです。
私は『蒼の彼方のフォーリズム EXTRA2』は、テキストADVでなければならない作品であったと感じています。静画による切り取る表現、また密な心理描写、個にスポットを当てたストーリーなどがその理由ですが、しかしそれをはっきりと言語化することができずにいます。
私が読み手として力をつけたとき、もう一度『蒼の彼方のフォーリズム EXTRA2』を遊びたいと思っています。だから本作は私にとって2022年もっとも優れた作品であり、また同時に、いつか必ず再会を果たすことを誓う作品でもあるのです。
2022ゴールドよかった大賞『白昼夢の青写真』
私と、ヒロイン『波多野 凛』の、きわめて個人的な出会い。
本作をゴールドよかった大賞に選んだ理由は、上記の出会いがあったからに他なりません。
『白昼夢の青写真』には何人かのヒロインが登場します。その物語はいずれも良いもので、夢中になって遊びました。その中でも、私は波多野 凛と出会えたことを、とても嬉しく思っています。
波多野 凛のお話は、「書く」にスポットを当てた物語でした。かつて書くことを志し、そして諦めた主人公が、再び書くことを目指す。2022年、ブログだの自作小説だので書くことがいよいよ習慣になり、同時に私より遥かに力のある書き手がこんなにいるんだと思い知る1年でした。その私に、この物語が突き刺さらないハズがなかったのです。
遊んでいる途中はもちろん。既に遊び終えて何か月も経った今でも、波多野 凛の言葉が私の背中を押してくれることがあります。
もっと気軽に書いてもいいと思います。鼻歌を歌うみたいに
Laplacian『白昼夢の青写真』より
主人公がそうであったように、私はきっとこの先何度も、波多野 凛の言葉を思い出すことでしょう。
2022シルバーよかった大賞
ヘンタイ・プリズン
本作のおかげで、2022年は頭っから濃密でありました。長大な物語を4編も描いたこと、またギャグシーンのセリフ回しなど、他に選んだタイトルとは一味違う評価点を持つ作品でありました。
EVE ghost enemies
小次郎が大きなものを失い、そしてまた疑いの世界へと戻っていくシーンがただ印象的です。中盤にも大きな見どころがありました。
9-nine-
能力者バトルと、恋愛。これを違和感なく結び付けて描いたことが最も大きな評価点でした。また演出面にも力が入っていました。
ミドル・ロープライスよかった大賞
四ツ目神-再会-
スマートフォン初とは思えないハイクオリティ。大作さながらの分岐をコンパクトながらも味わえる内容が印象的でした。特に演出面はこの価格帯とは思えない品質だと感じました。
終のステラ
2022年の大きな心残りの一つが、本作の感想を書けていないことです。本作のどこが、どのように優れているのか。『蒼の彼方のフォーリズム EXTRA2』同様、再会を誓う作品です。
この歌よかった大賞
夏のタイムカプセル / 『白昼夢の青写真』より
飢餓と宝玉 / 『マルコと銀河竜』より
ILLEXECUTION / 『ヘンタイ・プリズン』より
終わりに…作品を読むことの難しさを感じる1年
よかった大賞は以上です。
この1年、いくつもの作品を遊ぶ中で強く感じたのが、作品を読むことの難しさでした。
私はこの1年、メジャーなタイトル、AAAタイトルのレビューや感想を書いてきませんでした。実際のところは
『スプラトゥーン3』
『ポケットモンスター バイオレット』
などを遊んでいるにも関わらずです。
これらの作品はたいへん優れているがゆえに、優れた読み手も集まり、ハイレベルなレビュー、批評、感想が生まれます。その中に、作品を読む力が彼らに比べて不足している私が参加することを、恐れたのだと思います。自作小説を公開するときも、このようなことを感じていました。
しかし自身を卑下するばかりでもなく、読み手としての力をつけられた、と実感できる瞬間もありました。
『素晴らしき日々 ~不連続存在~』
『穢翼のユースティア』
などの感想は、今読み返せば至らない点はある(特にすばひび)ものの、去年までの私ならここまで作品を読むことは絶対にできなかったと感じる内容にできました。
これからも優れた作品は生まれ続ける。
『蒼の彼方のフォーリズム EXTRA2』
『白昼夢の青写真』
のような作品に出会ったとき、後悔しないためにも、いかに読むかを考えなくてはいけない。
そう思う1年でありました。