タイトル | モスメン1966 |
ジャンル | ADV(ノベル) |
対応機種 | Steam、Switch、PS4他 |
価格 | 990円~1210円 |
プレイ時間の目安 | 2時間 |
総評
「モスメン1966」は、LCB Game Studioが開発したテキストADV作品だ。
全3作で構成されているシリーズで、「モスメン1966」はその第一弾。
アメリカ合衆国はウエストバージニア州で目撃された未確認生物、モスメン。
計3名の主人公たちは、このモスメンとの遭遇をきっかけに、複雑怪奇な出来事に巻き込まれることになる。
公式は本作の物語としてのジャンルを「ピクセル・パルプ」と位置付けている。
パルプとは本来は紙の原料になる植物繊維を指す言葉だが、物語のジャンル名として用いられた場合は「大衆向け」だとかの意味を持つ。
本作はピクセルアートで構成されたパルプ=ピクセル・パルプというわけだ。
歯に衣着せず言ってしまおう。
取っつきの悪い作品だ。
掴みからして意味、目的がわかりづらく、それが最後まで変わることはない。
話の起こりの時点で、既に取っつきづらさを感じた。
いつの時代、どこの誰の話なのかも説明しないまま、ゲームはスタートする。
のっけからして唐突だが、面食らっている暇はない。
その後は伏線なんだか入りの小話なんだか区別がつかない話が続き、ますます意味が分からなくなるからだ。
何なんだこれは。何をする話なんだ。怪物が出てくる物語じゃないのか。
戸惑うばかりだった。
別の主人公にバトンタッチしても、この掴みどころの分かりづらさは変わらない。
いよいよモスメンと遭遇しても、話は盛り上がるどころかいっそう混迷さを深めていく。
異形の化け物が現れ、今まさに襲われているのに、主人公たちは妙に冷静でリアリティがない。
更に登場人物は増えるわスピリチュアルな設定まで顔を出しはじめるわで、ますます掴めなくなっていく。
なんだ? 「モスメン1966」はプレイヤーに何を見せたいのだ?
とりあえず本作がパニックホラーでないこと(私の予想に大きく反して)だけは確かだ。
これは何を描く物語なのか。
主題は何なのか。
プレイヤーは何に注目すればいいのか。
何一つ明確にならないまま、エンディングを迎えてしまう。
総プレイ時間は2時間弱。
投げっぱなしの伏線は多い。
だからエンディングを見終えても、何かを成し遂げたような感覚は全くなし。
結局何が始まって、それがどうなって、どう結んだのかもよく分からない。
異形と遭遇し変化する人物の心境なのか、モスメンにまつわる伝説の解明なのか、その戦いの様子なのか。
何を描きたかったのかが見えてこない。
「モスメン1966」は、お世辞にもオススメとは言えない作品だ。
だがそんな本作にも、無視できない魅力を放つ一面がある。
不気味なライトグリーンが印象的なアートワークだ。
本作のビジュアルは、それこそモスメンの体液でもイメージしたかのような、毒々しい黄緑色が強烈。
ピクセルアート自体も、とくに人物の表情は迫力のある出来だ。
洋画のワンシーンを切り取ったかのようなリアリティがある(なぜか肌が青白い点に目をつむれば)。
一風変わった色使いのアートワークは、ただでさえ掴みどころの難解な本作の物語に、より不可解な雰囲気を感じさせる。
この独特の作品世界は、確かに他ではなかなか味わえない。
またあんなことを書いておいてなんだが、本作の物語は前のめりになって触れてみれば、決してつまらなくはない。
序盤の意味不明な話や名詞も、覚えておけば後々伏線として回収されることに気づけるだろう。
ほっぽり出された伏線や人物、モスメンにまつわる設定も、一つ一つは興味深く、真相は気になる。
よく分からない話だ。
シリーズの掴みとして、役割を果たしているとは言い難い。
これが名のある文豪の作品ならともかく、ミドルプライスで配信するADVならばもっとわかりやすい導入が必要だった。
いったい何に期待して次を待てばいいのかが分からない。
値段に対するボリュームも不十分。
気味の悪い色使いのアートワークは見どころ。
そもそもがパルプ=大衆向けのくだらない話と位置付けられた「モスメン1966」
あまり深く読み取ろうとせず、奇妙なものを奇妙なままに受け止めれば、晩酌の良いお供になるやもしれない。
「モスメン1966」はSteam他、各ハードのオンラインストアで配信中だ。
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