【――ッ違う!!!+】レビュー・評価 設定止まりのメタ要素。でも、奇想天外ネタエンドは一見の価値あり。

3.0
ADV(ノベル)
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目の前に、落とし穴がある。ちょうど人ひとり分の大きさだ。
底は見えない。

A. なんだこれ? 当然、避けて歩く
B. いや、ここはあえて飛び込む

Bを選んでしまうアナタは、「――ッ違う!!!+」を、ぜひプレイしてみてほしい。


――ッ違う!!!+」は、スタジオ木曜日(@studio_thursday)が送る恋愛ADV。
そのジャンル名は「間違い系恋愛メタノベルゲーム

主人公を待ち受けるのは、20以上のネタエンドと“メタ”な設定を持つヒロイン。
インディーズらしい、型破りな物語が楽しめます。


しかし、目玉であるメタ設定が物語に活きていないのが残念
面白い設定のみで終わってしまっており、もったいないと感じました。

タイトル――ッ違う!!!+
ジャンル間違い系恋愛メタノベルゲーム
対応機種PS4、Switch
価格PlayStation®4【プレミアムエディション】6,980 円
PlayStation®4【通常版】2,980 円
PlayStation®4 / NintendoSwitch™【DL版】2,700 円
プレイ時間の目安6時間
備考・SwitchはDL版のみの販売
無印「――ッ違う!!!」にヒロインボイス、新OPなどを加えた移植版
実況OK(要ガイドライン確認)

総評

遊び心満載のネタエンドと、ヒロインの持つメタ設定がユニーク。
ミドルプライスながら、実力ある声優さんによるフルボイスな点も嬉しい。


一方、恋愛ものとして駆け足気味で、心の変化に説得力が伴わない。
またせっかくのヒロインのメタ設定を、じゅうぶん活かしきれていないとも感じました。

「――ッ違う!!!+」は、スタジオ木曜日が送る“間違い系恋愛メタノベルゲーム”です。

その大きな特徴は、以下の二つ。

・ヒロインが「メッセージウインドウ内を覗ける」など何らかのメタ的な設定を持っている。

・机やエンピツとの個別ルート(?)など、ネタ分岐が多数用意されている。

遊ぶ者のイタズラ心を刺激するかのように、あちこちに怪しい分岐が仕掛けられています。
ニヤリとしながらあえて突っ込んでみれば、奇想天外なエピソードとエンディングが待ち受けている。


このような分岐が実に20以上用意されており、常識はずれの物語を楽しむことができました。

各ヒロインが持つメタ的設定も、既存の枠に収まらないユニークなアイディアだと感じます。

「京都に行く」を選ぶと…?


ただし、このメタ的設定がほぼヒロインの特徴付けのみに留まっており、物語にほとんど活かされていないのはもったいない。

またシナリオ進行がどうにも駆け足気味で、プレイ中は常に端折られているような感が消えません。
尺を伸ばすことは難しくても、せめて心の変化は丁寧に描いてほしかった。

恋愛ADVとしては、惜しい出来栄え。
せっかくのメタ設定が物語に活きておらず、結果平凡になってしまっています。
このゲームのヒロインしか持っていないはずの個性を、エピソードにも活用してほしかった。
出会いからエンディングまでが駆け足で描かれるため、心の機微を楽しむことも難しい。

ただそれでも、メタ設定そのものはユニークです。
そして何より一見の価値あるのは、プレイヤーのイタズラ心に応える多彩なネタエンド。
1つ1つは小粒ですがバラエティに富み、何よりぶっ飛んでいるため、インディーズらしい常識に囚われない魅力を味わえます。

詳しいレビュー

奇想天外かつ神出鬼没、常識はずれな20以上のネタエンド

本作はルート中、数々のネタエンドへの分岐が仕掛けられています。
一見はマジメそうな選択肢の中にしれっと、バレバレの落とし穴のように。

これがプレイヤーのイタズラ心を刺激します。

面白いことになりそうだ…と罠をふんづけでみれば、エキセントリックなエピソードが始まります。

1つ1つは小粒で、一発ネタの内容ではあります。
しかし、特筆したいのは多様な展開。

机などの無機物との交流(?)や、中には真のデュエリストを目指す戦いに巻き込まれるシナリオも…

このような分岐が実に20以上用意されています。
ゲーム自体が短編であるため、分岐と分岐の間隔が狭いのも特徴。
歩けばネタエンドに当たる密度です。


おいそれと挿入すれば、世界観を破壊する恐れのあるエンドの数々。
しかし本作はそもそもが“メタ”を公言している、常識はずれの作品です。
ぶっ飛んだエピソードも自然に馴染み、パックリと口を開けてプレイヤーが飛び込んでくるのを待っています。

プレイヤーのイタズラ心に応えるネタエンドは、本作最大の見どころです。

机と交流を深めよう(?)

面白いが、設定止まり。ヒロインの持つメタ設定。

本作のボイス付きヒロインは4人。
そのほとんどが、何らかのメタ的な設定を持っています。


例えば主人公の幼馴染「笹塚 愛里(ささづか めぐり)」は、画面下部のメッセージウインドウ内を読めるヒロイン。

このアイディアは、本作のヒロインに個性と魅力を持たせるユニークなものだと感じました。
購入前にもっとも惹かれたのも、この点でした。

しかし実にもったいないのは、これらメタ設定がエピソードで活かされていないこと。
そのため、ヒロインの特徴づけのみに留まってしまっています。

各ヒロインとの個別エピソードでは、せっかくのメタ設定がほとんど活かされていません。
結果、設定は面白いのにシナリオは平凡に。
肩透かしな内容になっていると感じました。
ヒロインによっては、もはやメタ設定は無かったことにされているのでは…と思ってしまうほどです。

本作だけの、個性あるヒロインの設定。
それを設定で終わらせず、エピソードにも活かしてほしかったと感じます。

駆け足で描く、ヒロインと主人公の心理

本作はミドルプライスながら複数のヒロインがフルボイス、個別ルートも用意されています。
が、そのどれもが駆け足気味で、ヒロインや主人公の心の変化をじっくりと楽しめる内容ではありません。

ゲーム内で1年の時間をかけて仲を深めていきますが、一度に一ヵ月以上飛んでしまうことも少なくない。
出会いにせよエンディングにせよ、どこか端折られている感があります。
要約を見ているような感覚があることは、否めません。



ミドルプライスかつサブプロットも大量に仕込んだ内容であるため、尺を取れないのは仕方ない部分もあると思います。
ですから欠点とは言いません。

これからプレイされる方は、そのような描き方をした作品である…と知ったうえで遊ぶと、より違和感なく楽しめるでしょう。

終わりに

面白い設定が、面白い物語にまでつながっていないのは惜しい。

しかし、七色の展開を見せるネタエンドは、それだけでも体験の価値あり。
メタ設定は活きていないものの個別ルートにはツイストがあり、お話として楽しめないわけではありません。
短時間でコンプリート可能であるため、時間のないゲーマーにもオススメです。

――ッ違う!!!+ ダウンロード版
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――ッ違う!!!+
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