【ドキドキ文芸部プラス!】レビュー・評価 どうか「言葉」を聴いてあげてほしい。

ADV(ノベル)
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あなたは「ドキドキ文芸部プラス!」を、これからプレイする予定でしょうか?

もしそうならば、この先を読まないことをオススメします。
私はあなたに、本作をぜひ何も知らない状態でプレイしてほしいからです。

もちろん、楽しみを奪わないよう配慮してレビューを書きました。
それでも、読む前の状態で味わえる楽しみを、100とした場合。
読んだ後は、必ず99以下になります。


なに、「ドキドキ文芸部プラス!」は、ダウンロード版なら1950円
プレイ時間は3~5時間ほどの短編ADVです。
レビューなど参考にせずに購入したとしても、大損することはないでしょう。

まずゲームを楽しみ、あなたなりの感想を持ち、人のレビューを読むのはその後でも遅くありません。

ドキドキ文芸部プラス! ダウンロード版
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ドキドキ文芸部プラス!
【全世界が絶賛したサイコホラーゲームへ、ようこそ!】 詩と恋愛が織りなす恐怖の世界へようこそ!好きな女の子のために詩を書き、そして消し、あらゆる障害を乗り越えて最高のエンディングを目指しましょう!『Doki Doki Literature ...




では、楽しみを犠牲にしてでもレビューを読んでから…と思う方
あるいは既に本作をプレイ済みである方

ぜひ、この先を読んでいってください。

タイトルドキドキ文芸部プラス!
ジャンルADV(ノベル)
対応機種Nintendo Switch、PS5、PS4、Xbox One、PC(Steam)
価格Steam 1520円
Xbox One 1750円
Nintendo Switch、PS5、PS4 パッケージ版 4200円
Nintendo Switch、PS5、PS4 ダウンロード版 1980円
プレイ時間の目安3~5時間

総評

「ドキドキ文芸部!」は、テキストタイプのADV、ノベルゲーです。
原題は「 Doki Doki Literature Club!」。
この頭文字を取った“DDLC”の略称でも有名な作品です。
「ドキドキ文芸部プラス!」は、正式に日本語対応、追加シナリオ収録などがなされた、いわゆる完全版。





幼馴染の勧誘により、文芸部に入部した主人公。
部の活動として詩を書くことで、部員である4人の美少女たちと交流します。


このように作品のベースは、女の子たちと仲を深めていく、ギャルゲーの形をとっています。
しかし、本作は公式PVなどにもある通り“サイコホラー”の要素を多く含む内容。
物語が進むにつれ、その本性を表していきます。


評価の難しいゲームであると感じました。

というのも、このゲーム。
面白かったかどうか、という尺度だけでは測れない魅力を持った作品なのです。

まずはギャルゲーとして幕を開ける本作の物語。
ですが、この段階ではまだ、面白いとは感じられませんでした。

気になったのは、主人公への好感度が初めから妙に高い点です。

主人公はもともと“アニメ研究会”への入部を考えているオタク気質。
しかも文学には興味無し。
これが異性から魅力的に見えるとは思えません。

にも関わらず、入部時点で既に部員からの好感度が高い。
入部早々に、主人公の奪い合いまで起こる始末。
プレイヤーとしては、彼女たちが主人公のどこに魅力を感じたのかが分かりません。



心が動くことが、恋愛につながるのだと思います。
本作にはその心の動き、動くきっかけとなる出来事の描写が足りておらず、恋愛ものとしての説得力に欠けています。

…しかし、この段階で本作を「つまらない」と決めつけてしまうのは早計です。

物語が進むうちに、やがて“サイコホラー”としての側面を強くし、いよいよ展開にエンジンがかかり始めるからです。



ここまで来て初めて、本作を面白いと感じました。
平々凡々、中の下と言っていい出来栄えだった物語に、予測不能な“狂い”
そして“不可解さ”が生まれたのが、その理由です。

ホラー演出自体は、不気味な表現を予告なく挿入する脅かしが大半。
やや美しさに欠けるやり方ではあります。

しかし、その怖さは特筆すべきものがありました。
ギャルゲーだったはずのゲーム世界に、サイコホラーが混ざることにより生じる狂い。
これが恐ろしさと同時に、物語の行先が分からない不可解さにつながり、夢中にさせられました。


狂い、得体の知れないものへと変貌していく世界。
単なるギャルゲーで終わらせずに、サイコホラーとして物語を展開し、我々プレイヤーを最後にはどこへ連れていくつもりなのか。

一級品の怖さ
同時に味わった不可解さが、私をエンディングまで引っ張ったのです。

さて、実はこの時点で本作を「ホラーゲームだ」と決めつけてしまうは、これもまた早計です。
なぜなら、狂いきった世界の果てに待ち受けているのは、実に意外なものであるからです。



それが何であったかまでを、語るつもりはありません。

ただ一つ、何か言うとすれば。
あなたを待ち受けるものは、ある「言葉」です。


拍子抜けされるかもしれません。
もちろん、正確にはそれに伴う演出と、全てを明らかにするエンディングがあります。

しかし、私は「言葉」こそが、このゲームの最後にあったものだといいたい。
その理由は、本作のギャルゲーとしての日常も、サイコホラーとしての怖さも、全てはこの「言葉」のためにあると感じたからです。


だからこそ私は本作を、面白かったかどうかだけでは判断できないと感じたのです。
ギャルゲーとしてどうだとか、ホラーとして怖いか否かだとか、それももちろん重要な点です。
しかし、それらを踏まえたうえで「言葉」が、あなたの胸にどんな角度で、どれくらいの深さまで、突き刺さるのか。
これにかかっている。

どうか、最後に待ち受ける「言葉」を、聴いてあげてください。

あなたは「ドキドキ文芸部プラス!」を、どんな作品だと感じることになるのでしょうか。


純粋に面白いストーリーを求めている人には、オススメできません。
恋愛ADVとしては薄い作りで、サイコホラーが生み出す世界の狂いは恐ろしいですが、物語の面白さには結びつきづらいものです。

ただ、「言葉」から何を感じるかによっては、ずっと忘れられない名作にもなり得る。
あなたの価値観や視点を、一変させるきっかけになるかもしれません。
どうか耳を傾けてあげてください。
「言葉」を受け止め、物語の結末を見届けてほしい。
単なる会話イベントだとして、流し読みせずに聴いてあげてほしいのです。
その後は、サイドストーリーもお忘れなく。

詳しいレビュー

薄さが目立つ、ギャルゲーとしての作り

本作のベースは、二次元の美少女との恋愛を描いたギャルゲーです。
しかし、ギャルゲーとしての作りは薄いと感じました。

主人公とヒロインの心の動きと、そのきっかけ。
この描写が浅いのが、そう感じた原因です。

主人公はオタク気質で、文学に興味はなし。
男性としての魅力があるとは言い難い設定です
しかし、それでもヒロインからの好感度は妙に高い。
幼馴染の「サヨリ」はともかく、初対面である他のヒロインまで突然主人公の気を引こうとするのは、不自然であると感じました。

ヒロインたち。一番左が幼馴染「サヨリ」



何かしら、惚れるきっかけが必ずあると思います。
本作にはその描写がありません。

にも関わらず、まるでお約束のように主人公への好感度が高まるヒロインたち
この心の動きに、人間のような深みを感じられません。

深みのないキャラクターで描かれる物語には、やはり深みを感じづらい。
ギャルゲーとしての作りは、薄いと感じました。



一方、キャラの深みを感じさせる表現が皆無だったとは言いません。
本作は文芸部での活動として、それぞれが書いた「詩」を持ち寄り、その感想を言い合うシーンが多くあります。
「詩」はキャラの心理を色濃く描写しているため、この点には深みを感じることができます…が。

これもやや難があります。
各キャラが書く「詩」が抽象的で、字面を追うだけではとても理解しきれないためです。

とあるキャラの詩。かなり分かりやすい方です。



どのキャラの詩も、ただ読んだだけではまず意味が分かりません。
キャラクターを理解し、前後のセリフなども含めて考察したうえで、初めてその輪郭が見えてくる程度。
深いというよりは難解です。
むしろ物語の取っつきづらさを上げてしまっているのでは…とも感じました。

お約束のように主人公に惚れる一面と、複雑な心理を独特な表現で詩にする一面。
これの噛み合いがやや悪く、余計にキャラクターに共感しづらくなっているように思います。

ただ、このギャルゲーとしての薄さ、仕方のない部分もあると感じます。
キャラクターの心理をじっくり描写してしまうと、それだけで一本のゲームができるボリュームになるためです。
本作を通して真に伝えたいものが先にあるのなら、テンポよく次へ進んでもらうやり方は良いと思います。

また総評でも書いたように、この段階で本作への評価を決めてしまうのは早計です。
このパートは決して長くないため、もし「面白くない」と感じても、プレイを続行してほしいのです。

サイコホラーが生み出す、狂いと不可解さ


物語が進むと起こるあるイベントを皮切りに、本作はサイコホラーへと変貌します。
ここから、展開のギアが上がります。面白くなってきます。



と言っても、ホラー表現自体は、不気味な演出を前触れなく挿入する“脅かし”が多く、これは美しいやり方とは言えません。
私もゲーマーの端くれ。
いくら怖くても、お化け屋敷のようなびっくりだけで面白いゲームだとは言いません。

ではなぜ、ここから本作が面白くなったと感じるのかと言えば。
サイコホラー演出が生む、狂いと不可解さに夢中にさせられたからです。


平和だったはずの「ドキドキ文芸部プラス!」の世界。
しかしここからはその雰囲気が一変し、徐々に、しかし著しく狂ってゆきます。
怖さ以上に、その狂いが面白い。
土台が平凡であるからこそ、なぜ、どこまで、どのように狂うのかの予測がつきません。



そして、この狂いが生み出すのが“不可解さ”です。

よくある恋愛ADVとして幕を開けたこの世界を、なぜここまで狂わせるのか。
一体このゲームは、プレイヤーをどこへ連れて行こうというのか。
何が起こるのか、どこへ向かっているのか分からない不可解さ。

これが魅力的でした。

しかし、遊び終えた今振り返ってみれば、これすらも、まだ本作の真髄ではないと感じます。

「言葉」

サイコホラーの先にある、物語の最後。
それがなんであるかを語ることはしません。
これを知ってしまうと、本作で味わえる楽しみが半減してしまうからです。

主張しておきたいのは、待ち受けているものは「言葉」であったと、私は感じたこと。
そしてこの「言葉」を、聴いてあげてほしいこと


これだけです。

この「言葉」から何を感じるかが、本作をどんな作品だったと感じるかを決めることになります。
だからこそ、耳を傾けてあげてほしいのです。
そして「言葉」を受け止めたうえで、物語の結末を見届けてほしい。

あなたはこの「ドキドキ文芸部プラス!」を、どんな作品だと感じることになるでしょうか。

サイドストーリーを、必ず遊んでほしい

「ドキドキ文芸部プラス!」の追加要素として、登場人物たちの新たな一面を描いたサイドストーリーが収録されています。

やはり内容は語れませんが、これは絶対に遊んでほしい。

「言葉」を受け止め、物語の結末を知ったうえで、必ずサイドストーリーをプレイしてほしいのです。

その理由を書けないのが、もどかしい。
絞り出すならば「救い」がそこにはあります。

この「救い」が誰に、どのような形でもたらされるのか。
ぜひ確かめてみてください。

「言葉」を受け止められたならば、きっと忘れられない物語になります。

終わりに

ADVとして、物語として良いものだったかと言えば、そうは思いません。

しかし、「ドキドキ文芸部プラス!」は確かに私の心に何かを残していきました。
本作を遊んでよかったと感じますし、たくさんの人に本作に込められた「言葉」を聴いてほしい。
本作があなたの心に、どう受け止められるのか…私自身も気になってしまう。

そんなゲームでした。

全世界で話題になったサイコホラー
体験してみてはいかがでしょうか。

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