この一週間、ゲーマーたちの間を駆け抜けた話題、いや議題がありました。
日本人のゲームのレビュー厳しい問題です
どこから始まったのか知りませんが
1.日本人はゲームレビューが渋い。すぐに悪評をつける。
2.そのせいで、日本でゲームを出すとレビューの平均点が下がる。売上に悪影響が出る。
3.だから、グローバル展開しても日本でだけはゲームを出したくない、という開発者がいる
と、こんな内容のツイートがバズったらしい(見つからなかったので詳細は不明)。
しかしプロのゲームライターが「1.日本人はゲームレビューが渋い。すぐに悪評をつける。」に対して、実際のsteamでのレビューを集計したデータを用いて反論。
この一連の流れが多くのゲーマーの目に留まることとなり、業界人、一般のオタクたちがそれぞれの立場からやいのやいのと持論を主張し合う…
という騒動がありました。
現在はやや不完全燃焼の気はあるものの、騒ぎは沈静化しております。
端から眺めていると、実際にゲームを作って世界で売っている開発者、彼らと繋がりを持っている業界人の中にも、この話題に関して言及している人が見られます
このレベルの高さを目の当たりにしてしまって、私のような趣味でやっている個人ブロガーが口を出せる雰囲気ではない、と感じていました。
しかし、私もゲームオタクの端くれ。
しかもゲームレビューをメインとするブログを運営している身として、この話題について記事を書いて、思うことを目に見える形で残したいと感じていました。
そこで今回は、全ての発端である
1.日本人はゲームレビューが渋い。すぐに悪評をつける。
これに関しまして
・それは本当なのか?
・なぜ、海外に比べて日本人のレビューは渋いのか?
・では、我々はどうすればいいのか?
この3つの点で私なりに考えをまとめてみたので、それを公開した次第です。
今回の記事の最大のポイントを、先に書いてしまいましょう。
「あなたは“5段階評価の★4”を高いと思いますか? 低いと思いますか?」
では、始めていきましょう。
整理、流れの確認
さて持論の前に、今回の騒動の流れを整理、確認しておきましょう。
話の発端となるのは
1.日本人はゲームレビューが渋い。すぐに悪評をつける。
この点。
日本人は、他国のゲーマー比べてレビューが厳しい。
他の国では高評価を得ているゲームでも、日本人には低い評価をつけられてしまう…と。
真偽はともかく、このような主張をする人たちがまずいるわけです。
それにより発生してしまう事態が
2.そのせいで、日本でゲームを出すとレビューの平均点が下がる。売上に悪影響が出る。
他国では高評価なのに、日本人の厳しいレビューにより、評価の平均点がダウン
結果、面白くないゲームに見えてしまい、売り上げにまで悪影響が出てくる。
1が事実であるならば、これは不思議な話ではありません。
全世界の平均に日本単独がどれだけ影響を…という疑問は残りますが、評価の足を引っ張る要因にはなってしまいそうです。
また、先行して日本で発売してしまうと、日本人の厳しいレビューがついてしまう
その後海外に売り出すと、日本人のレビューを見た海外の人たちが買い控えを起こしてしまう…ということも考えられますね。
そして事態は更に悪い方向へ。
3.だから、グローバル展開しても日本でだけはゲームを出したくない、という開発者がいる
いち日本人として悲しすぎる話。
しかし理解はできます。
日本で出してしまうと厳しい低評価レビューがつき、平均点がダウン。売上が下がる。
だから、他の国では出しても日本でだけは出したくない。
この3つのポイントで一つの騒動となっています。
やはり全ての原因は
1.日本人はゲームレビューが渋い。すぐに悪評をつける。
にあるように見えますす。
この日本人特有の渋いレビューさえなければ、平均評価に悪影響を及ぼすこともない。
そうなれば、日本でだけは出したくない!なんてことにもならない
ではなぜ、日本人のゲームレビューはそこまで渋いのでしょうか?
頑固職人みたいな、厳しいレビュアーばかりなのでしょうか
あるいは性格の悪い、難癖ばかりつけてくるレビュアーだらけなのでしょうか
いや、そもそも、日本人のレビューって本当にそんなに厳しいのでしょうか?
まずこの点から、考えていきましょう。
本当に日本人のレビューは厳しいのか
第一に、日本人のレビューは渋い!と言いますが、それは本当のなのかについて。
私はこれは、真っ赤なウソではない、と思っています。
なぜなら、この日本人特有の評価の厳しさは、これまでも業界人たちが言及してきた問題だからです
例えばVR専用タイトルである「東京クロノス」や「アルトデウスBC(ALTDEUS: Beyond Chronos)」を作った会社、MyDearest株式会社のCEOである岸上健人氏は、自身のnoteにこのような記事を投稿しています。
転載にならない程度に内容の一部を要約しますと
・岸上氏曰く「日本の人のレビューは世界の中でもかなり厳しい部類」
・なぜなら、日本人は★評価なら★3を、点数評価なら50点を基準にし、そこから加点減点をして最終的な評価を決めるから
・これに対し多くの海外ユーザーは、★なら★5を、点数なら100点を基準に、そこから不満に応じて減点し、評価を決める。
・そのため日本人にとっての★4は良い評価だが、海外ユーザーにとっては★4は悪評の部類。この点にギャップが生じてしまっている。
・国産ゲーは、やはり日本人からのレビューが多い=面白くても★3~★4がつきやすい
・面白いよ!と日本人が★4をつけてくれても、★4は海外からするとややダメなゲームに見えてしまう
と、このような内容を語っておられます。
業界の最前線で活躍する岸上氏がnoteに投稿している以上
「日本の人のレビューは世界の中でもかなり厳しい部類」
は、事実無根ではないと思います。
また、岸上氏が記事中でも引用していますように、あの「ニーアオートマタ」のヨコオタロウ氏も、過去に日本のレビューの厳しさについてツイートしています。
更にこの評価の厳しさ問題は、どうやらゲームレビューに限った話ではないようです
こんなコラム記事もあります。
これらの点から考えるに、やはり
1.日本人はゲームレビューが渋い。すぐに悪評をつける。
これは決して、真っ赤なウソではないでしょう。
しかし、現に日本に住み、日本人のレビューを読んでいる身からすると、違和感のある話なのも事実です。
日本人だって良いものは良いと評価します
実際多くのゲームレビューを見ても、不当に低い評価をつけるイジワルレビュアーなんてのはごく一部です。
それなのに、日本人のレビューは厳しいだなんて言われてしまう。
その背景にあるのは、一体なんなのでしょうか?
なぜ、日本のレビューは海外に比べて厳しいのか
日本人のレビューの厳しさ、その背景にあるものとは一体…
いかにも驚愕の真実でもありそうなフリをしましたが、これ実際のところは
単なる誤解
であると、私は思っています。
日本人のレビューは厳しくも渋くもありません。
ただ、評価の基準となる点が諸外国とは異なるため、誤解は生じてしまっているだけです。
1.日本人はゲームレビューが渋い。すぐに悪評をつける。
これだけでは不十分なんです
1.日本人はゲームレビューが渋い。すぐに悪評をつける。…ように見えてしまう
これが真相でしょう。
岸上氏もnote記事内で、もっと優しく評価してほしい!とは言っていません。
海外と日本は、評価の基準が異なることを知ってほしいと語っています。
もう一度、上記の岸上氏の記事の要約を見てみましょう
青で色が付いた部分に注目です
・岸上氏曰く「日本の人のレビューは世界の中でもかなり厳しい部類」
・なぜなら、日本人は★評価なら★3を、点数評価なら50点を基準にし、そこから加点減点をして最終的な評価を決めるから
・これに対し多くの海外ユーザーは、★なら★5を、点数なら100点を基準に、そこから不満に応じて減点し、評価を決める。
・そのため日本人にとっての★4は良い評価だが、海外ユーザーにとっては★4は悪評の部類。この点にギャップが生じてしまっている。
・国産ゲーは、やはり日本人からのレビューが多い=面白くても★3~★4がつきやすい
・面白いよ!と日本人が★4をつけてくれても、★4は海外からするとややダメなゲームに見えてしまう
海外のレビューは、基準が★5、満点からスタートし、減点評価で★の数を決めます。
それに対し、日本のレビューは真ん中である★3からスタート、加点と減点を繰り返し、最終的な★を決定するんですね。
それがそんなにギャップを生むの?と感じる方もいるかもしれません。
もうすこし分かりやすく考えてみましょう。
「あなたは”5段階評価の★4″を高いと思いますか? 低いと思いますか?」
この質問、あなたはどう思うでしょうか?
大抵の人は、★4は高いと感じるのではないでしょうか。
最高!とはいかないが、満足。
どちらかと言えば良い
など、満足してるけど満点ではない、くらいの評価に感じる人が多いと思います。
私たちは、★5段階評価なら、真ん中の★3を基準にして評価します。
そのため★4は、★1つ分の加点があった…ということになるんですね。
可もなく不可もなく、なら★3
しかし何かしらの良い点があれば★1つプラスして★4…と、評価を決定する。
あるいは大満足だったけど、ちょっとだけ気になる点があったので、満点にはしなかった…という評価も考えられます
いずれにしても★4はネガティブな評価ではなく、高評価と言っていい部類です。
アマゾンレビューで★4がついていたら、ちょっと安心ですよね。
しかし、海外ではこれが違うらしい。
海外のレビューは、★5段階なら満点の★5を基準に、不満点に応じて減点して評価を決定する人が多いようです。
そのため、外国人から見ると、★4とは★1つ分の減点があった…となってしまう
日本人にとっての★4は、加点の結果
しかし、外国人にとっての★4は、減点の結果
同じ★4でも、見え方が全く異なるんですね
更に、レビューに対する考え方も、日本と海外には差があるようです。
海外では、その商品に対してそれなりに満足すれば、気軽に★5をつけてしまいます。
例えば、甘くておいしいよ!と宣伝されているリンゴを買ってきたとしましょう。
外国人は、そのリンゴが実際に甘くておいしければ、それで満点の★5とします。
求めているものに対し、それなりに満足すれば減点はしない。
しかし、日本人はリンゴのように甘くはありません。
そのリンゴが本当に甘くておいしかったとしても、せいぜい★4、人によっては「美味しいけど、普通のリンゴ」ってことで、★3をつけることもあるでしょう
★5をつけるのは、甘くておいしいのは当然のこと、色やツヤの良さ、値段、みずみずしさなど、様々な加点要素がプラスされ、同じリンゴの中でも特段に優れている!という場合のみです。
ゲームも同様で、外国人はそのゲームにそれなりに満足すれば、★5をつけます。
彼らが★4以下をつけるのは、★を下げるに値するだけの不満点があった場合のみ。
そのため、★4であっても悪い評価なのです。
しかし、日本人はそれなりに満足程度では★5はつけません。
★3~4が関の山でしょう。
超大満足!でも★4に留め、満点はそう易々とつけたがらない。
あるいは、もう★5にしていいくらい満足してるんだけど、ちょーっとだけ気になることがあったから満点にはしません!みたいなケースもあるでしょう。
また映画やゲームのレビューを読んでいると、文章では大絶賛しつつも、★は4をつけているレビューが見つかったりもします。
それだけ絶賛しているのに、そのマイナス1はどこから出てきたんだ!?と、同じ日本人でも疑問に思ってしまいます
これこそ正に「加点方式」のレビューをしている証です。
大絶賛でたくさん加点しているんだけど、でも★5=満点には届かなかった
だから、絶賛だけど★4…と。
そうしてつけた★3~4が、海外の人には悪評に見えてしまう。
満点って、なんか簡単にはつけたくないんですよね…
とかく、日本人とは満点をつけたがらない気質があるようで、★3基準の文化も相まって、海外の人とのレビューの★のつけかたが大きく異なっているのですね。
これら違いこそが、
1.日本人はゲームレビューが渋い。すぐに悪評をつける。…ように見えてしまう
の原因であると考えて、間違いないだろうと思います。
★の数で商品への満足度を示す…というのは、世界で共通。
だからこそ、★4以下をつけやすい日本人は、すぐ悪評をつけるイヤな奴らだ!と、外国人から思われてしまう。
日本で先行リリースすると、それが良いゲームであっても★3~4のレビューがたくさんついてしまう
もちろん、それをつけた日本人たちは、ポジティブな評価をしたつもりでいます。
しかし、海外では★4以下は全て悪評なので、うげーこのゲームはダメだな!と誤解されてしまう恐れがある。
その誤解が売り上げに悪影響を及ぼすため、日本でのリリースは後回し、もしくは、リリース自体しない…ということを選択する開発者も出てきてしまうのでしょう。
結局、全ては誤解なんです
では、我々はどうすればいいのか
さて、上記の問題を受けて、では我々日本人レビュアーは今後どうすればいいのでしょうか?
これ、ぶっちゃけ
どうしようもありません
と、私は思っています。
生まれ育った国の文化、基準が根付くのは当たり前のことです。
なにせ学校の通知表からして5段階評価で3が基準、そんで普通にやってりゃだいたい2~4ですからね。
事情を知っている人物たちが総力を結集し、海外基準でレビューしよう!とメッセージを発信すれば、何かが変わるかもしれませんが…
それこそ我々一般人にはどうしようもありません。
それに、商品に対する満足度を正確に示す…という点においては、日本流の★3基準の方が優れているとすら思います。
だって★5基準にしちゃったら、★5を超える超大満足!みたいな時はどうやって表現したら良いのでしょうか。
案をあげるとすれば、日本人の得意技である「間を取る」ができない、★3段階評価や、steamで採用されている良いか悪いかの二者択一評価を採用する…くらいでしょうか
天下のAmazonが★5評価なので、なかなか根付かないとは思いますが…
NHKの世論調査とかも、「どちらかと言えばはい」みたいなのに一番数字が集まっていますからね
文化の違いは、そう簡単に埋められるものではありません
ただもし世界レベルの場所でレビューを公開し、その商品を応援したい!という気持ちがあるならば、その時だけでも海外基準でレビューを書く…というのはアリだと思います。
良い意味で書いた★4のレビューが、実はその商品の足を引っ張っていた…というのは、お互いにとって不幸なことですから。
終わりに ~作品のレビューは、自由だ~
今回の騒動を見て、怖いな、と思ったことがあります
それは、日本人の悪評のせいでゲームが売れなくなる! だから日本では出さない!!
という意見を耳にして、自由に作品をレビューできなくなってしまう人が出てくるんじゃないか?ってことです
だって日本人の悪評のせいで!なんて言われたら、自分のレビューが、日本からゲームを遠ざけてしまうのかな?なんて思ってしまうじゃないですか。
しかし正当な対価を払い手に入れ、正当な内容で書く以上は、どのようなレビューを投稿しようと我々の自由である…ってことは、忘れてはいけないと思います。
別に開発者たちに忖度して、世界の目を気にして、ちょっと★を高くしとこうかな…なんてことをする必要はありません。
ただ、日本と海外では基準が違うので、その点での誤解を防ぎたいなら、基準をズラした上で正当にレビューする…ということは視野に入れても良いのでしょう。
もし応援したい商品やゲームがあるならば、★をつける前にちょっとだけ考えてみると、みんなが幸せになれるかもしれませんよ。