人間の変化は物語の普遍的な主題です。
弱っちい人間が何かと戦って成長して、結果強い人間になる。金のことしか考えていなかった人間が、問題を乗り越えて愛の大切さに気付く。
こういう物語で大切になるのは…まぁなんか色々ありますが、主人公にどんな問題を与えるか、主人公はそれをどうやって乗り越えるか、結果どのように変化するか…とか、そんなところだと思います。
与える問題を誤れば、主人公の変化の方向が斜め上に飛びます。強い人間に変化してほしいなら、強い人間になることで解決できる問題を与えなくてはなりません。難しい問題を与えれば物語は興味深いものになるでしょうが、そのぶん解決策を導き出す過程の製作難度も上がるでしょう。最後に変化を遂げた主人公は、変化前には解決できなかった問題を解決できるようになっていなくてはいけません。
『everlasting flowers』は、こういうところに大きな問題を抱えた作品だと感じています。この記事ではそれを実際のシーンをピックアップしながら考えていきます。作品から自然に読み取れる範囲に話をとどめたつもりですが、ちょっと飛んじゃってる部分もあるかもしれません。
本来なら他に良い部分も挙げて「レビュー」と銘打つんですが、今回はかなり長くなってしまったので、シナリオ上の気になる点のピックアップだけをします。
始めます。
まず大まかにシナリオの問題点を語る
まずはネタバレせず、本作のシナリオの問題点を総括気味に語ります。
とは言っても、前書きの段階でざっくり語ったことと違いはありません。『everlasting flowers』シナリオの問題点は、まず主人公に与える課題の誤り。そしてそれによる主人公の変化が、主人公の持つ欲求を満たせていないことです。
主人公、深菜はある欲求を持って日常の外側へと飛び出します。そこで深菜は課題に直面し、これを乗り越えます。その過程で大きな変化をし、新しい日常へと戻っていきます。
しかし本作は、まず深菜に与える課題を誤っています。誤っているため、最後の変化を遂げても課題がしっかり解決していません。元々深菜が持っていた欲求を満たせない方向への変化になってしまっています。
一方で本作は良いところもあります。情動を刺激するシーン作りは力が入っています。そのため、その場その場で直感的に「良い」と思えるシーンはいくつもあり、これは大きな評価点になるでしょう。
とはいえ、シナリオの問題点は情動への刺激を弱めます。「なぜこうなる?」という疑問を抱いたままでは感動できません。
では、私の言う問題点とは、具体的にどこのどんなシーンなのか?
これを以下、ネタバレありで実際のシーンをピックアップしつつ考えていきます。
これより下はネタバレがあります。プレイ済みの方のみどうぞ。