毎月このブログで新作テキストADVの情報をまとめていますが、実はあの発売日リストには結構な数の抜けがあります。
例えば4月の新作なら、3月の終わりに出ている情報をもとにまとめます。情報源は主にファミ通誌面や信頼できるまとめサイトなど。しかしこのやり方だと、4月中に発表されて4月中に発売する作品、公式サイトでしか告知を行っていない作品なんかには対応できません。
『ghostpia シーズンワン』は正にそんなタイトルの一つでした。
本作は社会人4名からなる創作ユニット「超水道」が開発した作品。2011年から活動しているユニットのようで、私も知らなかったのですが、スマートフォン向けアプリやブラウザゲームを何本も製作している実績あるチームです。
「ghostpia」はそんな超水道の初のCS向けリリース作品。もともとはスマホアプリ、ブラウザゲームとして配信されていた作品ですが、CS版はそこに大きな追加要素を施して移植した内容です。ちなみに、公式サイトに寄れば本作の開発は相当難航したようです。
私が本作を購入したきっかけは、定例になっている木曜日のeショップ確認にて本作を発見したからでした。
「超水道」の名は寡聞にして聞いたことがなかったのですが、ビジュアルと商品ページの紹介文に惹かれプレイした結果、これが良い作品であったため、ブログでも何か書こうと思った次第です。
不思議な世界と、孤独な彼女
本作を遊んでまず目を引いたのは、その特異な世界設定でした。
というのも、本作の登場人物たちは、そのいずれもが不死身であるというのです。
正確には痛みは感じるし、死にもするのですが、例え命を落としても、必ず街のある地点から復活する…という設定。主人公らはそんな自分たちを「幽霊」だと自称します。更に街は「雪の砂漠」と比喩されるほどの一面の雪に覆われており、通常のやり方では脱出は不可能。『ghostpia』は、そんな街で暮らす少女たちの物語というわけです。
何とも不思議な『ghostpia』の世界ですが、このシーズン1では、その真相解明はほとんどされません。
このようなナゾの多い世界設定を“そういうもの”として位置付ける作品とそうでない作品がありますが、『ghostpia』は後者であり、何らかの大きな秘密が隠されていること、いずれそれを暴くことをストーリー内で示唆します。しかし本作はその辺りの描写の大半を、鋭意開発中とのことである「シーズン2」に委ねている印象を受けました。ナゾがある、と伝えつつも、それを解くことはしないわけです。
では「シーズン1」は一体何にスポットライトを当てているのか?
これはズバリ、主人公の抱える孤独でありました。
主人公「小夜子」は、この幽霊の街で孤独を抱えています。なぜ孤独になってしまったのか?はゲームを実際にプレイして知っていただくとしまして、本作では、主人公がその孤独をどのように克服(?)していくのかが語られます。
本作は世界設定こそ謎めいていますが、主人公の孤独の描写はストレートです。内面を描くテキストも多く、また演出による印象付けも上手いため、不思議な出来事は多くあっても、主人公の心情の移り変わりは素直に伝わってきます。
そしてその内面は実に人間じみており、例えば人の視線に居心地の悪さを感じたり、誤解を招くことを恐れたり…というような、テキスト主体の作品が得意とする細やかな部分を、本作は描きます。
このような点から、本作は「遊ぶ」よりも「読む」の感覚が強い作品です。一方、もちろんビジュアルやサウンドによる演出も十分なされます。感情を豊かに動かす演出が、いっそう「読む」への没入を高める本作は、これぞビジュアルノベルと言っても良いのかもしれません。
そして本作は、主人公以外の人物の内面はほとんど描きません。いちプレイヤーとして、どうしても内面を掘り下げて、救ってあげてほしいと感じる人物がいるので、その辺りはシーズン2に期待していますが…どうなることでしょう。
『ghostpia シーズンワン』はSwitchで配信中の他、途中までならブラウザ版でもプレイ可能です。Steam版も配信予定。
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