※ネタバレあり【ジュエリー・ハーツ・アカデミア】レビュー・評価 締め方、バトルに不満はあれど、魅力も十分。

ADV(ノベル)
この記事は約6分で読めます。

・『ジュエリー・ハーツ・アカデミア-We will wing wonder world-』は成人向け作品です。18歳未満および高校生以下は購入、プレイできません。

・当記事内には、公序良俗に反する描写は一切ありません。

・ネタバレがあります。直接的な表現は避けていますが、楽しみを一切損ないたくない方は、読まないでください。

タイトルジュエリー・ハーツ・アカデミア
ジャンル落ちこぼれクラスが世界を救う青春学園ファンタジー
対応機種PC
価格ゲーム本体10,780円(税込)
プレイ時間の目安25時間
備考18歳未満および高校生以下は購入、プレイできません。

個別エピソードはあるが、個別ルートはない

まず遊ぶ前にしっておきたいのが、本作の物語構成です。

本作、ヒロインは複数いますが、いわゆる個別ルートは存在しません。
ほぼ分岐無しの一本道です。


個別エピソードやシーンは、本編から独立した幕間劇として用意されています。
タイトル画面から入れる一覧に、本編の進行に伴って解禁されていく仕組みです。
本編中の選択肢で、どのヒロインのエピソードが解禁されるかが決まります。

力よりも思想のぶつかり合いが重要な、バトルもの

本作を一言で表現してしまうと、特殊能力ファンタジーのバトルものです。
と言っても、単なる力比べのみならず、異なる思想のぶつかり合いに重きを置いています。


複数の男女からなる主人公チームは、はじめ反目しあっていますが、ある出来事をきっかけに一つの思想で団結。
しかしそれに真っ向から反する思想を掲げた敵組織が世界を脅かし、これと対決します。
この敵組織は過激な思想を持っており、そのために人を殺すことも厭いません。

主人公らはあくまでも、自身らの思想を受け入れてもらうことを大切にしています。
そのため本作のバトルは考え方の違いによる衝突でもあり、単に力で屈服させることだけを目的にしていません。


主人公らの思想は、美しいけれども理想論じみています。
たいして敵側の思想はあまりに過激である一方で、現実を見れば一理あると言わざるを得ないもの。

この思想の激突の行方が、注目のポイントです。

ギスギスの主人公チーム

JRPGの物語をイメージすると、本作の概要を掴みやすいかも。
理想論だが正しい主人公パーティと、それに反する過激な考え方を持つ敵組織の戦いです。


この主人公らの掲げる思想には、感銘を受けるシーンがありました。
物語後半までは、現実や歴史を無視したキレイごとっぷりが正直鼻についた。
しかしあるシーンで、これが覆りました。


主人公らの思想は、どのようなものか
それをどのように実現するのか
敵組織は、どのような思想でそれに応えるのか
そもそも、なぜ過激な思想を持つに至ったのか

このような点が、本作の大きな見どころであると感じました。

明らかな素材不足と、都合よさが目立つバトルシーン

本作は、バトルシーンがとても多い。
恋愛ADVらしいエピソードは幕間劇として独立させている分、バトルシーンの占める割合が高い作品です。
が、このバトルシーン、お世辞にも出来が良いとは言えません。

まず気になるのは、明らかな素材不足です。

バトルシーンの数に対して、CGや差分、演出、SE、背景など、あらゆる素材が不足していると感じました。
同じ素材をこれでもかと使い回しますし、その素材自体が少ない。

状況は変わっているはずなのにCGはいつも同じで、演出もワンパターン。
建物は破壊され、民間人にも被害は出ているのに、背景は一切変化しないどころか人っ子一人みあたりません

文章による描写も、力を入れているのは分かりますがもう少し具体性がほしかった。
物語的には盛り上がっている後半のバトルになるほど、同じものを見せられている感が増していきます。
戦いの情景がさっぱり浮かんできません。

更に、主人公らを勝たせたいがための、都合の良い展開や描写も散見されます。

例えば、地形を変えるほどの一撃を放つ…と描写されている相手なのに、主人公たちは何となく耐えらており、何となく反撃に出る。
描写上ではチリ一つ残らないような技を受けているのに、何だかんだで主人公たちは無事です。
描写上での敵の攻撃の恐ろしさと、それに対して主人公らが受けるダメージに整合性がない。

もちろん、致命傷を受けても立ち上がる様を描くのは良いと思います。
ただ、それにご都合を感じさせないだけの描写は必要であり、本作にはそれが不足していると感じました。

またバトルの展開にも、このような都合よさが目立ちます。

というのも本作、主人公らが追い詰められたところに、奇跡の力や強力な助っ人が介入し逆転…という流れのバトルが、やや多い。

王道の流れではありますが、埋めようのない実力差を安易に引っくり返すやり方でもあります。しかもそれが主人公側にばかり起こるとなると、都合よく起こる奇跡、都合よく現れる助っ人…と、作り手側のご都合を感じてしまいます。
敵側だって命をかけて戦う理由があり、そのための努力も積んできたはず。
それをこのようなやり方で引っくり返されたのでは、なんだか敵側に同情したくなってしまいます。

結局は力比べで締める違和感

本作の最も気になった…といいますか、腑に落ちないと感じたのがこの点です。

前述の通り、本作は思想のぶつかり合いを描きます。主人公たちに大切なのは力で勝つことでなく、考え方の異なる相手に受け入れてもらうこと。また受け入れること。

…であるはずなのに、最終的には力比べで決着がついているように見えるのが、とても残念でした。

主人公らの掲げた思想と、それを実現するための方法は、とても良いものだと思いました。
それを示すシーンが、本作でもっとも感動した場面でありました。


だからこそ敵組織とのバトルでは、はじめ力でぶつかったとしても、最後は考え方を受け入れ合うことによる決着にするべきだったと感じます。
主人公らは、はじめこそ思想を伝えようとしますが、敵がそれを突っぱねると見るや否や、早々に力比べとなり、決着もそのままついてしまいます。
あげく敵に向かって「引っ込んでろ!」などと口汚い言葉を使う場面もあり、平和的な思想を掲げているはずなのに、それに反する相手を強引に叩き潰してしまっている印象を受けました。

敵側の思想は過激だけど、現実に即している部分もあるだけに、この決着で良いのだろうかと疑問に思います。
武力による衝突に発展したとしても、考え方を伝え、受け入れ合う姿勢を捨て去るべきではなく、決着もそのようなものにすべきだったと感じました。

総評

物語後半ほど、面白くない。
バトルは情景が浮かばず、演出もワンパターンでCGはやりすぎな程に使い回されます。
ご都合主義も感じます。
理想論ばかり掲げる主人公らの姿が、鼻につく場面も少なくありませんでした。


逆に言うと、物語の前半はとても面白いです。
自分でもこのような評価に落ち着いたのが意外なほど、はじめは夢中になっていました。
全身がカッと熱くなるほど驚かされた場面、感動で涙が流れる場面も確かにありました。
テーマ自体も誰もが必ず向き合うべきものであり、それに対する考えを印象的に示してくれたのも良い点です。
高まっていた期待値に応えきったとは言い難いけれども、人気ライターの新境地として触れる価値は十分な一本です。

おまけ 完全ネタバレあり感想

これより先は、本作のネタバレを明確に含みます。
未プレイの方は、読まないでください

タイトルとURLをコピーしました