レビューの補足説明のような内容です。
バトルと恋愛の結びつきについて
これはレビュー内で書いた通りです。
イーリス(ルートによっては魔眼の使い手)打倒には、能力強化が必要。
能力の強弱を左右するのは心の強さであり、強くなるためにはまず心の弱さ見つめ、知る必要がある。
ヒロインたちは弱さを誰にも見せられずにいましたが、それを受け止めるのが主人公。
ヒロインは弱さを見つめさらけ出し、主人公がそれを受け入れてくれたことで克服し、能力強化と同時に、主人公と惹かれ合ってもいく。
誰にも見せずにいた一面を見せてくれたヒロイン。
見せられずにいた一面を、受け止めてくれた主人公。
一人では抱えているだけしかできなかった弱さを、二人で乗り越えていく。
このような関係になった二人が親密になるのは自然な流れで、だからバトルものとしての成長と、ギャルゲーらしい恋愛物語がよく結びついた作品であると感じました。
これがもっともはっきりと感じられたのは、結城 希亜ルートでした(正確にはルートではありませんが)
ノアは春風ルートでのイーリス戦で、とどめを刺せなかった理由を「失敗を極度に恐れたから。格好悪い姿を誰にも見せたくなかったから」と言います。
しかし、そうして弱さを見せられないことこそが、自身の弱さの原因であるとし、殻を破るため、自身のだらけきった姿を主人公にさらけ出します。
ギャルゲーらしい、強烈なギャップ萌えの瞬間であるのはもちろん。
秘めていた一面を見せた、見せてくれた関係になることで、二人が親密になっていく様子でもあります。
こうして誰にも見せられなかった一面を打ち明けることが、親密になっていくきっかけであり、同時に心の成長=能力強化にもつながっていく。
弱さを克服することは、一人でも不可能ではないでしょう。
しかしノアがそうだったように、自分自身の弱さと向き合うことはとても難しく、何より恐いことです。
二人が恋仲になること=恋愛が、バトルものとして強くなることに密接に結びつています。
一般的なADVならともかく、ことギャルゲーにおいてはヒロインとの恋愛描写は重要なポイント。
本作はバトルものとして面白いものに仕上げつつも、その過程に恋愛を自然に盛り込んである。
だからこそ、理想のギャルゲーであるとレビューしました。
キャラのバックボーン描写の浅さについて
本作のまず感じたもったいない点は、ここでした。
例えばノアの弱さの根源にあったのは、妹の交通事故でした。
これがノアにとっての大きなトラウマとなり、行き過ぎた正義への執着、そして死を過剰に恐れるなど、ノアが自身の弱さだとしているものへ繋がってしまいます。
このエピソードはノアの人格を描く上で大変重要なものです。
が、作中での描写は短い回想シーンで語られるのみで、CGなども一切無し。
矛盾こそないものの、ヒロインの根源にあるものの描写として、もう一歩踏み込んでほしかったとも感じました。
これ以上に描写不足を感じたのは、都です。
彼女は盗人の能力を得たことで、やはり自分の本質は低俗で卑しいものだと考えます。
しかし、では何が都にそのような「自身は卑しい」という考えを持たせたのかが、描かれない。
都はもともと、自分をどこか卑しい人間なんだと思っており、それを決定づける証拠となったのがアーティファクトによる盗人の能力の獲得であったように見えます。
その自分を卑下する心情の根源には、どのようなエピソードがあったのでしょう?
本作はこの点の描写が、やや不足していると感じました。
もっとも、レビュー内でも触れたように、このようなエピソードは描けば描くほど、物語が重くシリアスに寄っていく可能性があります。
本作はそれでなくてもバトルシーンでシリアスを十分盛り込んでいるため、あえてこの描写は控えめにしたのかなとも思います。
ただ、それを考慮しても看過できないほど、描写不足を感じたヒロインがいます。
主人公の実妹、新海 天です。
新海 天について。
新海 天は主人子の実妹ですが、密かに恋心を抱いていました。
しかし、では何が天に、兄妹の関係を超えるほどの恋心を抱かせたのか?
その根源にあるエピソードは、いったい何なのか?
これが描写されません。
兄妹とはいえあの年頃ならば、多少の距離感があっても不思議ではないでしょう。
しかし、天はそれが全くない。
まるで友達のように主人公に接し、軽口を叩き合います。
本作は物語の緊張を解く、いわゆる悪友ポジションが不在であるため、天には実妹としてそのような役割を持たせたのだと思います。
しかしそのような描き方をするならば、なおさら恋心には説得力が欲しかった。
ギャグ担当から攻略対象へと、意識を変えさせるだけの描写をしてほしかったと感じます。
自身が人々の記憶から消え去っていく…と、それだけでも悲しい物語が描かれる天に、更に何かを背負わせるのは、かわいそうなことかもしれません。
しかしそれでも、ギャグ担当の実妹の恋心が「実は昔から好きだった」のみでは、説得力に欠けると感じます。
このような理由から、天ルートだけは良いとは感じられませんでした。
本作の評価を★4止まりとした、最大の理由です。
終わりに
以上です。
悪役の魅力、後半の設定のややこしさなども、深掘りして語ろうと思っていましたが、げんなりしてきたので止めます。
恋愛とバトルを結び付け、十分なクオリティで描いた良い作品だと感じました。
天ルートだけはどうしても引っ掛かりが残ったので、★4としました。
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