タイトル | 9-nine- |
対応機種 | PS4、Switch、PC |
価格 | PC版 : 10,780円(税込) PS4、Switch版 通常版/ダウンロード版 8,280円(税込)/8,250円(税込) |
プレイ時間の目安 | 20時間 |
「9-nine-」はぱれっとより発売された恋愛ADVです。
移植元であるPC版は、1つの物語をヒロインの個別ルートごと4作品にわけて展開されました。
後に一つにまとめたものがリリースされ、今回の移植はそれと同じ内容です。
恋愛とバトルが結びつく、理想のギャルゲー
能力者バトルと恋愛。
この2本柱が違和感なく結びつき、適度なバランスと十分なクオリティで描かれている。
理想のギャルゲーと言える作品だと感じました。
主人公、ヒロイン共に、私たちとそう変わらない世界に生きるごく普通の若者たち。
ですがある出来事により「アーティファクト」に選ばれ、特殊な力を操る能力者に。
その力を使って、ある敵の撃破を目指すことになります。
しかし敵は強力で、今のままでは到底かなわない。
勝利のため、ヒロインたちは成長することを求められるのですが…
このように本作は、物語の根幹を能力者バトルにしています。
しかしだからといって、恋愛の描写にも抜かりはありません。
それどころか恋愛が物語に必要不可欠なものとして、自然に溶け込んでいます。
そうしてヒロインは成長のため、秘めていた弱さを勇気を出して見つめ、さらけ出します。
対する主人公はそれを受け止め、そして受け入れる。
誰にも見せられずにいた一面を、自分だけに明かしてくれたヒロイン。
人に言えずにいた弱さを、受け止めてくれた主人公。
そうして二人は成長していくと同時に、自然と惹かれ合ってゆく。
「9-nine-」は、弱さと向きあうことで得られる成長と、心の壁を取り払うことで恋仲になっていくキャラクターたちを、戦いの物語の中で同時に、有機的に結び描くことに成功しています。
また彼女らが秘めた一面をさらけ出す姿は、いわゆる「ギャップ萌え」を引き起こし、ヒロインの恋愛ADVらしい魅力を描くことにも繋がっています。
ギャルゲーにおいて欠かせない要素である、主人公とヒロインの恋愛。
本作は戦いの物語としてプレイヤーを引き付けつつも、彼らの恋愛模様を描くことも蔑ろにしていない。
そのため本作は、正に理想のギャルゲーであると感じました。
また移植前は分作展開されていたこともあって、まるで週刊連載マンガのような「引き」も特徴。
常に続きの気になる内容になっています。
描写不足が気になる部分も
さすが老舗ぱれっとの作品だと言いたくなる「9-nine-」
しかし、綻びを感じる点もなかったわけではありません。
まず気になったのは、各ヒロインのバックボーンの描写が浅いこと。
ヒロインはみな弱さを抱えていますが、その弱さの原因となったエピソードの描写は、必要最低限だと感じました。
なぜ、そのような考え方を持つに至ったのか?
これはヒロインの人となりを知る上で重要なポイントであるため、もっと描いてほしかった。
1名、これが特に不足しているヒロインがおり、大きな不満点です。
…ただ、これは描けば描くほど物語がシリアスに寄っていく可能性もあるため、あえて最低限にしたのかもしれません。
悪役の魅力がもう一つ欲しかったとも感じました。
ダークサイドに落ち、主人公たちを狙う理由が弱く、説得力がありません。
全てを終えてみればこのような人物にした理由も察知できますが、それでももう一押しがあってよかった。
またクライマックス付近は設定がややこしくなり、理解が難しくなるとも。
これにより下手をすると物語を終える達成感よりも、流れを理解できない消化不良感が先に立ち、せっかくの読後感を曇らせかねないと感じました。
総評
描写不足を感じるヒロインがいます。
最後の最後でケチがついた印象も、確かにある。
それでも本作は、理想のギャルゲーであったと言えます。
よく結びついたバトルと恋愛。
それぞれを確かなクオリティと、適度なバランスで描いてくれる。
人気原画家のCGは可愛さと格好良さを両立しており、全4編からなる物語は“引き”も十分。
設定にこそ既視感もありますが、独自の味付けもされています。
分作による敷居も取り払ったこの移植版。
ギャルゲーファンならば、誰にでもオススメできる一本です。
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