伸びるPV数が、気持ちよくて、怖い。~なぜ読まれたか?の勘違いの話~

コラム
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先日公開した「月姫 -A piece of blue glass moon-」のレビュー記事が、当ブログとして前例のないヒットを記録しました。

具体的な数字を言いますと、公開して2日の段階で570PV。
世のインフルエンサーたちには、鼻で笑われる数字でしょう。
ですがこれは、当ブログにとっては異例も異例。

なにせこの一つ前に投稿した「Summer Pockets REFLECTION BLUE」のレビューが、公開して2週間の時点で13PVですから。



記事を公開してすぐにアクセスが集まり、はじめ何事かと驚きました。
そこでTwitterでエゴサーチをしてみたら、フォロワー数が私の20倍くらいのTYPE-MOONファンの方が記事をツイートしてくれていたのです。

更にそのツイートを見た別の方が、また記事をツイート。
それにまた注目が集まり…と、SNSで拡散の連鎖が起こっていました。

これに関して、本当に感謝の言葉しかありません。
ありがとうございます。

汎用


短くはないあの記事を読んでくれた方、ツイートまでしていただいた全ての方にお礼のDMでも送りたい心持ちであります。

中には内容に共感できない!と思った方もおられたことでしょう。
コイツはこう言っているが、俺はこう思った…と、作品に対する自分の意見を深めるきっかけになったのなら幸いです。


そしてこの記事のヒットは、私の中に感謝とはまた別の、これまで体験したことのない感情をもたらしました。

「気持ちよかった」

記事が読まれ、しかもそれを拡散してもらえることが、たまらない「気持ちよさ」を私にもたらしたのです。
しかしこの気持ちよさは、やがて全く逆の感情も運んできました。

「怖かった」


気持ちよさと、怖さ。
対極にあると言ってもよいこの感情をも、味わったのです。

この怖さの正体は何か。
批判的なコメントが来るかも…だとか、拡散されて逆に叩かれるかも…というのも、ないわけではありません。

しかし、私が本当に怖かったのは、他者ではなく、自分自身でした。
記事が読まれ、気持ちよさを感じている自分が、とても怖くなったのです。

反応されることが、気持ちいい

自分でやってみて身に染みたことですが、ブログとは書いても書いても読まれないものです。
書くだけでも大変ですが、それを読んでもらうのはもっと大変なこと。
周りを見ても、「いかに読んでもらうか」で悩まないブロガーはいません。

幼いころ、川に石を投げて遊んだ経験があります。
なるべく大きな石を探し、それを思い切り投げ入れる。
するとドボンと音が鳴り、こちらにかえってくるほどの水しぶきがあがります。
この“川の反応”が、なぜか面白い。
小石では、反応が小さすぎてつまらない。
反応を求めてデカい石を探し、やがては岩に近い大きさのものをえっちらおっちら運び、母親に「やめなさい」と叱られる。

読まれるブログを目指すのは、この遊びに近い感覚があります。
世界というデカすぎる川に、記事という石を投げ入れる。

しかし現実と違うのは、この「世界川」は、石を投げても反応するとは限らないことです。

どんな小石を投げても必ず反応する本物の川と違い、全く反応がないことすらある。
それどころか巨大な岩(だと自分は思っている)を投げ入れたとしても、うんともすんとも言わないことが大半なのです。
そんな遊びは面白くありません。
ましてやその岩が、何時間もかけて自分でこしらえたものとくれば、こんなに空しいことはないでしょう。

もちろんこのブログも、例外ではありません。



…と言いつつも、ありがたいことに最近は記事を投稿すると、PVや、告知ツイートへの「いいね」などの反応をいただけるようになりました。
しかし相変わらずまるで反応のない記事も、少なくありません。

そんな「世界川」がこれまでとは桁違いの反応を見せてくれたのが、上述の「 月姫 -A piece of blue glass moon- 」のレビュー記事でした。

その反応の内容は、冒頭に書いた通りです。

公開するや否や、この記事をツイートしてくれた方がおり、そこから記事を読んだ方がまたツイート…と、反応の連鎖が。

これはただ嬉しかった。
特大の水しぶきが上がったのです。
中には、ツイートにレビューへの同意のコメントを添えてくれている方まで。
大げさではありますが、なんだか生まれて初めて人に認められたような気がしました。


そして嬉しいと同時に、たまらない「気持ちよさ」も味わいました。
自分でこさえた(もちろん他者の創作物あってのものですが)石が、大きな水しぶきを上げ、そこから波紋が広がっていく。
その波が他者に届き、また自分にかえってきます。
そうして承認欲求が満たされることが、こんなにも気持ちの良いことだとは知りませんでした。
何度エゴサーチしたかわかりません。
これを求めて暴走する人の気持ちが、分かるような気がしました。




しかしこのすぐあと、アラートが鳴りました。
これは危険だと、この気持ちよさは、あっという間にお前を飲み込むぞと。

やがて、気持ちいいのと同じくらい、怖くなりました。

気持ちよさで隠れる、怖さ

私は日々、レビューにせよコラムにせよ、「面白い」ものを書きたいと思っています
ですが、無論まだまだ甘い。
達人たちにほど遠いことは、十分自覚しているつもりです。

しかし、「 月姫 -A piece of blue glass moon- 」のレビューがヒットし、かつてない勢いで伸びていくPV数を見たとき、その自覚が薄れかけました。


実はこの「世界川」
より面白い記事を投げ入れれば、それだけ大きな水しぶきが上がる…とは限りません。
実は面白さとは、記事を構成するごく一部の要素でしかないのです。
その他の多様な要素により、水しぶきの大きさは変化します。

その一つが、「注目度」です。
どんなに面白くても、扱うテーマに対する世間からの注目度が低いと、水しぶきは小さくなります。
逆に、つまらない、あるいは質が低くても、注目度の高いテーマであれば、水しぶきの上がりやすさはまるで違います。

さて、では今回の「 月姫 -A piece of blue glass moon- 」のレビューは、果たして「面白さ」で水しぶきを上げたのでしょうか?

…私自身は、そう思っていません。
いや、一度は思いかけましたが、考えを改めています。



この水しぶきの要因は、「面白さ」よりも、「 月姫 -A piece of blue glass moon- 」の「注目度」の方が、より大きなものだったと思うのです。
なぜなら、もし私が本当に面白いものを書いており、それで大きな水しぶきを上げることができるならば、他の記事ではさっぱり上がらないのはおかしいですから。

しかし、記事を投稿し、PV数が伸びている間は、このことに気づけませんでした。
「面白いものを書けた」と、勘違いをしていました。
実は「面白さ」とは全然違う理由で水しぶきが上がっているのに、それに気づけないでいる。
なにせ私自身は気持ちよさに酔い、「面白さ」が評価されたとばかり考えているので、ほかのことに目がいかないのです。

例えば、バットを振り回していたらたまたまホームランになり、自分には野球の才能があると思い込んでいる少年がいたら、誰もがそれは違うというでしょう。
しかし少年が、野球とは全て実力で決まるのだと考えていたら、放ったホームランも実力だと勘違いしてしまいます。

私はこの少年になりかけました。




もちろん、普段の私は自分のレベルの低さを、自覚しているつもりでいます。
しかし、伸び続けるPV数の気持ちよさは、それを失わせ、勘違いさせるほど強かった。
だからこそ、冷静になったいま、気持ちよさの裏に潜む「怖さ」を感じています。

大きい結果と、それがもたらす気持ちよさは、自分を盲目的にしてしまうのだと感じました。
反応され、欲求が満たされ、気持ちがいい。
自分がやってきたことは正しかった。やっと成果が出た…
ですが、それは本当に自分の望む形で出た成果なのかは、考えた方が良い。
これを、学びました。
もし違っている場合、そして、それに気づけなかった場合。
自分を磨くことすらやめてしまうかもしれません。
これほど怖いことがあるでしょうか。

実力以上の結果が出たときに崩れたやり方をしていると、それが自分の基準になってしまう。これは危ない。誤った成功を基準にして成功を目論むのだから、うまくいくわけがない。うまくいかないのにやり方を変えられない。変えようともしない。
理由は、それが実力以上の結果だからだ。結果だけで考えれば、実力以上の結果というのは大成功かもしれない。それほどの成功をしたやり方なのだから、きっと正しい。本人は、そんな風に思い込む。己の実力も過信しているから、他人のアドバイスも聞かないし、聞けない。こうなるともう始末に負えない。真っ逆さまに転げ落ちていく。

「1日一つだけ、強くなる」 梅原 大吾 KADOKAWA

「面白い」を目指します


改めて、「月姫 -A piece of blue glass moon-」のレビューを読んでくださった全ての方にお礼を言います。
ありがとうございます。
ほんの少しでも興味を持ってもらえたなら、ぜひ遊んでみてください。

本作のレビューを書いたことは、私にこれまでにない経験と、気づきをもたらしてくれました。
頭を悩ませた部分も少なくありませんでしたが、書いてよかったと感じます。

またいつか、このブログを読むことがあったのなら、その時は「面白い」と思ってもらえるよう、書き続けます。

Amazon.co.jp: 1日ひとつだけ、強くなる。 eBook : 梅原 大吾: Kindleストア
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プロフィール
書いている人

日々プレイしたゲームの、忖度のないレビュー。オタクしていて思ったことを書いています。ADV、音ゲーが特に好き。

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