人はなぜ急いでいないのに赤信号を無視してしまうのか?
もちろん本当に急いでいて信号無視する人もいるでしょう。でもそうじゃない人はかなり多そうだし、じっさい自分も信号無視して横断歩道を渡っちゃうとき、あんまり急いでいるっていうことはない。同じ人は少なくないと思います。
じゃあなぜ無視するのか。…まぁ、待たなくていいなら待ちたくないですからね、ふつう。もちろん安全が第一ですけど。
他にも、やたらと長い赤信号にイライラ…とまではいかなくても「なっがいなぁ…」と、イライラの種みたいなのが出てくることがあります。あれもやっぱり、そのとき急いでいるわけではない。
この時点で仮説として言えそうなのは、人は待つことがイヤである。
でもその「待つ」を主体的に選択しているか否かってのは「イヤ」の度合いに大きく影響しそうですね。例えばライブ会場なんかで開演を待っているときは経験からいって全然イライラしない。でもライブが何かの事情で開演が遅れますーなんてなると「えー…いつ始まるんだろう…」となる。イライラまでいかないけど、ちょっと不満な感覚。
このような主体的でない「待つ」への不満は、2025年発売の人気ホラーゲーム『サイレントヒルf』の戦闘を語る上でも重要な感覚だと思っています。
『サイレントヒルf』は年が明けた今でも注目を集めているゲームで、特にゲーム内に出演した俳優陣の実況プレイの話題は次から次へと飛び込んでくる。
そしてゲームへの評価も、賛否両論さまざまな意見がでそろっています。
そのうえで本記事では『サイレントヒルf』の戦闘に着目したい。というのも、プロアマ多くのゲームライターが言及する本作の戦闘には更に掘り下げて語りたい部分があるからです。
例えば福山幸司氏はIGN Japanに掲載されている『サイレントヒルf』レビューにて、その戦闘について以下のように語っています。
そして、本作の戦闘に奥深さを与えているのが、「見切り反撃」を中心とした駆け引きだ。このシステムを特徴づけているのが、リソースである「精神力」を消費して発動する「集中モード」の存在にほかならない。このモードは、見切り反撃が成功するタイミングを大幅に緩和する効果があり、反射神経に自信がないプレイヤーであっても、戦略的にリソースを管理することで、強敵の攻撃を華麗に捌くというアクションゲームの醍醐味を味わうことができる優れたデザインだ。
SILENT HILL f – レビュー/ 福山幸司 / https://jp.ign.com/silent-hill-f/81030/review/silent-hill-f より
福山氏は『サイレントヒルf』の戦闘における「集中モード」や「見切り反撃1」による駆け引きが「反射神経に自信がないプレイヤーであっても、戦略的にリソースを管理することで、強敵の攻撃を華麗に捌くというアクションゲームの醍醐味を味わうことができる」ものだとし「優れたデザイン」と評価しています。
一方で、批評家としてnoteを中心に活動する羊谷知嘉氏は違う観点から本作の戦闘を論じています。
問題は、見切り反撃を主軸にするかぎり本作の戦闘は「受け」を前提にすることだ。
つまり、会敵し、「集中」状態にはいり、相手も反撃可能な攻撃パターンにはいれば御の字だが、そうではない攻撃の場合はいったん回避し、距離をとり、再度仕切りなおして「集中」状態にはいる、この繰り返しである。この相手主導の雑魚敵との戦闘に僕は楽しさや面白さを見出せなかった。敵によっては予備動作がほとんどない突き攻撃もしてくるので煩わしさや鬱陶しさは輪をかけて大きい。
Silent Hill f 評:実況動画で楽しむ方が幸せなゲームもあるんだぜ、相棒 / 羊谷知嘉ChikaHitujiya / https://note.com/chikahitujiya/n/n9b5fb64bdd54#ae6aec3d-1e54-4c0a-844c-9be54c0e2345 より
羊谷氏は、福山氏が評価する「見切り反撃」について、それを主軸にしてしまうと「『受け』を前提に」した戦闘になってしまうこと、そしてその「受け」の内容が、やや単調な繰り返しに陥ってしまっているという問題点を論じています。
私なりに二人の主張をかいつまんでみると「見切り反撃」は強敵の攻撃を捌く面白さに繋がり得る。そしてそれは「集中モード」の存在によりアクションゲームが苦手な人でも味わえる。しかしその「見切り反撃」を戦闘の主軸にするとなると、どうしても敵の攻撃を「受け」の姿勢で待つ必要がある。その「受け」姿勢の内実は、敵が反撃可能な攻撃を出すまでひたすら「集中」→「仕切り直し」を繰り返すものであり、これが面白くない。
見切り反撃の面白さと、しかしそれに伴うしたときの「受け」の面白くなさ。
二人の主張、私としてはどちらも同意できるように思います。見切り反撃は確かに爽快感がある。一方で見切り反撃を出すための「受け」主体の立ち回りは面白くない。
でもここでちょっと疑問が浮かびます。
というのも、羊谷氏が指摘する「受け」の問題点って、私がこれまで遊んできた『サイレントヒルf』以外の「受け」が重要なアクションゲームではあまり感じたことがないんですよね。
具体的に言うと『SEKIRO』とか『Stellar Blade』とかなんですが、これらは敵の攻撃をしっかり見切っての「受け」がとても重要です。その点で『サイレントヒルf』と共通する部分がありそうなもんですが、しかし羊谷氏がいうような問題点は記憶をさぐる限り感じたことがありません。
ではなぜ『サイレントヒルf』は『SEKIRO』や『Stellar Blade』にはない問題点を抱えてしまっているのか。
いや、そもそも本当に問題点を抱えているのか?
抱えているとして、それはどのような問題点なのか?
今回はこんなことについて、自分なりに考えてみました
いきなり結論:『SEKIRO』と『Stellar Blade』には「受け」はあっても「待ち」はない。
『サイレントヒルf』も『SEKIRO』も『Stellar Blade』も「受け」が重要なゲームである。そして『サイレントヒルf』には「受け」に付随する問題がある一方、記憶をさかのぼる限り『SEKIRO』や『Stellar Blade』には同様の問題点は感じられなかった。これは何故なのか。
まずは記憶を疑って、実際に『SEKIRO』と『Stellar Blade』を久しぶりに遊んでみました。そうしたらすぐに答えが見つかってしまいました。
今回、その答えを分かりやすく示すため簡単な動画を用意しました。プレイヤーはもちろん私。編集は最小限なので見づらいと思いますが短い動画なのでご容赦ください。あとプレイが下手なのも許してくれ。
まずは『Stellar Blade』内のザコ戦の動画をどうぞ。30秒くらいです。
次が『SEKIRO』です。1分弱です。
なお『SEKIRO』のみザコ敵ではなく中ボスを相手にしています。これはなぜかと言いますと、『SEKIRO』における少なくとも序盤のザコ戦は、普通にやると一瞬で終わってしまうためです。
1作だけ中ボス戦では公平な比較でないように感じられるかもですが、この記事の目的を考えればそうでもありません。本記事の目的はあくまでも戦闘中の受けにまつわる問題点を考えることです。であるのに受け云々の前に終わってしまうザコ戦を持ち出したのでは、内容が異なりすぎて比較が難しい。そのため受けの在り方がはっきり表れる中ボス戦の方がむしろ良い比較対象だと思っています。
最後が『サイレントヒルf』
こちらは二つの動画を繋げています。前半は見切り反撃を狙ってのプレイ。後半は見切り反撃なし。ひとまずは前半だけに注目すればOK。あわせて40秒。
さて3作の比較(ごく単純ですが)によって明らかになることは何か。ずばり「待つ」の有無です。もし時間があるなら、動画内にてどれだけ待つ時間が発生しているかを意識してもう一度見てもらえるとはっきり分かるはず。
『SEKIRO』と『Steller Blade』には敵の攻撃を受ける時間はあっても、受けるための攻撃をじっと待つ時間はほとんどありません。もちろん各々のプレイスタイルや腕前によって変化はするでしょうが、大まかな傾向は変わらないでしょう。
『Stellar Blade』はこちらの攻撃で敵がよく怯んでいます。中断して受けに入るのは敵の攻撃予備動作を確認した場合のみ。そして『SEKIRO』では攻めと受けが目まぐるしく入れ替わります。じっとしている時間は『Stellar Blade』よりも更に少ない。
ところが『サイレントヒルf』は明らかに様子が違います。動画が始まってから実に8秒ものあいだ待っている。その時点で敵が見切り反撃に対応する攻撃を出してきたので、そこで待ちが終わっています。もしここで非対応の攻撃を出してきたなら再び睨み合いに戻ってしまう。
ここに「待つ」という『サイレントヒルf』特有の問題点が見えてきます。主体的でない「待つ」がストレスになり得るのは、記事の頭で雑談的に話しました。3作とも受けることが重要2であるのは共通しています。「待つ」の存在こそが、受けの大切さという点を共有しながらも『サイレントヒルf』だけに『SEKIRO』や『Stellar Blade』にはない問題を感じる理由の一端ではないでしょうか。
しかし、これではまだ疑問点が残る方もいると思います。だってそんなに「待つ」が不満なら『サイレントヒルf』でも『SEKIRO』などと同様、待たずに攻めればいいじゃないですか
アンタがビビっちゃってるだけで、そんな問題点は存在しないのでは!?
じっさい上で引用した羊谷氏も、note内で「見切り反撃を主軸にするかぎり」は受けの問題が発生すると論じています。なら主軸にしなければいい。
次はこの点について考えてみます。
待たなくてもいいが、待ったほうが楽だし強い
『サイレントヒルf』は見切り反撃を主軸にすると待ちがあってつまらない。でもそんなにイヤなら待たずに攻めたらいい。
もちろん『サイレントヒルf』をそのように遊ぶことは可能です。事実、動画の後半は見切り反撃を狙わず積極的に攻めて、それでしっかり敵を倒せている。しかし問題はあります。それは『サイレントヒルf』ではこのような待たずに攻めるプレイがあまり強くないことです。
そう言える理由は何か。
まず最初に挙げるのは『サイレントヒルf』の敵があまり怯まないことです。動画後半を改めて見てもらえればはっきり分かりますが、ここで戦っているザコ敵は攻撃を受けてもあまり怯んでいません。怯まない敵にこっちから攻撃する危険性は、アクションゲームの経験がある方には特に分かってもらえると思います。もしこちらの攻撃動作中に敵が反撃をしてきた場合、回避が間に合わない可能性がある。そのため『サイレントヒルf』において待たずに攻めることはリスクが伴います。だから後出しでカウンターを入れる方が都合が良い。
問題に拍車をかけるのは『サイレントヒルf』におけるスタミナの存在です。『SEKIRO』と『Steller Blade』にはスタミナ自体がありません。しかし『サイレントヒルf』は回避と攻撃の際にスタミナを消費します。つまり敵を攻撃しながら、回避のためのスタミナも温存しておかなくてはいけません。使いきったら反撃を回避できませんからね。おまけに消費量も激しめ。
怯まない敵に対し、スタミナを気にしながら攻撃する。それは攻めつつも予備動作に気を配り、いつ飛んでくるかわからない反撃を回避するためのスタミナも温存しておく立ち回りです。なので突っつくような攻撃が主体にならざるを得ません。また『サイレントヒルf』の多くの敵は予備動作がほとんどない攻撃を持っています。待たずに攻めるプレイはこのような攻撃を食らうリスクを常に大きく持つ。回復アイテムは言わずもがな重要です。無駄遣いはしたくない。
そして「待つ」からの見切り反撃は、このような問題点を全て解決するほど強力です。

見切り反撃はまず高威力です。そのため少ない手数で敵を倒せる。『サイレントヒルf』の武器には耐久力があるため、これは大きな利点です。そして見切り反撃は必ず敵を怯ませます。ゆえに攻撃後の反撃を恐れる必要がない。
反撃のリスクを考慮して突っつくよりも、敵の攻撃を待って大ダメージのカウンターを入れた方が効率が良く、リソース管理など含めても都合がいい。更に『サイレントヒルf』には見切り反撃をサポートする「集中」という仕組みがあります。これを使えばだれでも簡単に見切り反撃を放てる。『サイレントヒルf』はその仕組みでもってプレイヤーを見切り反撃に誘導します。これを狙わずこっちから手を出すようなプレイはリスキーな選択と言えるでしょう。
こちらから攻める際の問題点をほぼ抱えず、ゲームの仕組みに噛み合い、それをサポートするシステムまで兼ね備えた見切り反撃。『サイレントヒルf』はこれを主軸にした戦闘=待つ戦闘にインセンティブを強く持たせてある作品です。そのため自然と主軸にしてしまう。羊谷氏もこの点にnoteで言及しています。
待たなくてもいいが、待った方が強いし楽な仕様。ここに「待たずに攻めればいい」では解決できない理由があるように思います。
『SEKIRO』と『Steller Blade』は待つメリットがない。
では『SEKIRO』と『Steller Blade』における「待つ」はどうなのか。
これに関しては、2作とも『サイレントヒルf』と違ってメリットがほとんどないため待つ必要がないと言えるでしょう。攻めた方が強い。
動画でもはっきり出ていますが、まず『Steller Blade』は敵がよく怯みます。そしてスタミナも存在しないため、攻められる場面では積極的に攻めた方が良い。反撃には対応する必要がありますけれど、敵の攻撃予備動作が大きいうえスタミナ自体がないため温存を考えることもありません。待っても良いですが、それでは単に攻めるチャンスを逃すだけです。
『SEKIRO』においても同様で、待つよりも攻めた方が強い。というのも『SEKIRO』の敵は『Steller Blade』同様に怯む。またはこちらの攻撃をガードします。ガードさせれば敵の攻めを止められますし、更に『SEKIRO』ではガードされても敵のHP(正確には体幹ゲージ)を削ることができます。そのため攻めることにメリットが大きくある。受けることでも削れますが、『SEKIRO』は敵の攻撃力がとても高いため失敗した時のリスクが大きい。だから受けを上手くこなす必要はありますが、しかし専念するのは悪手です。攻めて削れるならその方が都合が良いし楽ですから。スタミナが存在しないのも『Steller Blade』と同様。
『SEKIRO』にせよ『Steller Blade』にせよ、攻めることに大きなメリットがある。そして『サイレントヒルf』ほどのリスクは背負いません。受けも重要ですが、敵の攻撃を待ってまで受けるメリットはない。
『サイレントヒルf』は待ってでも受けることにメリットがありました。むしろ攻めることにはデメリットが伴う。しかし『SEKIRO』と『Steller Blade』はそうではありません。だから受けが重要なアクションゲームでも「待つ」に関する問題点の有無がある。そうは言えないでしょうか。
ただし『SEKIRO』には待つ場面もある。でもプレイヤーの経験はかなり異なる。
上で『SEKIRO』に待つメリットはない。攻めた方が強いと言いましたが、実はそうでないケースもあります。デカい怪物などと戦闘するケースがそうです。これも動画を用意しました。ちょっと長めの1分20秒。
『SEKIRO』の敵は怯むかガードをする…と言いましたが、動画のような怪物系の敵は例外です。ほとんど怯まないしガードもしません。そのため上の動画でも後出しを狙って待つ場面が多く見られます。
なーんだ。それなら『SEKIRO』も『サイレントヒルf』と同じ問題を抱えて……いません。
確かに敵が手を出してくるのを待っている。しかしそれは『サイレントヒルf』における見切り反撃を狙いの待ちとは明らかに異なる体験です。
『サイレントヒルf』の見切り反撃狙いは、敵が対応する攻撃を放ってくるのをじっと眺めて待つような体験です。一方『SEKIRO』の怪物戦はそんな生易しいものではありません。高威力の攻撃でもって暴れる敵の隙を突くべく、必死で避けながら機を窺う緊張の戦闘です。怪物だけあって攻撃力も体力も高い。手を出し過ぎれば痛い反撃をもらうけれど、ビビっていればいつまで経っても終わりません。
『サイレントヒルf』と『SEKIRO』の「待つ」にはこのような内実の差があり、そのため同じような場面であってもプレイヤーが体験するものは大きく異なります。
とはいえ『サイレントヒルf』も『SEKIRO』みたいにした方が良いとは言わない
ここまで3作品を比較しながら『サイレントヒルf』が抱える「待つ」の問題点を論じてきました。これを踏まえると、私は『サイレントヒルf』も『SEKIRO』と『Steller Blade』ような作りにすべきだと考えている…と思われるかもしれません。が、それは違うとはっきり述べておきます。
確かに『サイレントヒルf』の戦闘は『SEKIRO』などと比べて面白くないと思います。その面白くなさの原因が「受け」を主軸にすることに誘導するゲームデザインにある…という主張は、羊谷氏がnoteでしたことと私とで変わりはありません。それを比較の上で詳述すれば「待つ」が原因だと思っています。
しかしだからといって『サイレントヒルf』を『SEKIRO』と同じ仕組みにしろ!とまでは思わない。なぜなら『サイレントヒルf』は、まさにその不自由な、プレイヤーのもどかしさを煽る仕組みでもって「女子高生が主人公のホラーゲーム」という体験のリアリティを感じさせようとしていると思うからです。もっと簡潔に言えば「ホラーっぽい」のために必要な仕様ではあると思っています。
『サイレントヒルf』の主人公が『SEKIRO』や『Steller Blade』のように、鉄パイプでパリィし、華麗にフィニッシュ・ブローを決める…そんな仕様にすれば確かに戦闘は気持ちよくなるかもしれませんが、それでは全然ホラーっぽくありません。女子高生が主人公であることのリアリティも消え失せてしまうでしょう。
攻撃しても回避してもすぐに疲れてしまい、敵の攻撃もいなせず、身体は傷だらけ。それでも諦めず進む…そのようなホラー×女子高生な体験をしてもらうには「待つ」のストレスはむしろ開発側が意図して仕込んだものであるかもしれません。
ならば、この問題点がどのような楽しみに繋がっているかで考えるべきかもしれない。例えば『SEKIRO』だってハイスピードで気持ちいいけど、とても難しいという問題点がある。『SEKIRO』は大半のプレイヤーに相当な数のリトライを求めるゲームです。だからこそ達成感という良さが生まれもする。
では『サイレントヒルf』のこのような戦闘体験は、どのような楽しみに繋がっているのか…。少なくとも「ホラーっぽい」を演出するとは思います。しかし「ホラーっぽい」は必ずしも楽しさにはつながらないとも思います。確かにホラーっぽさを保つためには必要なのかもしれないし、それは分かる。しかし楽しくはない。ならば本記事で述べてきた「待つ」の問題点は、『SEKIRO』や『Steller Blade』に近づける形でなくせとは言えないけれど、しかし「ホラーっぽさのためには仕方ないよね」と妥協するくらいの点に留まる…。このくらいが今の私に言えることです。
そもそも「ホラーっぽい」の話をするなら、スタミナ管理やジャスト回避を用いた近接戦闘主体の仕組み自体がホラーっぽくないと言えるかもしれない。そのような根本的にホラーっぽくない仕組みを用いつつ、それでもホラーっぽさを保つためのゲーム作りから生まれたのが『サイレントヒルf』の戦闘システムなのかもしれません。

【終わりに】 あるいは「逃げる」へのインセンティブかもしれない
さてここまでの話を踏まえて、考えなくてはならないことが更に浮かんできています。それは『サイレントヒルf』における「戦闘を避けて逃げる」ことについてです。
『サイレントヒルf』の「待つ」の問題点は、戦闘において見切り反撃を主軸にすることで生まれる問題点でした。そのうえ見切り反撃を主軸にしたくなるようなゲームになっているため、待たずに攻める選択も取りづらいという話に繋げた。
しかしここにはもう一つの分岐があります。それは「そもそも戦わずに逃げる」という選択です。『サイレントヒルf』は多くの戦闘において「逃げる」が可能です。いざ戦ったならば見切り反撃に伴う「待つ」のストレスがあり、これはプレイヤーの意志で回避することが難しい…と言いました。しかしそれ以前に、そもそも「戦う」自体を避けることも可能です。つまり本作は見切り反撃以上に「逃げる」にインセンティブを持たせてある作品なのかもしれない。
ストレスのある戦闘システムは「逃げる」へとプレイヤーを誘う。そして敵から逃げることは即ち脅威を放置したまま先に進むことですから、そこに「ホラーっぽさ」を感じる余地はあるでしょう。そしてそこには、ホラーっぽさと同時に楽しさもあるのかもしれない…今の私はあまり感じていませんけども。
このような点も含めて論じなければ『サイレントヒルf』全体のレビューとしては不十分でしょう…が、本記事ではやりません。なぜなら『サイレントヒルf』の戦闘に関する話しかしないと決めているから。それに回避不能の強制戦闘もたくさんありますしね。とくにゲーム終盤。あれは全然ホラーっぽくないよな…。
…と『サイレントヒルf』にはまだまだ語り代がありそうですが、本記事はここまで。この続きは…さすがに書かないんじゃないかな。だってもうこのゲームどんだけやってんだよって感じですからねぇ。
- 「見切り反撃」についての簡単な説明をここで。見切り反撃は敵の攻撃中、決められたタイミングにボタンを押すことで発動するカウンター攻撃です。大ダメージかつ敵を必ず怯ませるため、とても強い。ただしそもそも見切り反撃に対応してない攻撃もあるので、見切り反撃を出したい場合は見切り反撃に対応する攻撃をしてくるまで待つ必要があります ↩︎
- ただし、「受け」と一括してはいますが『SEKIRO』と『Steller Blade』のパリィと『サイレントヒルf』の見切り反撃は異なる部分も多くあります。これを無視して一括りに問題を浮かび上がらせることがどこまで適切なのか…という点はもっと掘り下げられるべきかもしれません ↩︎
