「たいみんぐぅ~」は、ゲームが刻むリズムに合わせてボタンを押す、リズムアクションゲーム。
多様なリズムがお題になったミニゲームが収録されています。
不満だらけの作品です。
リズムアクションの大切な点をことごとく欠いた内容。
リズムにのる楽しさも、のりこなした時の気持ちよさも、ほとんど味わうことができませんでした。
16種類あるミニゲーム中の一部、楽しいと感じられるものもありました。
しかし大半は作りの甘さばかりが目立つ、残念な作品です。
タイトル | たいみんぐぅ~ |
ジャンル | リズムアクション |
対応機種 | Switch |
価格 | 1496円 |
プレイ時間の目安 | 2時間 |
判定 | つまらない |
総評
「たいみんぐぅ~」はリズムアクションゲームです。
音楽、演出に合わせてゲームが刻むリズム。
これに合わせてボタンを押し、そのタイミングの正確さで成否が決まります。
一定以上の正確さをキープできれば、ゲームクリア。
「リズム天国」を遊んだことがあるならば、同様の内容を思い浮かべてもらえると話が早い。
もっとも、本作の完成度は「リズム天国」にはまるで及びません。
本作は、リズムアクションゲームの大切な点を大きく欠いている。
それゆえに、不満の多い作品です。
「リズム天国」を意識して作られたゲームだろうと感じました。
根本のシステムはもちろん、ビジュアル面も明らかに寄せて作られています。
パクりと言っても、言い過ぎではないでしょう。
しかし、ここに不満はありません。
むしろ私が「たいみんぐぅ~」に感じた不満は、きちんと「リズム天国」をパクれていない点にあります。
本作、外面は「リズム天国」に近いですが、その中身は似せられていません。
全く違う味付けを狙った可能性もあるでしょう。
そうだとしても、失敗しています。
だって本作には、リズムアクションにおいて最も大切な点が、欠けているのですから。
もし「リズム天国」を十分にリスペクトしたならば、こうはならないと思います。
具体的には、以下の2点。
・プレイヤーにリズムを刻ませるための「前フリ」
・リズムにのったプレイヤーへの「盛り上げ」
詳細は後述します。
これらが欠けているため、面白くない。
リズムにのる楽しさも、のりこなす気持ちよさも、感じられないゲームになっています。
それどころか、リズムが噛み合わない気持ち悪さばかりを感じました。
また各ミニゲームのチュートリアルも、リズムアクションにあるまじき内容です。
ボリュームも不足しており、1500円であるのに割高感があります
16種類あるゲームの全てがつまらなかったとは言いません。
しかしこれも、強いて言うならばの話です。
面白くありません。
「リズム天国」に似ているようで、大切なところを似せられていない作品。
期待して買うと、まずガッカリすることになるでしょう。
1500円でも高いと感じるボリュームも不満です。
詳しいレビュー
不足している、リズムの「前フリ」
プレイヤーにリズムを刻んでほしいならば、「前フリ」が必ず必要であると思います。
本作には、それが不足しています。
フリ自体は存在しますが、足りていません。
例をあげて話してみましょう。
「3・3・7拍子」という、応援で使われるリズムがあります。
このリズムは、なぜかわからないけど、刻んでいて気持ちがいい。
一度でも聴いたことがあるならば、共感してもらえると思います。
もし初めて知るのであれば、ぜひ一度あたまの中でいいので刻んでみてください。
タンタンタン(3)
タンタンタン(3)
タンタンタンタン・タンタンタン(7)
音楽の理論などは知らずとも、なぜか3・3の後の7は、カチッとはまって気持ちよく聞こえる。
これが6や8だと、おさまりの悪い感じがします。
幸福なことに、私たちは生まれた時から童謡、アニメやドラマのテーマソングなどで、数えきれないくらいの音楽に触れてきている。
そのため、言葉で表すことはできなくても、感覚でリズムを知っています。
その感覚が、理由もよくわからないのに、3・3からの7を気持ちよいと思わせるのでしょう。
この「3・3」こそ、本作に不足している「リズムの前フリ」の好例です。
リズムアクションのリズムとは、「前フリ」と「その後のリズム」で作られると思います。
まず3・3・7拍子のような、気持ちいいリズムパターンを用意し、前フリ(3・3)とその後(7)に分割する。
「前フリ」をゲームに刻ませて、対してプレイヤーがどれだけ正確に「その後のリズム」を刻めるかを試す。
成功すれば3・3・7拍子のような気持ちいいリズムパターンが完成。
なんだか楽しくなってくる。
パターンを複数用意したり、それを突然入れ替えたりするなどすれば、より遊びらしくなります。
ゲームが刻む前フリをよく聞いて、プレイヤーはその後を正確に刻む。
そうして一つの気持ちいいリズムを作る楽しみが、リズムアクションの醍醐味の一つであると思います。
であるのに「たいみんぐぅ~」は、この前フリが大きく不足しています。
前フリ自体は存在するものの、短すぎます。
そのため、プレイヤーがその後を引き出す余裕がありません。
また、一つのゲームに異なる前フリが複数あるのに、どれも似ていて区別がつかないことが多いのも気になりました。
前フリが不十分であると、プレイヤー側がうまくその後を出せません。
すると、リズムが完成しません。
噛み合わず、気持ち悪さが残ります。
3・3があるから、7が出てきます
3・3をはっきり、丁寧に刻んでくれないと、7がスムーズに出せません。
本作は3・3の刻みが不十分であるため、リズムアクションであるのに、リズムの気持ちよさを感じづらい作品になっています。
もっと前フリをわかりやすく、リズムパターンごとにはっきりと区別をつけるべきだと感じました。
不足している、ゲームの「盛り上げ」
本作には前フリの他にもう一つ、大切な点が不足しています。
それは「盛り上げ」です。
そもそもリズムとは、どれだけ気持ちいいパターンでも、ただ刻んでいるだけではすぐに飽きます。
3・3・7拍子だって、ただずっと刻んでいても楽しくありません。
これは前フリの存在しない「一定の間隔で刻み続けるリズム」でも同様です。
メトロノームに合わせて手を叩き続けても、ちっとも楽しくない。
リズムとは、それだけでは楽しくないのです。
だからこそリズムアクションは、リズムを刻むプレイヤーを盛り上げてやる必要があります。
例えば音楽を使う。
メトロノームに合わせて手拍子しても面白くないですが、「女々しくて」に合わせると楽しい気分になってきます。
加えて演出。
気持ちいいリズムを刻む音楽とプレイヤーに合わせて、光の演出などで視覚的にも高揚させる。
本作には、この「盛り上げ」がまるで足りていません。
音楽の質に不満はありません。
しかし、全体を通してBGM=背景になってしまっています。
リズムアクションにおける音楽は、背景ではいけないと思います。
プレイヤーとゲームが作るリズムに同調し、まるでポップスやダンスミュージックのように、展開とサビでプレイヤーを盛り上げてほしい。
リズムは音楽とセットになることで、何倍にも楽しいものになるはずです。
だというのに、本作の音楽は主張が弱すぎます。
演出も大きく不足しています。
あるのですが、足りません。
リズムを刻み、それに合わせて音楽が展開し、いよいよサビに突入したのなら、次は視覚でも盛り上げてほしいのです。
炎が上がり、光がきらめき、キャラクターたちが舞い踊りだす。
そうしてリズムと音楽と演出が重なったとき、刻む気持ちよさも最高潮に達します。
本作は音楽と演出による盛り上げがほとんどありません。
そのため、単調にリズムを追いかけるだけの、味気ないゲームになってしまっています。
リズムゲームにあるまじき内容の、チュートリアル
本作のミニゲームには、それぞれにチュートリアルが用意されています。
ゲームごとに刻むリズムが違うため、やはり説明は必要です。
しかしこの説明の内容が、リズムゲームにあるまじきものだと感じました。
というのも本作、リズムに合わせてボタンを押すゲームなのに、チュートリアルでそのリズムを解説しないのです。
例えばあるゲームでは
「なんでやねん」の「ね」に合わせてボタンを押しましょう
だとか
「ゲージが満タンになった時が、ボタンを離すタイミングです」
と、まるで本作は目押しで攻略するゲームであるかのような説明がされるのです。
その後「リズムを暗記するのが成功の近道」などとアドバイスされますが、これはナンセンスなチュートリアルです。
順番が逆です。
リズムに合わせてボタンを押すゲームなのですから、それはどんなリズムなのかを説明すべきです。
「なんでやねんの、ね」でボタンを押せ!ではありません。
リズムに合わせてボタンを押すと、自然と「ね」で押すことになりますよ、と説明してほしいのです。
本作のチュートリアルからは、まるで「たいみんぐぅ~」は目押しや暗記で攻略するゲームのように感じられてしまいます。
リズムは目押しするものでも、タイミングを暗記するものでもありません。
まずはお手本でリズムパターンを聴く。
実戦では、ちょっと不安だけど、目押しでも暗記でもなく、リズムを信じてボタンを押してみる。
すると、自然とちょうどいいタイミングでボタンを押せている自分がいる。
これこそがリズムアクションではないでしょうか。
リズムで攻略するゲームなのですから、チュートリアルでもリズムを伝えるべきです。
もしかしたら、リズムなんてあやふやなものより、明確な基準を用意した方が分かりやすいと判断したのかもしれません。
リズムとは確かに形のないものです。
それでも、少なくとも目押しよりはずっと正確であることを「リズム天国」が解説していたはずです。
終わりに
名作の外面だけを真似て、中身は全く伴っていない作品です。
マネをするのならば、その対象をもっと研究すべきです。
オススメできないゲームです。
リズムアクションの大切な部分を欠いており、楽しさを感じられません。
見た目に反して難しいゲームであるため、家族でのプレイなどにも適さないでしょう。
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