ゲームを遊ぶとき、それがどんな作品であれ、何かを期待して遊び始めるものです。
「無双」なら、一騎当千の気持ち良さを。
「バイオハザード」なら、怖さとサバイバル感を。
さて、「ダンガンロンパ」の人と、「Ever17」の人がタッグを組んだ作品がここにあります。
あなたは、そのゲームに一体何を求めるでしょうか?
今回レビューする「ワールズエンドクラブ」
私は本作に、刺激に満ちており、かつ予想のつかない印象的なシナリオを求めていました。
しかしその内容は、今一つインパクトに欠ける少年少女たちの珍道中的なシナリオ
そして練り込みの不足が目立つ、これまた印象に残らない単調なアクションでした。
タイトル | ワールズエンドクラブ |
ジャンル | 2Dアクション×ADV |
対応機種 | Switch、iOS |
価格 | パッケージ版価格 5,478円(税込) ダウンロード版価格 4,928円(税込) |
プレイ時間の目安 | 10~15時間 |
備考 | iOS版はアップルアーケード対応。 |
総評
ワールズエンドクラブは、2DパズルアクションとADVが融合した作品です。
ゲームは主にシナリオパートとアクションパートに分かれた作り
物語を進めながら2Dアクションで様々なステージを攻略していきます。
舞台は1995年の日本。
主人公は、東京の小学校に通う11人の少年少女。
修学旅行に向かうバスでの移動中、謎の隕石が地上に落下することから物語がスタートします。
目を覚ました11人が目の当たりにしたのは、人が消えた街。
なぜこんなことになったのか? 東京では何が起こっているのか?
少年少女たちが進む、東京まで1200kmの旅が始まるのでした。
いきなり結論を述べてしまえば、本作は期待とはかけ離れた内容でした。
あの「ダンガンロンパ」と「Ever17」の人が…!と聞けば、やはりそこに期待するのはシナリオです。
しかし本作のシナリオは、思っていたものと違ったと言わざるを得ません。
街から人が消えていた…というイントロはワクワクしますし、この先どうなるんだろうと期待もしていました。
しかしそこから展開されるのは人類滅亡のナゾに迫る波乱万丈のストーリー…ではありませんでした。
あったのは緊張感のない子供たちの、お気楽珍道中。
明らかな異常事態なのに、主人公たちはのんびり、時にわちゃわちゃと進んでいきます。
やたらと入る「下ネタ」も相まって、常に軽いノリで物語が展開されるため、いまいち引き込まれません。
ゲームが進むにつれて見えてくる真相、設定は一部驚かされるものがあります。
しかしそれすらもどこか既視感があり、期待に応える内容ではありませんでした。
基本のノリがお気楽で、真剣みを感じづらい物語。
突然シリアスな展開に入られても、なかなか感情移入しづらいものがあります。
もう少し、困難を乗り越える描写、キャラクターの成長を描くシーンがあれば…と思わずにはいられません。
刺さるもの、印象に残るものが感じられない、平坦なシナリオになっていると感じました。
そしてそんな平坦っぷりに拍車をかけてしまっているのが、練り込み不足のアクションパートです。
前述の通り本作は、アドベンチャーとアクションを交互に繰り返しながら進むゲーム。
しかしこのアクション、お世辞にも出来がいいとは言えません。
基本はシンプルなジャンプアクションと、ブロックの押し引きを絡めたパズル。
主人公たちが持つ超能力を使ったボス戦が、本作のアクションパートを構成する要素です。
この要素全て、遊んでいて楽しいとは感じませんでした。
ジャンプアクション、パズルのどちらもが極めてシンプルで、頭を悩ませる場面はほとんど存在しません。
パズルはスイッチの上にブロックを置くだとか、足場にして高台にのぼるだとか、ぱっと見ただけで思いつく解法が大半。
ジャンプアクションの障害物、落ちると死ぬ谷底、ザコ敵の配置も行き当たりばったり的で、こだわりを感じられない。
それならばとボス戦を遊べば、単調極まりない攻撃パターン、それでいて妙に高いHPばかりが目立ち、攻略する面白さが全くありません。
演出も弱く、物語の盛り上がりを印象付けるには、あまりにも物足りない存在になってしまっています。
そもそも、キャラクターの動作自体もどこか重たく、操作する気持ち良さが皆無なのも気になります。
「デスゲーム中止」から始まる物語への引き込みと、正に笑いあり涙ありの珍道中
決してこれに魅力がないわけではありません。
驚かされる設定があったのも事実です。
重たいものを廃した青春ロードムービーとして見れば、印象的なシーンは確かにありました。
しかし、小高和剛、打越鋼太郎というビッグネームに期待する、予想のつかないアッと驚くシナリオだったのかと聞かれれば、ノーと言わざるを得ません。
二人の作品に期待するものとは、かけ離れた内容でした。
アクションに深みも感じられず、キャラクターを動かす気持ち良さにも欠けているのも難点。
シナリオ、アクションの両方に不満の残る作品となりました。
詳しいレビュー
リアリティに欠ける、のんびり珍道中的なシナリオ
本作のシナリオは、主人公たちの鹿児島から東京までの道のりを描いています。
なぜか人が消え、謎の怪物の姿がちらつく街を進む旅。
その中で真相に迫るナゾや、意外な設定が明らかになっていき、物語の全容がすこしずつ見えてきます。
しかしこのシナリオ、深く入り込めない内容になってしまっていると感じました。
その理由は、リアリティに欠けているからです。
主人公たちが置かれているのは明らかな異常事態。
鹿児島から東京までの道のりは果てしなく、とても悠長に構えている余裕はないはずです。
しかし、実際の主人公たちの様子は正にお気楽そのもの。
重たく、緊張感に満ちた…というよりは、ギャグを交えながら面白おかしく、良くも悪くも子供らしく物語は進んでいきます。
その様は一言でいって「珍道中」
時折トラブルも発生しますが、基本はのんびりとしたものです。
つまるところ、置かれている状況に対しての主人公たちの様子に、いまいちリアリティがないのです。
今起こっていることに対して、真剣に向き合っているように感じられず、こんなにのんびりしてていいのか?という違和感が拭い去れない。
そのため、物語にしっかりと入り込むことができません。
進むにつれてシリアスな出来事だったり、衝撃的な事実が明らかになったりと、物語の山場も現れます。
しかしそういったシーンも印象に残らない。
何せ物語にどっぷりと入り込めていないため、まるで他人事のようにしか感じられないのです。
最終的にたどり着く真相は、驚くべきものではあります。
ですがそれすらも既視感ばかりを覚えてしまい、結局最後までシナリオに心を動かされることがありませんでした。
血生臭いものを撤廃した青春ロードムービーとして見れば、ここはポイントだったんだろうな、と感じる場面はあります。
しかしそうだとしてもやはり、この状況で下ネタをかましながらワイワイ進む主人公たちの姿には違和感があります。
リアリティに欠けるため、入り込むことができない。
印象に残りづらい、平坦に感じてしまう物語。
本作に最も期待していたのは何よりも「物語」だったので、これを楽しめなかったのは大変残念な点です。
練り込み不足を感じる、各種アクション
上述しましたが、本作のアクションパートは褒められたものではありません。
パズルとしては難易度が低すぎ
山場のボスは弱すぎ、かつ単調すぎ
まるで良いところが見当たりません。
おまけにキャラクターの動きもどこか重たくもっさりしていて、動かす気持ち良さを全く感じられないのも残念な点です。
更に本作のパズルは、その大半が一次元的な単調なものになってしまっています。
スイッチの上にブロックを置く、ブロックを足場にして高い場所へのぼる…など、ワンアクションで解けるシンプルすぎる構成が9割。
しかもそれすらも、同行しているキャラクターが「こうすればいいんじゃない?」と答えをバラしてしまうシーンが目立つ。
あまり簡単すぎるパズルからは、ゲームを水で薄めたような味気無さを感じました。
もう少し、プレイヤーに頭を使わせてもよかったと思います。
また、アクションの山場であるボス戦も、まるで印象に残っていません。
ボスのデザインが妙に丸っこく、いまいち強そうに感じられないのも気になる点です。
しかし、もっとも残念なのはその単調さ。
戦闘中に攻撃パターンが変化することがほとんどなく、しかもさぁ避けてくれと言わんばかりにノロノロと攻撃してくる。
攻撃は全て即死なので、負けることもあります。
しかし、即死なぶん分かってしまえば余裕でノーダメージで倒せるバランスになっており、緊張感がありません。
ゲーム自体のスピードの遅さもあり、ダラダラと戦っているような感覚になってしまいがちで、何とも退屈なボス戦になっていると感じました。
終わりに
あの「ダンガンロンパ」の小高和剛氏がクリエイティブディレクター、「Ever17」や「極限脱出」の打越鋼太郎氏がシナリオを務めた作品。
これこそが本作の最大の魅力であり、同時にゲームへの評価を落とす要因になってしまっています。
これからプレイされる方は、そんな先入観を持たずに遊んでほしいなと思います。難しいですが…
アクションはともかく、シナリオは見方を変えればユニークな見せ方をしているシーンがありますので。
逆に、先入観を消すことなんてできない…!という方には、本作はオススメできません。
変な先入観を持たずにプレイすれば、楽しめた部分もあるかもしれません。
しかしあれだけあの小高氏と打越氏…!と言われれば、ファンとしてはそこに期待するなという方が難しい。
残念な一作になってしまったと感じました。