3DSのストア閉鎖が近づいてきました。
ご存じの方も多いでしょう。3DSからアクセスできるストアは、2023年3月28日に閉鎖します。以降はダウンロード購入は一切不可能になります。
パッケージ版のあるタイトルは中古を探せば良しとしても、問題なのはDL専用タイトル。閉鎖する前に良作を押さえておきたいゲーマーは多いことでしょう。
当ブログでは定期的に公開している「テキストADVマガジン」内の連載企画である
「3DSテキストADV調査ファイル」にて、この1年をかけてDL専用のテキストADVを実際に購入しプレイ。それが閉鎖前に買っておくべきタイトルなのかどうかを、体と現金を張って調査してきました。
今回の記事ではその総決算と致しまして、私が調べてきたタイトルをオススメ度別に分類したうえで、まとめて紹介します。
良作を逃したくないテキストADVファンの皆様の役に立ててもらえれば幸いです。
では、紹介していきましょう。
オススメ度★★★ ぜひ買っておきたい
TRUE REMEMBRANCE ~記憶のかけら~
500円で配信中。
本作はもともとはフリーゲーム。その実況プレイを見たディレクターが惚れこみ、3DSでの配信に至った…と、珍しい経緯を持つゲームです。
元の製作者は『送電塔のミメイ』などで有名な里見しば氏。
移植に際してビジュアルは一新された一方、シナリオには手を加えず。
フリーゲームの時点で評価の高かった物語を、そのまま3DSで楽しめます。
数時間でクリアできる短編ながら、タイトル通りの記憶にまつわる切ないエピソードがポイント。
終盤は意外性のある展開も。
今回紹介するゲームの中で最もオススメです。最低限買っておくべき作品は?と訊かれたら、本作だと答えます。
タイトル | TRUE REMEMBRANCE ~記憶のかけら~ |
価格 | 519円 |
プレイ時間の目安 | 5時間 |
悪夢の妖怪村
200円で配信中。DSiウェアです。
本作は1985年に発売されたゲームブック「悪夢の妖怪村」をビデオゲームに移植した作品。
そのためプレイ感覚は一般的なテキストADVとはやや異なります。
原作の著者は鳥井架南子。江戸川乱歩賞に選ばれたこともある作家です。
妖怪が跋扈する廃村に迷い込んだ主人公が、脱出を目指す内容。
プロの作家の業だけあって、言うまでもなく文章はハイレベル。
舞台はオドロオドロしいのですが、軽妙な文体が奇妙にもマッチ。
シュールなギャグも盛り込まれた独自のノリが面白い。
物語性は高くありません。また元がゲームブックであるがゆえに、とにかく繰り返して正解パターンを探る以上の遊びは無し。
とはいえ、200円のロープライスを考えれば十分満足の一本。オススメです。
ボリュームは相応で、試行錯誤含めても3時間程度でクリアできます。
実は全く同じ内容で、ビジュアル面を強化したリメイクとも言えるバージョンがSwitchで配信中。
ただしそちらは1600円。この値段差を考えると、3DS版を選択肢に入れて良いでしょう。
タイトル | 悪夢の妖怪村 |
価格 | 200円 |
プレイ時間の目安 | 3時間 |
オススメ度★★☆ 一見もとい一プレイの価値あり
プチノベル「収穫の十二月」シリーズ
全13作。1のみ100円、以降のシリーズは200円で配信中。
元々は同人ゲームサークルtalestuneより、四季ごとの4作+最終章1作の計5作で展開されました。3DS版は更にそれを月ごと13作に分割して発売。1本当たりの値段、ボリューム共に“プチ”であることから、プチノベルと銘打たれています。
神が住まい、その神と人のように接することができる土地「多紙町」が物語の舞台。
そこに越してきた主人公が名士の一人娘である「十和田 雪」と、土地神「しろ」に同時に愛の告白を受け、三角関係になってしまうことから物語がスタートします。
…と言ってもラブコメディではなく、主人公らの心理描写、成長に重きをおいた内容。
主人公がクセのある人物で、内面への共感が難しい作品です。しかし物語は主人公の心理を大切に描きます。そこが作品のポイントですが、理解は簡単ではないと感じました。また一本のストーリーに他多数の人物の内面を盛り込んでいるため、相応の読み込む姿勢も求められます。
値段に対してのクオリティは十分。しかし気軽に楽しむよりは、むしろガッツリ読みたい方にこそオススメ。13作それぞれ1話ごとに区切りはつきますが、最初から最後までつながっているため、遊ぶ場合は必ず1からどうぞ。
やや分かりづらいですが「収穫の十二月」から始まり一月~十一月と続いて最後が「収斂の十二月」です。
ちなみにスマートフォン版も配信中。しかしお値段では3DS版がお得なうえ、GooglePlay版は規約まわりのトラブルでシリーズ途中で配信が止まっている模様です。
タイトル | プチノベル「収穫の十二月」シリーズ |
価格 | 「収穫の十二月」のみ100円 以降200円 |
プレイ時間の目安 | 各1時間前後 最初と最後、八月のみ3時間 |
備考 | スマホ版も配信中 |
高円寺女子サッカー ある青春の物語
DSiウェア作品。800円で配信中。
本作はもともとPS2で発売された同タイトルを、DSiウェアとして移植した作品です。
シリーズ化されており、過去に3作目まで発売されました。
主人公、茂江流 斗志(もえる とうし)は高円寺にあるお嬢様学校、高円寺女子学園に赴任してきた体育教師。
そこで新設される女子サッカー部の顧問を務めることになった主人公。その熱血っぷりで生徒たちにぶつかり、共に全国大会制覇を目指すのですが…
ツッコミどころの多い作品で、欠点やおかしな点をあげれば切りがありません。
が、それでも独自の魅力をもった一本だと感じました。
まず面白いのが恋愛ADVのように見えて、意外なほど“スポ根”する作品であること。
熱血教師である主人公は、部員らの悩みを解決するためコミュニケーションを取ります。しかしその先にあるゴールは恋愛ではなく、あくまでもチームとして団結、そして試合での勝利。どうあっても恋に結びつく一般的な恋愛ADVと本作の大きな違いであり、これがなかなかどうして新鮮で面白い。
育まれていくのは恋ではなく、顧問と生徒の熱い信頼関係。
主人公一人と多数に美少女ヒロイン…と恋愛ADVらしいキャラクター構成でありながら、展開されるストーリーは一味違うのです。
センス感じるブッ飛んだセリフ回しも印象的。ギャグシーンは思わず吹き出してしまうこともありました。
総合的な品質で言えば、褒められたものではありません。
しかし独自の魅力も感じる一本。
ADVマニア向けではありますが、オススメです。
タイトル | 高円寺女子サッカー ある青春の物語 |
ジャンル | ドラマチックスポ根美少女ゲーム |
価格 | 800円 |
プレイ時間の目安 | 1周3~5時間 |
THE 鑑識官 ~File.1/ File.2
File.1と2、各500円で配信中。D3パブリッシャーのSIMPLEシリーズの一つです。
本作はダウンロード専用タイトルですが、元々はNDSでパッケージタイトルとして発売された作品。NDSでは2作目まで発売されました。
この3DSダウンロード専用版は、シリーズ1作目を2つに分け、それぞれに新シナリオを1つずつ追加した内容。オムニバス形式であるため直接のつながりはありません。しかしFile.1と2は地続きであるため、遊ぶならばFile.1からがオススメです。
そのタイトル通り、鑑識官である主人公を通し、科学捜査で事件の真相を追うサスペンス×謎解きADV。トリックを暴くよりは、足で証拠を集めて真相に迫る…と言うべき内容で、探偵よりかは刑事ものの印象が強い作品。
テキストの特徴としては、地の文が少なく、ほぼ会話文のみで進行。またキャラクターは個性こそありますが深掘りは皆無。物語や人物描写よりは、出来事と展開を楽しむことに重点を置いた内容です。
真相は意外な展開ばかりで、この点は大きな魅力だと感じました。プレイヤーが正解を選択するシーンも多くあり、いずれも話をしっかり追いかけていないと答えられない難易度。
読み物としての面白さはありません。しかし刑事ドラマ風ADVとして、値段相応の遊びごたえは得られる作品です。
タイトル | THE 鑑識官 ~File.1/ File.2 |
価格 | 各509円 |
プレイ時間の目安 | 各3時間 |
ノックアウトピープルズ ~ちょっと残酷な博覧会~
DSiウェア作品。500円で配信中です。
ぶっちゃけちまいますと、お世辞にも良いゲームとは言えません。
が、主人公であるブタのシュールな散り様がとにかくユニーク。
ブタは、迷惑行為を繰り返すダメなヤツ。
プレイヤーの目的は、選択肢で彼に正しい行動をとらせること。もちろんあえて迷惑行為をさせることも可能。すると“ちょっと残酷”な結末が待っており…ここが面白いところ。
とは言っても、1時間足らずでコンプリートできてしまうボリュームは値段を考慮しても問題アリ。
シナリオにも深みはなく、単発的に出来事を楽しむのみです。
絵本のようなイラストからは想像できないほど、悲しい最期を迎えるブタ。
そのちょっぴり残酷な様子を楽しむ作品です。
タイトル | ノックアウトピープルズ ~ちょっと残酷な博覧会~ |
価格 | 500円 |
プレイ時間の目安 | 30分~1時間 |
スターノベルズ この晴れた空の下で
DSiウェア作品。800円で配信中。
アンドロイド(作中ではミミックと呼称)が普及した近未来が舞台の恋愛ADV。
もともとはPS2でリリースされたものを、DSiウェアとして移植した作品です。物語は本来起こるはずのないアンドロイドの自殺が発生するところからスタート。主人公はヒロインと共に、その真相の解明に乗り出すのですが…
元が据え置き機のゲームということで、ボリュームは明らかに値段以上。一枚絵も多く用意されていますし、個別エンド3種類の他、好感度不足によるノーマルエンドまで数パターンあり。更にシナリオは総じてシリアス成分強めの仕上がり。世界設定や出来事も面白く、この点ではオススメの一本。
ただしPS2→DSiウェアへの移植による粗は散見されます。まず解像度が低い上にボイス無し、選択肢も分岐も多いのにセーブデータは3つしか保存できません。スキップも遅め。
更にネット上に攻略情報が存在しないほどマイナーな作品であるため、コンプリートには苦労するかも…
タイトル | スターノベルズ この晴れた空の下で |
ジャンル | SF恋愛アドベンチャー |
価格 | 800円 |
プレイ時間の目安 | 15時間 |
オススメ度★☆☆ このジャンルのマニアならば…
もののけ探偵 信太のあやかし事件帳
800円で配信中。
トムキャットシステムが開発したADV。
同社はD3パブリッシャーのSIMPLEシリーズ内などで、ミステリーADVを手掛けていました。
先に紹介した「THE 鑑識官」もその一つです。
しかし、本作はお世辞にも面白いとは言えません。
短編にしてはコッテリした内容であるのに、導入部が簡素すぎるのがまず気になります。そのため話の起こりからして唐突感あり。探偵ものなのに事件の印象付けも弱い。背景CGが簡易的であるにも関わらず、風景描写がないため、ゲーム内の情景がさっぱり浮かんできません。
もっとも良くないのは“とってつけた”としか言いようがない、クオリティの低いミニゲームが度々挿入されること。
物語体験の質を下げており、これならば無い方がいいと感じるほどです。
オススメしづらい一本です。
タイトル | もののけ探偵 信太のあやかし事件帳 |
価格 | 835円 |
プレイ時間の目安 | 5時間 |
-CHASE- 未解決事件捜査課 ~遠い記憶~
二人の刑事が主人公の推理ADV。800円。
大きな特徴は、開発に
『アナザーコード 2つの記憶』
『ラストウィンドウ 真夜中の約束』
など手掛けたスタッフが携わっていること。
数は多くないものの、品質の高いADVを生み出してきたことで有名です。
…が、本作はオススメしづらい。
シナリオ自体は興味を引かれるものの、最大の問題は短すぎるプレイ時間。
1時間程度でクリアできてしまいます。
まるで大作ADVのチュートリアルだけを遊んだよう。
というのも本作、スタッフコメントなどから察するに、続編を前提に開発されたものの、道半ばで頓挫してしまった作品のようなのです。
その証拠として、巨大な伏線が回収されずにゲームは終わります。予算削減のためか、刑事ものとしては不自然なシチュエーションで強引に話を進めているようにも感じられました。
タイトル | -CHASE- 未解決事件捜査課 ~遠い記憶~ |
価格 | 815円 |
プレイ時間の目安 | 1時間 |
終わりに
以上9本を紹介しました。『THE 鑑識官』や『収穫の十二月』シリーズは複数の作品からなるため、実際に買うと本数は増えますけれども。
実はこの記事で紹介するつもりでいたけれど、自身のモチベーション低下により遊びきれなかったタイトルもあります。DSiウェアとして発売された『探偵 神宮寺三郎』シリーズや、スターノベルズの『白銀の鳥籠』などがそうです。
『白銀の鳥籠』は共通ルート前半は遊びました。しかしその時点でいい加減なシナリオ運びが目に余り、モチベと照らし合わせて遊びきれないと判断。抜けはありますが、この時点での記事公開としました。
記事の公開時現在ではお買い得になっているタイトルもいくらかあります。気になるタイトルは、閉鎖前に抑えておきましょう。また紹介できていない良作の情報があれば、提供も待っています。