今回は
本日は、お日柄もよく / 原田マハ
ホテル・ローヤル / 桜木紫乃
ゼロ―なにもない自分に小さなイチを足していく / 堀江貴文
取材・執筆・推敲 書く人の教科書 / 古賀史健
以上の4冊です
本日は、お日柄もよく / 原田マハ
スピーチと、その原稿を書く「スピーチライター」の仕事を通して、言葉の力を描いた一冊。
どこにでもいるOLである主人公が、言葉を巧みに使いこなし、人の心を動かすスピーチライター”久遠久美”と出会い、自身もその職に憧れるところから物語がスタートします。
スピーチ…というと、基本的にはつまらないもの…というイメージが強い。
言葉とは、絵や音楽と比べて地味なものです。
また人間はみな何を言っているかではなく、誰が言っているかを重視してしまう生き物。
そんなことを考えると、ブログなんてものを書いているくせに、言葉の力なんて…と思ってしまいそうになります。
しかしこの本を読んで、そう悲観することもない…と、思えるようになりました。
全体的に話し言葉そのままに近い文章が多く、登場人物もどこかマンガ的でコメディ色が強め
この点は人を選ぶでしょう。
美文ではありませんが軽妙で、読みやすいので私はアリだと感じました。
比喩表現もユニークで、思わずクスッときてしまいます。
ところが、物語の山場に用意されているスピーチ披露のシーンではその雰囲気が一転。
ほんの10ページ前は笑いながら読んでいたのに、今度は言葉の力に感動させられ…と、感情を揺さぶられる内容でした。
言葉だけでこんなに心を動かされるものか…と驚くとともに、自分もこんな風に書けたらなと憧れてしまいますね。
後半になるに連れて舞台を政治に移し、読者を結束させつつ最後にはほろりと感動…と、展開にすっかり乗せられて楽しんだ一冊になりました。
ホテルローヤル / 桜木紫乃
とあるラブホテルを舞台にした短編集。直木賞受賞作です。
7編で構成された短編集で、舞台が舞台だけに男女の恋愛がテーマ。
しかし、決して爽やかなものではなく、インモラルな、動物的な、いやらしさを感じさせる描写も少なくありません。
私は読後感のさっぱりした物語が好きなので、正直趣味に合わなかった。
しかし男女の愛の形とは一つとして同じものはない…なんてことを、しみじみと思う内容でした。
作中に登場する男女の愛は、どこか歪んでいるようなものが大半。
ラブホテルとは人が動物になる場所…というイメージも強いですが、その根元にある愛はやはり純粋なものばかりではありません。
それを見つめながら朽ち果てていくホテルローヤルに、切なさを感じさせられる内容です。
わかりやすいテーマや気持ちよさが提示されている作品ではないため、あまり人にオススメはできません。
大人向けの一冊です。
ゼロ―なにもない自分に小さなイチを足していく / 堀江貴文
堀江貴文氏の本の中でも、特に有名な一冊
ホリエモンというとエッジのきいた言葉で、炎上を恐れず世の中をズバズバ切っていく…という印象が強いです。
それは著書にもよく表れていて、特に「多動力」などは良くも悪くも刺激の強い一冊でした。
しかし本書ではその雰囲気が一変。
ホリエモンがなぜ今の考え方に至ったのかなどを、生い立ちも交えながらドキュメンタリー映画のように語った内容になっています。
印象的だったのは、刑務所にいたころのホリエモンは「介護衛生係」についていて、高齢受刑者の下の世話などをこなしていたこと
そして、重松清の本「とんび」に感動して涙が止まらなかった…というエピソードです。
その中で、僕がもっとも感動した小説はなにか?
これは間違いなく、重松清さんの『とんび』である。
NHKとTBSでそれぞれドラマ化されたこともあり、読んだことのある人も多いだろう。収監中の感傷的な気持ちも手伝ってか、本を読んでこれほど泣いたことはない、というくらい滂沱の涙を流した。
ゼロ―なにもない自分に小さなイチを足していく / 堀江貴文 ダイヤモンド社
フィクションの物語に感動するイメージがありませんし、介護衛生係なんて面白くないことを嫌うホリエモンは絶対にイヤイヤやっていたんだろうな…と思って読んだのですが…
身の上話を語りつつ、なぜ働くのか?というホリエモン自身の人生の主題にも迫る内容。
ホリエモンがあまり好きじゃない…という人にも、この本だけはオススメしたいですね
取材・執筆・推敲 書く人の教科書 / 古賀史健
古賀史健氏の文章本といえば、「20歳の自分に受けさせたい文章講義」は、今でも私にとってのバイブルとして大切にしています。
そして更に完成度を上げた、古賀史健流文章本の到達点…といえるのが、本書「取材・執筆・推敲 書く人の教科書 」です。
お値段が3300円となかなかで、買うことを躊躇っていました。
しかし読み終えた今、損をしたとはこれっぽっちも思いません。
いやそれどころか、その何倍もの価値を持った、書く技術を高めたいと思う全ての人にオススメしたい一冊だと感じました。
書く前の段階、取材
実際に筆をとる、執筆
その文章を世に出す前の最後の仕上げ、推敲
この3項目を古賀史健流に徹底的に解説した一冊で、この内容をモノにできたら、自分の書く文章はきっと何倍も良いモノになる…そう確信しています。
読者(お客さん)はコンテンツに、ただの情報を求めているのではない。続きを読まずにはいられない、あの興奮。ページをめくる手が止まらない、あの没頭。読み終えたあともしばらく「その世界」から抜け出せなくなる、あの余韻。読む前の自分と読んだ後の自分とのあいだに、わずかながらの変化を感じる、あの清々しさ。こうした「読書体験」としか名づけようのないなにかを求め、読者はコンテンツを読んでいる。
じゃあ、どうすれば「文章を書く」だけのライターから、「コンテンツをつくる」ライターへのジャンプができるのか。
その鍵になるのが、「編集」という概念であり、プロセスである。
取材・執筆・推敲 書く人の教科書 / 古賀史健 ダイヤモンド社
文章本といっても、句読点の位置だとか”てにをは”の正しい使い方だとか、国語の授業のような内容ではありません(これも大切ですが)
小手先のテクニックではなく、良いものを書くことを目指す私たちは、いったい何をどう考えればいいのか?
もっと本質的な部分に迫る内容です。
現在”2周目”の最中。
この本に関しては、個別の記事でも感想を書きたいと思っています。
以上4冊の感想でした。
最後に書いた「取材・執筆・推敲 書く人の教科書」はとにかく学びの多い一冊でした。
ただ、読んだだけでは意味がない。
いかにしてモノにするか…というところは、考えなくてはいけません。
「本日は、お日柄もよく」もオススメの一冊
とにかく面白い物語、そして言葉の力を感じたい人に読んでほしい内容です。
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