私たちに、翼はありません。だから、空を飛べません。
空を飛べるものの力を借りて擬似的に飛ぶことはできても、鳥のように羽ばたくことは、できません。
今回レビューする「有翼のフロイライン」は、大空を駆け、敵を撃墜するフライトシューティング。
メカ×美少女で遊ぶシューティング。この組み合わせにに惹かれ遊びましたが、その内容は理想には程遠いものでした。
ゲームとして面白い部分がまるで見当たらず、ひたすらに味気ない体験が続きます。
約2時間で終わるボリュームですが、短くてよかったと感じるほどに薄いゲームです。
大空を駆ける楽しみを目指したであろう作品。
クリエイターたちの情熱は感じますが、空の遠さを余計に感じさせるような内容でした。
タイトル | 有翼のフロイライン Wing of Darkness |
ジャンル | フライトシューティング |
対応機種 | Switch、PS4、steam |
価格 | DL版 ¥3,278 (税込) パッケージ版 ¥3,828 (税込) |
総評
本作はメカ+美少女属性の主人公を操作して遊ぶ、3Dフライトシューティングです。
ヘルトシステムと呼ばれる、機械の翼を装備した人間 “フロイライン” となった主人公と、謎の敵勢力、ブランカーとの戦いを描いています。
フライトシューティングということで、360度自由に動ける空中戦がゲームの柱。
次から次へと現れる敵機を、機銃やロックオンミサイルで殲滅。
任務の達成を狙います。
美少女キャラを操作して遊ぶフライトシューティング…
提示されたコンセプトに、強く惹かれた本作。
しかし残念なことにゲーム内容は、思い描いていたものとは違っていました。
本作の空中戦は、ただひたすらに味気ない。
メカを操作する空中戦と聞いてプレイヤーが思い描くのは、ロボットアニメの戦いや、戦闘機のドッグファイトをゲームに落とし込んだものでしょう。
風を切って縦横無尽に駆け、敵の攻撃を振り切って撃墜し、また大空へと飛び去っていく。
ところが本作の戦闘では、そういった快感を味わうことができませんでした。
その理由は、飛び回る必要がないゲーム内容になってしまっており、空の戦いの持ち味を上手く表現できていないからです
スピード感を出そうとしたがゆえでしょうか。ザコ敵の飛ぶスピードがあまりにも速すぎます。
それに対抗できるようにと、自機の装備はロックオンが非常に優秀な調整に。
あまりにも優秀すぎて、カーソルに向かって撃ちまくるだけで勝手に敵機が沈んでいきます。
この仕様では、動き回る敵を捕らえて撃ち抜き、沈める…そんな気持ち良さを味わうことができません。
また、ザコ敵のサイズが非常に小さいのも気になります。
場合によっては、もはや敵がどんな形をしているかもわからないほど
しかもあっという間に飛び去ってしまうため、何と戦っているのかがわからないという珍事に。
プレイヤーがやることは、豆粒のように小さい敵を、遠距離からひたすら撃ちまくること。
やたらと飛び回るよりは、どっしりと構えてロックオンカーソルに向かって撃ちまくる。
これが一番ラクな戦い方になってしまっています。
せっかくの360度広がる空間を活かせていませんし、縦横無尽に飛び回るのは敵の方ばかりです。
撃墜時の演出も弱く、敵を沈めたのか、それどころか弾が当たっているのかもよくわからないケースが多々。
「またスコアを上げたね!」という味方からの通信で、ようやく撃墜したことに気づく始末です。
大空を舞う気持ち良さなど皆無。
大木のように構え、何者かもわからない極小の的を、遠くからひたすら撃ちまくる…
求めていたものとの差が、大きすぎます。
ではストーリーはどうと目を向けてみれば、こちらもまた味気ないものでした。
静止画と音声、字幕で構成されたムービーのみでストーリーを語るという思い切った表現。
キャラクターが動くことがないため、映像とも言えないレベルの動画を延々と見続けるのは、体験として淡白です。
また、2時間というプレイタイムの中でなかなか壮大なストーリーが展開されるため、どうにも駆け足すぎる感も否めません。
こちらが物語に入り込む前に山場を迎え、気がつけばエンディングを迎えているような感覚でした。
期待にとどかない面ばかりが目立つ本作。
こう書いておいてなんですが、それでもこのゲームを買い、遊んだことを後悔はしていません。
CSゲームの、特に「エロ」に対する風当たりが強くなるばかりの昨今。
女の子キャラクターをグリグリ動かして遊ぶ3Dアクションゲームは、アプリゲームに主戦場を移してしまったように感じます。
そんな中、メカ×美少女の定番ながら色褪せることのないテーマと、フライトシューティングといういかにも開発の難しそうなジャンル
これを組み合わせた作品がインディーズから完全オリジナル作品として発売され、しかもそれがCSでパッケージタイトルとして展開された。
そのことをとても嬉しく思うからです。
もちろん私自身、ゲーム内容にはとても満足はできていません。
それでも、本作を「つまらん!」と切って捨てるようなことができないのも、事実なのです。
開発者たちが目指したであろう、翼を遮るもののない大空
そこにとどいた作品かと言えば、そうではありません。
それでも「作りたいものを全力で作った」という、クリエイター魂のほとばしりは確かに感じます。
具体的な点を褒めるなら、パッケージデザインやUI、BGMなどは秀逸でした。
とは言え、決してオススメはできません。
面白くないゲームです。
空中戦の魅力を全く味わえず、しかも3時間もあれば終わってしまうボリューム。
期待に応えてくれる内容ではありませんでした。
詳しいレビュー
ひたすらに味気ない、何と戦っているのかすら不明な空中戦
本作はフライトシューティングですが、残念ながら本来このジャンルが持っている魅力を味わえる内容ではありません。
気になる点はありすぎるくらいで、およそゲームとして面白いとは全く思えませんでした。
まず敵機があまりにも小さすぎる、そして速すぎるため、何と戦っているのかがわかりません。
あっという間に飛び去ってしまうので、例え接近してもわからずじまい。
そんな小さくて早いヤツには弾が当たらないのでは?と思うかもしれません。
しかし、この点は心配ご無用。
こちらの装備はロックオン性能がとんでもなく優秀なので、とりあえず遠距離からロックオンカーソルに向かって撃てばよろしい。
どうやら、それだけで敵機は次々と沈んでいく“らしい”のです。
沈んでいく”らしい”…とは煮え切らない表現ですが、これにも理由があります。
本作は敵機に弾が命中、撃墜した際の演出がとても弱い。
しかも常に遠距離戦になるため、自分では撃墜したのかどうか分からないのです。
幸い、敵を沈めると味方から「よくやった!」と無線通信が入るので、それでようやく弾が当たっていたこと、敵が沈んだことに気づくのです。
どうやら、今ので撃墜できた“らしい”…と。
一部大型の敵は、さすがにこの限りではありません。
ただ演出の弱さは同様なので、撃っても撃ってもダメージを与えられている気がしません。
やはりゲームにおいて、リアクションというのは大切だと改めて感じさせられました。
こちらの弾が命中し、撃墜したのならば、爆炎が吹き上がり、爆音が轟き、見事に爆散するからこそ「沈めてやった」という快感が生まれます。
本作にはそれらがまるでないため、延々と壁に向かって撃っているような味気なさを感じ続けることになります。
また、敵のミサイルが接近しても警告音等が何もなく、被弾するまで気づきようがないのも不満の残る点です。
通常こういったゲームは、被弾の危機が迫ると派手なアラートが鳴り、回避や迎撃を促されます。
本作にそんなものはありません。
さすがに被弾時は画面が赤く染まるため、すぐに気づきます。
しかし、ダメージを受けてから慌てて回避するのはどうにも格好悪い。
敵の攻撃をヒラリと避ける…というのもゲームの気持ちよさに関わるポイントです。
そんなことができる仕様にしてほしかった。
あぁちなみに、いくら被弾してもHPの残量を気にする必要はありません。
本作は一定時間ダメージを受けずにいると、自動的にHPが回復する仕様。
これがもう、ものすごい勢いで回復するため、まずゲームオーバーになることはないからです。
つまるところ本作は、ビュンビュンと飛び回る豆粒サイズの敵を、味方が撃破したよ!と教えてくれるまで撃ちまくるのが基本戦術。
攻撃はどこから来るかわからないため、避けようがありません。画面が赤くなったら回避を連発してその場から離れる程度です。
とにかく浅く、薄く、味気ない。
それが本作のシューティングです。
気が付けば終わっている、駆け足過ぎるストーリー
本作はプレイタイムの短いゲームです。普通に遊べば3時間、どう躓いても5時間はかかりません。
そんな少ない時間の中で、なかなか重厚な物語が展開されるのですが…これも裏目に出てしまっています。
本作のストーリーは全て、3Dモデルを用いた静止画と音声、字幕のみで構成されたムービーで表現されます。
内容の良し悪し以前に、これが体験としてあまりにも淡白でした。
静止画を繋ぎ合わせた内容なので、キャラクターが動きません。そのため映像として楽しめる点は皆無。
動画なので、自分のペースでメッセージを送ることもできません。ただ眺めているだけです。
まだ立ち絵とテキストのアドベンチャーゲームスタイルのほうが、テキストを送る形で干渉できるぶん、ゲームらしい体験に近づいたと思います。
短い時間の中で、重たいストーリーを描いてしまったのもマイナスです。
起承転結を矢の様に飛ばして描くため、こちらが全く入り込めていないのに山場を迎え、気がつけばエンディングへと差し掛かっている。
なにやら重厚な展開になっているのは分かりますが、こちらとしては話についていくので精一杯です。
ストーリーを追っている、というよりは、あらすじを流し込まれているような印象を受けました。
もう少し尺を取り、プレイヤーを物語になじませる必要があったと思います。
終わりに
シューティング部分も、シナリオも、ゲームとして良かったと言える部分はまるで見当たらない本作。欠点であるはずのプレイ時間の短さが救いになってしまっているほどで、残念な作品でした。
しかし総評にも書きましたが、不思議と本作を遊んだことは後悔していません。
難しいものに挑戦したがゆえの結果でしょうし、パッケージタイトルとしてはあまり展開されなくなったものに、同人ゲームの世界から新作が出たことを嬉しく思うからです。
酷評してしまいましたが、Switchのパッケージタイトルという大舞台に出た、というのは、それだけでも大変な挑戦だっだと思います。
とは言え、ゲームとしてはとても人にオススメできないのは事実です。
既に各所で酷評されていますが、それでも興味がある…という方は遊んでみてはどうでしょうか。