根拠をもって何かを語ろうとすれば、考える力は必須になるように思います。
「思ったことをそのまま書けばいい」とはよく言われていますし、実際そのような文章がダメだとは全く思わない。しかし自分の文章を説得力のある意見として相手に通したいならば、話は変わります。単に思うことをそのまま述べるのではなく、根拠をつける必要がある。ふつう、理由のない意見は聞き入れてもらえませんからね。
「人は人、私は私。みんなちがってみんないいんだから」という風潮は根強い。それで自分の気が済むならいいのですが、どうも私にはそれでは済まない場面がある。私にとって無視できない難点のある作品が、世に「神ゲー」として受け入れられようとしているとき。明らかに問題のある意見が「名文」として讃えられているとき。そういう事柄に直面すると「これでいいのか?」と思ってしまうことがあります。そういう理由で発する意見を「聞き入れてもらわなくてもいい」で済まされるわけにはいきません。
そして往々にして、相手を納得させられる(であろう)だけの根拠は考えてみないと出てこない。
根拠すらも思いつくままに書くことは可能ですが、そういう根拠は大抵あんまり使えない。簡単に反論を許したり、余計なものを巻き込んだり、あっさり反例が見つかったりします。
ではどうすればいいのか。どのようにして考えれば、使える根拠を立てられるのか…。
私の2025年を振り返ってみると、まぁ何だかずいぶんたくさん本を読んだなぁ…という気がします。その理由の一つは、上記のような悩みがあったからです。
あとは音楽もよく聴きました。なんだか、本と比べてエネルギーを使わないので、しぜんと増えた。じっくり時間を使える時は本を。そうでない移動中、散歩中、ダラダラしている時は音楽を…そんな一年でした。
そこからオススメというか、私が良いなと思ったものを列挙します。
たくさん本を読んだので、オススメをズバババッと紹介する。
2025年は本をたくさん読みました。1年でこんなに読んだのは初めてです。可処分時間のもっとも多くを費やしたと思います。本棚からはとっくにあふれかえり、部屋は本の塔だらけになりました。
それはやっぱり、ブログでキチッと根拠のある意見を述べたい!と思ったのが大きい。そして良い根拠を出すには、よく考える必要があります。パッと出てくる根拠はたいていダメです。あるいはもっと掘り下げる必要がある。
またいきなり意見と根拠を出そうとする前に、そもそも自分は、今その意見や根拠の対象をキチンと見ているのか?という疑問を持つことも大切だと感じます。例えばモンハンに関する意見を述べるとして、その前に、そもそもモンハンはどういうゲームで、そこで自分はどういう体験をしたのかをハッキリさせておく必要がある。人間の記憶はバイアスで簡単に歪みます。「このゲームはこういうゲームだったな」と思ってもう1周してみると、なんか全然違うゲームだったりする。
そのため、よく見て、よく考える必要がある。そういう営みに「イイなぁ」と思った本をまとめて紹介。
現代現象学―経験から始める哲学入門

新曜社から出ているこの本は、哲学における「現象学」という立場というか考え方の基本を解説する1冊です。
哲学ゥ!?と思われるでしょうが、この現象学というのは、神とは、幸福とは、価値とは…みたいな話の前に、とにかく今私たちがしている経験を徹底的に掘り下げることから始まります。ものすごーく簡単に言えば「そのとき、私たちの心の中に何が起こっているのか?」を考えまくる。
その厳密さたるや凄まじいものがあります。しかしよく考えてみると、確かにこの本で書かれているようなことが胸のうちで起こっている。自分の中に何が起こっているか~だなんて、すぐに答えが出そうな問いから、まったく想像のつかない議論が出てくる。
同時に疑問も受かびます。あのゲームやあのマンガの感想、あれで良かったのか?
あのゲームを遊んでいるとき、あのマンガを読んでいるときの経験は、厳密に言えばどのようなものだったのか?
そこに、その感想の根拠が眠っているのではないか?
自分自身の胸の内を、直観やバイアスにとらわれずに見つめる。現象学をまるっきりマネる必要はないと思います。しかしその手法を目の当たりにしておくことは、ビデオゲームやアニメ、マンガや映画の感想を、自分の胸に「どういう作品だった?」と問いかけつつ明らかにするとき、きっと役立つはず。
ただし内容はちょっと難しめです。というか一部難しい章がある。
入門・倫理学

「このキャラのいってること、間違ってると思うんだよね。だってさ…(以下、根拠)」みたいに言いたくなることがあります。そのとき、私は何を良しとし、何を悪しとしているのか。
そういう道徳、倫理にまつわる理論や立場を体系的に解説しているのがこの本。
功利主義、義務論、徳倫理学。主張の異なる3つの立場を柱に、それぞれが何を根拠に道徳的な良し悪しを判断するのかを解説。そのほか政治哲学やメタ倫理学に関する議論にもかなりのページを使っています。メタ倫理学って何かって? それも含めて教えてくれるから大丈夫。
その作品あるいはキャラが立てる道徳的な問いに対して疑問を持ったとき、その疑問を言葉にして述べたいとき、きっとこの本が足場になってくれるはず。
入門書なのでやさしい内容ですが、メタ倫理学に関する章だけは難しめ。
差別の哲学入門 (シリーズ・思考の道先案内1)

ちょっと前に書いた記事でお世話になった1冊。「差別とは何か」を細かく考えている本。
区別と差別の違いとは…とか、アファーマティブアクションは逆差別なのか…とか、東京医科大学の女性差別は「仕方ない」とかばえるのか…とか、そういう疑問に対して思考の道先を示す1冊。
「女性専用車は男性差別だ!」とか、そういうパッと見で正しそうな論にたいして「うっ…」と怯んでしまうことはあると思うんですが、これに対して反論したり、そこまでいかなくとも、どうやって考えればいいんだ…?と迷ったとき、手元にあると心強い1冊だと思います。
中身もだいぶやさしい。
ジェンダーの考え方 権力とポジショナリティから考える入門書

ジェンダースタディーズ自体が、私たちが持っているアタリマエをどんどん崩していく性質があるので面白い。それは全く違う分野の物事を考える上でも役立つと思います。だから他の出版社がだしてる入門書もオススメ。
その多様な入門書の中で、この本はもっとも刺激が強いと思います。ジェンダースタディーズやフェミニズムに懐疑的だと、たぶん読み終える前に怒りで爆発しそうになると思う。それは同時に面白さとも言えましょう。ただ他の入門書で慣らしてからの方がいいかもしれない。
たとえば著者は「逆差別など存在しない」と言い切る。『差別の哲学入門』を上で紹介した身としては、それにはちょっと同意しかねるんですが、それでも著者の意見を切って捨てることもできない。
断言するが、逆差別などというものは現実には存在しない。逆に差別することができるような権力を保持しているならば、そもそも差別される状況に陥ることなどないからだ。差別は圧倒的な権力差を背景に実践されるものであり、相互に差別しあうなどということはありえない。したがって、逆差別というもの言いはすべて欺瞞を含むものであり、差別する側が自分の差別意識から目をそらすためか、自身の立場を取り繕うために繰り出す詭弁(誤魔化し)である。
ジェンダーの考え方 権力とポジショナリティから考える入門書 / 池田 緑 / 青弓社より
語調が強すぎる。
それはともかく、自分はこの意見、分かるようで、スッと飲み込めない部分もあるんですよね。例えば局所的に男性が差別される状況はやっぱりあると思う。問題はそれを社会全体にスライドさせて「男性は社会全体から逆差別を受けている!」という論まで持っていくことではないのかな~と感じます。
とはいえ、それは局所的な差別ではなく、大局において権力を握る男性への抵抗なのだろうか?
その意味で、圧倒的な権力を背景に行われる女性差別と、局所的な男性差別は、全く異なるものか。でも権力ってその場その場で移り変わる。局所的には女性が強い権力を持つこともあるのでは…。
この辺にしておきます。ジェンダースタディーズの本自体が初めて!という場合は、世界思想社が出してる『基礎ゼミ ジェンダースタディーズ』が読みやすくていいと思う。

論理トレーニング

根拠と意見は用意できた。では、それをどのようにして述べようか?
いや、そもそもこの根拠って、きちんとした根拠になってるんだろうか?
そういう「論理的に述べる」の根本的な技術をトレーニングする本。問題集も兼ねているので、紙とペンなど用意して実際に解いた方がいい。
反論したい、あるいは何かを論じたい、より実りある議論をしたい…そういう願望を抱く全ての人が通っておくべき本であると思います。…いうて自分もちょっと抜けてきているので、近々もう1冊買ってきて再挑戦する…モチベはある。
ちなみに記号論理学の話は一切出てこないので大丈夫。
音楽…電音部ばっかり聴いていた1年
Spotifyの2025年お気に入り曲リストを貼って置けばよいでしょう↓
去年以上に電音部をよく聴いていました。個人的当たり曲もかなり多めで『マジカルぴっとんムゲンパワー!!』とか『ALASKA』とか『人生ゲーム』とかずいぶん再生したように思います。
2024年は一応ヒットチャートを聴いていたのでチャペル・ローンの『Good Luck, Babe!』とかビリー・アイリッシュの『BIRDS OF A FEATHER』とかがお気に入りに入っていたんですが、今年はそういうのが全然ない。アラン・ウォーカーくらいだろうか?
この曲もかなり好きだけど、チャートとかに入ったのかは分かりません。
でも日本の曲は何だかんだ耳に入って「イイ!」と思うことが合って、椎名林檎の『白日のもと』。あとDECO27の『チェリーポップ』は悔しいがイイ。ラビットホールの亜種みたいな曲だな~とは思うんですけれども、再生してしまいます。
音ゲー関連の曲だとMYUKKE.の『Ne Night & All Night』は、ようここまで騒いだなと思います。絶対に静かにしないぞ~という意識を感じる。EmoCosineも去年同様によく聴きました。もう自分にとっての殿堂入りでもいいのかもしれない。
来年はもうちょっと幅を広げたいんですが、まぁ毎年いってるしな…でも落ち着いた曲をもっと落ち着いて聴いてもいいのかな~とずっと思っています。歩きながら聴くことが多いので、メロディがはっきりしていない曲は周りに意識を持っていかれてあまり聴けないんですよね。
以上です。来年はもっと幅と難易度を上げたい。
以上、こんなところでおしまいです。
来年は音楽に関しては幅を、本はもっと難易度を上げたいと思っています。2025年読んだ中で重要だと思った本を復習しつつ、厚みのある本をモノにしたい。
音楽は好みが固定されすぎているので、本当に広げたい。そもそも、音楽を聴くシーンをもっと増やしたほうがいいのかもしれません。
当ブログは年内に閉鎖するため、この結果をここで報告することはありませんが、まぁそんな抱負だけでも。最後になりましたが、明けましておめでとうございます。

